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幽雅に舞え!

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呉越同舟

「ふん……じゃあシリアの奴は普通に勝ったんだな。ま、そうでないと倒しがいもねーけど」

 サファイアからさっきまでの状況を聞いたエメラルドは憮然とした表情でそう言った。自分もシリアとネビリムの戦いを見るつもりだったのがはっきりとわかる。

「で、お前らはこれからどうすんだ?聞いた話じゃ今からムロを目指すらしいが船のあてなんてねえだろ。まさか自力で泳いでいくなんて言わないよな?」
「……なんでルビーと同じこと言うんだよ」
「知るかよ。そのことだが、お前らがどうしてもっていうんなら船の手配をしてやらんこともないぜ。どうせ俺様も一度はムロにいかなきゃいけねえし、一応お前らのポケモンを貰った借りもあることだしな?」
「えっ、いいのか?」

 正直。意外としか言えない申し出だった。勿論サファイアたちは被害を受けた側なのだから何らかの詫びはあってもいいのだが、彼自身の口からその言葉が出るとは思わなかったからだ。

「なあルビー、お前はどう思う?」
「どう思うも何も、渡りに船とはまさにこのことじゃないか。よろしく頼むよ。……君、名前なんて言ったっけ?」
「エメラルドだ、まあじゃあ決まりだな。さっそくパパに電話するからしばらく待ってろよ」

 そう言うとエメラルドは少し離れた場所で電話をかけ始めた。彼の猫なで声での会話も気になったが、それよりもサファイアとしてはエメラルドのあっけらかんとした態度に少し戸惑う。

「まあ何か裏というか、考えはあるだろうねえ。彼なりに。でもボク達に危害を加えるつもりではないだろうさ」
「そうなのか?まあ今はムロタウンへの道が出来たってことでいっか」

 ルビーが特に警戒していないようだし、サファイアも身構えるのはやめにする。エメラルドには良い感情を持っているとは言えないのは事実だが、こうして船を手配してくれるあたりいいところもあるやつじゃないか、そう思うことにした。

「よし、今からトウカの森を抜けたところの海沿いに来るよう言ったから、俺たちも急ぐぞ!」
「ああわかった。……っておい自転車に追いつけるわけないだろ!?」
「さすがに勘弁してほしいね」
「ちっ、わーったよしゃあねえなあ。お前らに合わせて歩いてやるよ」

 カナズミシティを離れ、トウカの森を戻る一向。戻りは段差を軽く飛び降りれば早く戻れるのでそう時間はかからない。……その道すがら、エメラルドは自分の完璧な機転に惚れ惚れしていた。

(サファイアもルビーもメガストーンを持ってる。ってことはこいつらもあの博士連中に狙われるってことだ。つまり、一緒にいればあいつらがやってくる可能性はさらに上がるうえに

、もしやばくなってもこいつら囮にして逃げりゃあいい。さすが俺様。完璧な作戦だぜ……)
「どうしたんだい、変な顔して?」
「な、なんでもねえよ!」

内心で悪だくみをしていると、にやりとしたルビーに聞かれる。まるで君の考えなどお見通しだと言わんばかりのような気がして少し寒気がした。

(いや、そんなわけねえ。つうかばれてたとしてもそこまで問題じゃねえ!)

 全く根拠のない自信をもって自分に言い聞かせていると、すぐにトウカの森は抜けることが出来た。すぐ近くの海辺には、手配した通りの自家用フェリーが来ている。

「よし、ご苦労!じゃあムロと、後ついでにカイナシティまでよろしくな!」

 フェリーの運転手に気軽にそう言う。運転手にはもう何度も自分の我儘を聞いてもらっているので向こうも慣れた調子ではいよと返してきて、その後。

「ところで坊ちゃん、後ろのお二人はお友達ですかい?」
「ん?ちげーよ。あいつらが船がなくて困ってたから助けてやったってだけさ」
「そうですかい。ついに坊ちゃんにもお友達が出来たと思ったんですがねえ」
「はっ、うるせーっつの。さっさと船出せよな」

 その様子を後ろで見ていたサファイアはこっそりルビーに耳打ちする。

(……なあ、あいつって友達いないのかな?)
(いるように見えるのかい?ついでに友達ならボクもいないよ)
(自慢げに言うなよ。っていうか、俺がいるじゃないか)
(……ああそうだね)

 何故か少し嫌そうに言う(少なくともサファイアにはそう見えた)ルビーに首を傾げる。やっぱりまだ友達とは思われてないのだろうか?

「んじゃ行くぞ!デルタエメラルド号、発進だ!!」

 エメラルドの言葉と共に船が動き出す。快適な速度で船は進み、しばらく一行は船での移動を楽しんだ。

「……なんてよく言うけど、暇だなあ」
「たまにはゆっくりとした時間もいいんじゃないかな、歩くのは疲れるしね」

海の上の景色など、30分もすればすっかり飽きる。船室で二人で暇を持て余すことになったサファイアは、気になっていることをこの際ルビーに聞くことにした。シリアのことだ。

「……なあ、なんでルビーは、シリアのことあんなに疑ったんだ?やっぱり仲が良くないのか?
ルビーはああいったけど、シリアはきっとバトルを盛り上げるためにあえてスキルスワップを使わなかったんだ。観衆のことだって、シリアなら自分のバトルをショーに見せるのは簡単さ。なんたって、チャンピオンだぜ?

ルビーとシリアに昔何があったのかは話さなくてもいい。でも今のシリアはチャンピオンとして凄いトレーナーになったんだし……もっと、信じてもいいんじゃないか?」

これまでのルビーのシリアへの態度を見れば、何か昔あったことくらいはサファイアでも容易に想像がつく。でもやっぱりサファイアとしては、二人に仲良くしてほしかった。自分に兄弟はいないけど、普通の兄妹ってそういう物だと思うし、ルビーもシリアもいい人だと思うからだ。

「……凄いトレーナー、か。確かにそうだね。ボクの兄上は、凄いトレーナーになった。実力も、態度も、まさにホウエン地方を代表するトレーナーさ。

だけどね、昔の兄上は……」

何か決定的な事実を語ろうとするルビー。思わずその口元に目線がいく。それに気づいて、ルビーはわざとらしく首を振った。


「そんなに見つめないでくれるかな?なんだか照れてしまうよ」
「……はあ。良く言うよ、全然そんな事思ってないくせに」
「本当さ。時々忘れてるようだけど、ボクは君と同じ15歳の少女に過ぎないんだよ?」
「とにかく、シリアの事あんまり考えすぎるなよ。なんかシリアに問い詰めてたときのルビー……凄く辛そうだったからさ。俺、ルビーのそういう顔してるのはあんまり見たくないっていうか……その」

なんといったらいいかわからなくなり、口ごもるサファイア。その時、上の方から自分たちを呼ぶ声がした。

「おーい!飯出来たぜー!!」

 少し鼻をひくつかせると、カレーのいい匂いがした。サファイアはごまかすように慌てて上へと出ていく。

「なんでもない。飯食いに行こうぜ!」

残されたルビーは、ゆっくりと階段を上がりながらこう呟いた。

「……やれやれ、ごまかしたのはボクの方だったんだけどねえ」



 船の上で食べるカレーはなかなか美味しそうに見えた。サファイアの後に遅れてルビーが到着すれば、3人で手を合わせた後カレーを食べ始める。なんとなくさっきの会話からあまり食が進まないサファイアたちをよそに、がつがつとカレーを食べるエメラルド。エメラルドがおかわりをよそおうとしたその時、船に何かがぶつかる大きな音がした。衝撃で大きく船が揺れる。

「なんだ!?あいつらの襲撃か!?」
「あいつらって!?」
「決まってんだろ、あの博士どもさ!」

 目を輝かせて甲板へ飛び出すエメラルド。それに着いていくサファイア。ルビーはそのまま船内から動かない。ただ、気分がよくなさそうに口元を抑えた。

「坊ちゃん大変です、ヘイガニの群れが突然船を襲いだして……私一人では対処できません!」

 運転手が困り顔でそう伝えてくる。エメラルドはむしろそれを歓迎するがごとく聞いて。

「わかった。じゃあここは俺様に任せとけ!サファイア、お前もついて来たきゃついてきてもいいぜ!」
「言われるまでもないさ!」

 エメラルドは歓喜する。これだ。自分が旅に出て求めていたのはこういうのだったのだ。快適な船や自転車でただ街を移動してジム戦で勝つだけの安全な旅なんてつまらない。もっと刺激的で、ワクワクできる日々を求めていたのだと実感する。

 その胸の高ぶりを思う存分声に出して、エメラルドはヘイガニたちを迎え撃つ。



「さあエメラルド・シュルテン様主役の、悪の組織をぶっ倒す英雄劇の幕開けだぜ!」



たくさんのヘイガニたちが船や甲板にクラブハンマーを打ち込んでいるところに割って入るサファイアとエメラルド。エメラルドは自分の持つモンスターボールを3つとも取り出し、高く天に放り投げて叫んだ。


「現れろ、俺様に仕える御三家達!」

 
 モンスターボールが開き、そこから光となってエメラルドの手持ちであるジュプトル、ワカシャモ、ヌマクローがポーズを取りながら現れる。勿論エメラルドも自分で考えた決めポーズを取っていた。

(決まった……!)

 半ば自分の世界に入っているエメラルド。サファイアは早速カゲボウズやフワンテに祟り目や怪しい風を撃たせてヘイガニと戦っている。だがヘイガニたちのレベルもそれなりに高いのか、簡単には倒せない。

「こいつら、野生のポケモンじゃない!?」
「へっ、やっぱり俺様の予想通りってわけか!」

ヘイガニたちもサファイアを敵と認識したのか、クラブハンマーで攻撃してくる。

「くそっ、影分身に小さくなる!」

 それぞれの回避技でクラブハンマーを躱すがそれでは問題は解決しない。残るヘイガニたちは変わらず船への破壊行動を続けている。

「前座ご苦労、それじゃあ俺様のターンだぜ!まずはジュプトル、タネマシンガン!」

 ジュプトルの口から広範囲に無数の弾丸が打ち出され、ヘイガニたちの体を打ち付けていく。弱点を突かれ、ヘイガニたちの動きが止まった。

「続いてワカシャモ、にど蹴り!」

 その隙をついてワカシャモが一気に間合いをつめ、一度目の蹴りでヘイガニ一匹を宙にあげ、二度目の蹴りで遠くへ吹っ飛ばす。

「そしてヌマクロー、マッドショットだ!」

 最後にヌマクローが残りのヘイガニに泥を浴びせて動きを鈍くする。

「ヘーイ!」

ヘイガニもエメラルドを脅威とみなしてクラブハンマーを仕掛けてくる。

「リーフブレード、二度蹴り、グロウパンチ!」

 それに対して、エメラルドはさらなる攻撃を仕掛けた。サファイアのように変化技で幻惑してから攻撃するのではなく、攻撃するときは攻撃、防御の時も攻撃。とにかく攻めるフルアタッカーの性質がここでは活きる。さらに。

「おっせえ!」

エメラルド自身もヘイガニたちの間合いに入って、鋭い蹴りを浴びせる。ポケモン相手なのでダメージにはあまりなっていないが、素人のそれではなかった。ヘイガニがひるみ、その隙にマッドショットがヘイガニを吹き飛ばす。

「無茶するなぁ……」
「へっ、この胴着は伊達じゃねえんだよ!お前もぼさっとしてんな!」
「わかってるよ!祟り目!」

 エメラルドの畳みかけるような攻撃を中心として、ヘイガニたちを撃退していく。10分ほどの戦闘を経て、ヘイガニたちは全員戦闘不能になった。

「さぁてと、雑魚戦はもう終わりか?それともまだいんのか?」

 エメラルドが周りを見渡した時、船の進行方向から巨大な海坊主が出るかのように海面が盛り上がる。そして現れたのは――巨大なドククラゲだった。下手をすれば、一匹で船を沈めてしまいかねない大きさだ。

「よ~し、こうでなくっちゃな!」
「マジかよ……」

 ドククラゲがその触手で船に絡みつこうとする。エメラルドの行動はやはり攻撃だ。

「させっかよ、火炎放射、マッドショット!」
「カゲボウズ、鬼火だ!」

 炎と泥が触手をはじき、さらにドククラゲの体に鬼火を浴びせる。ルビーから教わった、巨大な奴を相手にするときのサファイアの作戦だ。

「一気に沈めてやるよ、ソーラービーム!」

 力をためていたジュプトルが、天から太陽の光線を迸らせる。それがドククラゲに直撃したかに思えたが――

「効いてねえ!?」
「『バリアー』で防がれたんだ!」

 よく見ると、ドククラゲの体の表面を薄い膜が覆っている。それでエメラルドの攻撃を防いだのだ。さらなる触手が船に襲い掛かり、船が大きく揺れる。

「くそっ、急いでなんとかしないとまずいぜ!」
「わかってら!こんな時のための必殺技を見せてやるぜ、お前も合わせろ!」
「どうやって!?」
「俺様がドバーンとやるからそれに合わせてお前の最大火力をぶつけろ、ないよりましだ!」
「わかった、祟り目!」

 相手を状態異常にしてからの祟り目のコンボを浴びせる。それでも大したダメージにはなっていないようだ。こうなった以上、残された手はエメラルドの必殺技とやらにかけるしかない。

「いくぜぇ、ワカシャモ、火炎放射だ!」

 エメラルドが上を指さし、ワカシャモが天に向けて火炎放射を放つ。どこまでも伸びた業炎は、雲を散らし太陽をさらに輝かせた。

「ジュプトル!」

 ジュプトルの体が太陽の光を受けて光輝いていく。溜めている間にもドククラゲの猛攻が船を襲う。サファイアの手持ちとヌマクローで応戦するが、いよいよ船が傾くのではと思えたその時。


「……きたきたきたっー!!マックスパワーソーラービーム!!」


ジュプトルの体が眩しいくらいに輝き、天に向かってその光が吸い込まれる。そして―――先ほどとは比べ物にならないくらいの光が、天から無数に降り注いでドククラゲの体を、触手全てを焼いた。サファイアも合わせて祟り目を打つが、はっきり言って比べ物にならないくらいの威力差だった。ドククラゲの体が、沈んでいく。

「ふっ……ま、ざっとこんなもんよ!俺様に挑むのは100年早いぜ!」
「……もう敵はいないみたいだな。船長さん!船は大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかね……坊ちゃんもそのお友達も、ありがとうございます」
「だから、友達じゃねえっつってんだろ?それじゃ出発してくれ」

 かしこまりました、という苦笑の後船が発進する。サファイアたちもルビーのところに戻った。

「ルビー、大丈夫だったか?」
「……」

 サファイアが呼びかけるが、ルビーは答えない。青い顔をして俯いている。

「どうした?……もしかして、さっきの船の揺れで酔ったか?背中さすってやろうか?」
「…………いや、いいよ。まだまだ甘いもの以外はボクの体に合わないってことだね……ちょっと甲板に出てくるよ」
「わかった、一人じゃ辛いだろうから、肩貸してやるよ」

 どうやらルビーは慣れない船とカレーのせいで酔ってしまったらしい。提案するサファイアだが、それもルビーはいいといってふらふらと出ていってしまった。心配なのでついていこ

うかとするサファイアだが、エメラルドに止められる。

「お前、バカか。吐いてるところなんか好きな奴に見られたいわけないだろ。それくらい気づけっつーの!」
「好きって……ルビーと俺はそんなんじゃないよ」
「は?鈍いなあ、女が好きでもない男と一緒に二人旅なんかするかよ」
「ルビーは変わったやつなんだよ。現に、さっきも友達だろ?って言ったら嫌な顔されたんだぜ?」

 するとエメラルドはあきれ顔をした。手を顔に当ててダメだこいつ……と呟く。

「あー……なんかもういいや、お前が俺よりガキってことはわかった」
「なんでだよ?お前の方が年下だろ?多分」
「そういうことじゃねーよ」

 それでエメラルドは会話を打ち切ってしまった。しばらくするとルビーがさっきよりマシな顔で戻ってくる。

「……そろそろムロに着くみたいだよ」
「そっか、もう大丈夫か?無理はするなよ」
「大丈夫だよ、チョコレートも補給したしね」
「よし、そんじゃムロでもひと暴れすっか!」

 船を降り、サファイアとエメラルドは船長さんにお礼を言ってからムロタウンを眺める。砂浜をそのまま町にしたような小さな町だった。ジムもすぐそこに見えている。

「さーてと、んじゃ早速ジム戦に向かうとするか。ここはシケた町だし、長居してもいいことねーよ」
「いや、俺は石の洞窟ってところに行ってみたいな。すぐ近くにあるみたいだし」
「は?なんだってそんなとこ……」
「石の洞窟、だよ?そこに行けばメガストーンや進化に必要な石も落ちてるかもしれないね。手持ちの強化もそろそろしておきたいし、ボクは賛成するよ」
「俺様はこんなところで手に入るポケモンに用はねーが、メガストーン集めはいいな。じゃあさっさと行こうぜ」
「ああ、地図によるとこっちの方にあるみたいだ。行こう!」

 ジャリジャリする砂浜の感触を楽しみながら(ルビーは若干嫌そうにしている)洞窟に向かう。そんなに大きくはないであろうそれが見えてきた時、サファイアたちの前に一人の子供がやってきた。恐らく、洞窟から出てきたのだろう。黒の肩にかかるくらいの髪で、横に狐面をつけている。白色の大きく袖が余った全体的にゆったりとした服でまるで大きな一枚の布を纏っているかのよう。 瞳の色は、赤と青のオッドアイだった。

「ふああ……おはよう、お兄さんとお姉さん」

 あくびをした後かけられた言葉は、明確にサファイアとルビーに向けられていた。それが伝わってくるのが不思議な感じがして、反応が遅れる。ルビーでさえ、少し固まっていた。エメラルドに至っては、ぼんやりして反応すらない。まるで目の前の子供が意図的にそうしているかのようだった。

「えっ?あ、ああ。おはよう。君は?」
「僕はジャック。……うん、君たちも良い目をしてるね。原石の美しさを感じるよ」
「え?」
「なんでもない。お兄さんなら、今のチャンピオンのシリアだって超えられるような、そんな気がするってこと。頑張ってね」

 その言葉はまるですべてを見てきた仙人のようで、とても幼い子供のそれとは思えなかった。

「……よくわからないけど、ありがとう。俺、頑張るよ」

 サファイアがそう言うとジャックと名乗った子供はにっこり笑ってサファイアたちの進んできた方へと歩き去る。姿が見えなくなったあと、エメラルドが口を開いた。

「なんだ、あのチビ。チャンピオンを超えるのはこの俺、エメラルド様だっての!」
「ああ、なんだったんだろう今の子は……ルビー?」
「……いやあ。不思議な子だったね」

 ルビーは何か考えているようだったが、それ以上何も言わなかった。気を取り直して石の洞窟の中へと入る。洞窟の中は一本道で、迷う心配はなさそうだった。

「よし、それじゃあしばらく石やポケモンを探そう。それでいいよな?」
「ああ、ここのメガストーンすべて持ってくつもりでやるぜ」
「まるで墓荒らしだね。ボクはのんびりポケモンを探させてもらうよ」

 3人はお互い別の場所でそれぞれの物を探す。サファイアの目的はどちらかというとポケモン探しだ。

「確かここには、ヤミラミがいるって本で読んだことある気がするんだよな……っと、見つけたぜ!」

早速目当てのヤミラミを見つけ、カゲボウズを繰り出す。石の洞窟でのバトルが、今始まった――  
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