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Three Roses

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第十七話 姉妹の薔薇その十

「だから私はです」
「彼等は制御しますか」
「往々にして獲物でない相手まで喰らいますから」
「獲物でなくとも」
「これとみなした相手にも襲い掛かります」
 彼等異端審問の者達はというのだ。
「そしてその肉を貪りますので」
「それを許さない為に」
「私は彼等を制御します」
 それも常にというのだ。
「そうします」
「左様ですか」
「飴と鞭といいますが鞭は見せるだけでいいのです」
「ただそれだけですか」
「最悪でも音を聴かせるだけです」
 鞭で地面を叩いたそれをというのだ。
「それだけです」
「そうすればいいのですね」
「振るわないでいいものです」
 鞭、それはというのだ。
「そうしたものです」
「鞭は打つものではない」
「そうです」
 まさにというのだ。
「そのことをわかって下さい」
「では」
「あの者達はです」
 まさにというのだ。
「自由にさせてはいけません」
「異端審問は」
「ですからマイラ様も彼等は」
「気をつける様に」
「そうされて下さい」
 是非にと言うのだった。
「是非」
「血に餓えた猟犬ですか」
「まさに」
「だから司教がですか」
「常に、気をつけて」
 そしてというのだ。
「制御します」
「そうされますか」
「太子は反対しておられますが」
「彼等をこの国に入れることを」
「はい」
 まさにというのだ。
「あの方は帝国の方ですから」
「帝国では異端審問は嫌われていますか」
「左様です」
「法皇庁の守護者でありながら」
 帝国の帝室であるロートリンゲン家はだ、そう言われている。何しろ帝国の皇帝は法皇から帝冠を授けられるものだからだ。
「それでもですか」
「はい、法皇猊下の帝国への介入を代々です」
「嫌われていて」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「異端審問もです」
「嫌われていて」
「太子もです」
 彼もというのだ。
「この国に異端審問を入れられることに反対でした」
「そうでしたか」
「ですが私はです」
「あえてですか」
「異端審問を入れ」
 そしてというのだ。
「新教徒達への牽制とされます」
「国に置くだけにしますか」
「あくまで」
「そうされますか、ただ」
「ただ、とは」
「私はどうしてもです」
 マイラはここで己の考えを述べたのだった。
「一つ気になることはあります」
「と、いいますと」
「旧教は絶対では」
 こう言うのだった。 
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