真田十勇士
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巻ノ六十一 姫武将との戦いその五
「我等はそれぞれ」
「この力を使い」
海野は不敵な笑みを浮かべている。
「存分に暴れると」
「ではそうしましょう」
望月もそうした感じである。
「その夜は」
「さて、どう暴れるか」
由利は今にも彼の得物である鎖鎌を出しそうだ。
「楽しみです」
「忍の者にとっては夜こそ最高の戦の場」
霧隠は冷静な素振りだが口元は楽しげな笑みとなっている。
「思う存分ですな」
「いや、こうした時こそです」
伊佐もだった。
「我等十勇士の力の見せどころ」
「殿、お任せ下され」
根津は幸村に言った。
「我等は我等の務めを果たします」
「例え何が来ようともです」
猿飛も今にも立ち上がりそうな位だ。
「我等忍城を陥としてみせます」
「幸い風魔もおらぬ様です」
筧は軍師役としてこのことを指摘した。
「ならば尚更好都合です」
「見事城を攻め落としましょう」
最後に言ったのは清海だった。
「我等で」
「そうしようぞ、それで先程風魔の話が出たが」
筧を見つつだ、幸村は彼等のことも話した。
「この度の戦ではこれと言って出ておらぬな」
「はい、確かに」
「北条家の忍といえばあの者達ですが」
「西に伊賀、甲賀あれば東に風魔あり」
「そうも言われていますが」
「あの者達は出ておらぬ」
微妙な顔でだ、幸村は言うのだった。
「小田原に封じられておるか」
「伊賀、甲賀は徳川殿の下におります」
筧が幸村に話した、風魔の話を出した彼がだ。
「だからでしょうか」
「伊賀、甲賀が風魔を相手にしておるからか」
幸村は考える顔で言った。
「それでか」
「十蔵の言う通りかと」
海野は神妙な顔で幸村に述べた、十勇士筆頭として。
「風魔も動きたいですが」
「伊賀、甲賀がおって動けぬか」
幸村は考える顔のまま述べた。
「そういうことか」
「ならばこれまで風魔が出ないことも納得がいきますな」
根津もこう言う。
「あの者達は動きたくとも動けぬのです」
「伊賀、甲賀は共に西国でも精強の忍達」
穴山も言う。
「ならば風魔とても」
「うむ、伊賀か甲賀だけでも互角」
風魔といえどもとだ、幸村も指摘した。
「それが双方となるとな」
「風魔とて動けなくなる」
今度は霧隠が言った。
「見事な封じ込めですな」
「そうの通りじゃな、忍のことからもじゃ」
幸村は唸る様にもして述べた。
「北条は勝つことが出来なかった。
「ううむ、では戦になった時点で」
望月は主の言葉に唸る様にして応えた。
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