聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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356部分:第四十八話 幻影の罠その八
第四十八話 幻影の罠その八
「戦うのか。それとも」
「狂闘士に逃げるという言葉はない」
リュートはきっとした顔でカミュに対して告げた。
「そして同胞の仇は何処までも追い詰めて倒す」
「ならば戦うというのだな」
「無論だ」
リュートはその両手をゆっくりと動かしてきた。そのうえで攻撃に入ろうとしている。
「このグラシャラボラスのリュートの技、見せてくれる」
「面白い。ならばだ」
カミュもまた身構えてきた。そのうえで狂闘士の相手をしようとする。
「私もまた受けるとしよう」
「アクエリアス、貴様を倒す」
憎しみに満ちた目で告げるのだった。
「いいな」
「来い」
今両者はまさに戦いに入ろうとする。しかしだった。ここで不意に犬橇の犬達が吠えだした。そしてその姿が瞬く間に。
「なっ!?」
「な、何だ何だ!?」
「犬達が!」
青銅の者達はその犬達の姿を見て声をあげた。
「でかくなった!?」
「しかもそれだけじゃねえ!」
「頭が!」
何と彼等は仰ぎ見るまでに大きくなりそのうえでそれぞれ頭が三つになってしまった犬達の禍々しい姿をその目に見たのであった。
「しかもそれだけじゃないぞ!」
「尾が蛇になった!」
「しかも」
ただ尾が蛇になっていただけでゃないのだった。
「背中からも蛇が」
「何匹生えていやがるんだ」
この上なく禍々しい姿だった。彼等はそれを見て思わず動きを止めてしまった。
「ケルベロスか」
「ああ、間違いない」
「それだ」
彼等はその犬達を見て言った。
「地獄の番犬というあの」
「まさかこんなところで出て来るっていうのかよ」
「しかも一匹じゃねえのかよ」
「何匹いやがるんだ」
こう言って唖然としていた。だがリュートはそれを見ても冷静なものだった。
「そうか。ならばここは」
その地獄の番犬達を見て言うのだった。
「私はアクエリアスにだけ向かえばいいな」
これが彼の判断だった。彼はその判断を下すとあらためてカミュに向かい合うのであった。
その間に青銅の者達は素早く聖衣を身にまとっていた。白銀の者達も同じだ。
「どっちにしろこの化け物共」
「出て来たからには容赦はしねえ」
「見せてやるぜ聖闘士の力」
ケルベロス達を前にして戦闘態勢に入っていた。
「今ここでな」
「食らって死にやがれ」
今まさに攻撃に入ろうとする。だがしかしだった。ここでカミュが今まさに戦いに入ろうとする彼等に対してこう告げたのだった。
「待て」
「待て!?」
「待てというのですか」
「そうだ」
また彼等に告げるカミュだった。
「ここはだ。待て」
「何故ですか?」
「こんな化け物共を相手にして」
「小宇宙を感じない」
カミュは言った。
「ここは仕掛けるな」
「仕掛けるなっていっても」
「どうすれば」
「オルフェ」
カミュは今度はオルフェに声をかけた。
「いいか」
「はい。では私は」
「そうだ。竪琴を使うのだ」
こう彼に命じるのであった。
「いいな」
「わかりました。それでは」
「竪琴!?」
「何故竪琴なんですか今」
「すぐにわかる」
青銅の者達にもすぐに返した。
「すぐにな」
「すぐにですか」
「じゃあここは」
カミュにこう言われてはだった。彼等もこう返すだけだった。
「カミュ様、お任せします」
「オルフェ、頼むな」
「わかっている。それではだ」
オルフェはその手に持っている竪琴を奏ではじめだした。その清らかな音が雪原の中に聴こえだした。
第四十八話 完
2009・8・25
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