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仮面ライダーAP

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第一章 鉄仮面の彦星
  最終話 騎士の旅立ち

 ――その後。地下研究所から遠く離れた街の一角に、吾郎とサダトの姿があった。研究所から持ち出したAPソルジャーの開発データを、取り急ぎ処分するためだ。
 書類をめくる手を止めず、APソルジャーに関するデータを調べ続けている吾郎。そんな彼を一瞥し、サダトは空を仰ぐ。

「……そろそろ、アウラがみんなを治してくれてる頃ですね」
「ああ。この場所も彼女には連絡してある。じきに、ここへ来るだろう。君も――」
「――そうですか。じゃあ、もう行かないと」

 吾郎の言葉を受け、サダトは彼が言い終えないうちにバイクに乗り込んで行く。その行動が、彼の「選択」を物語っていた。
 その「選択」を前に、吾郎はようやく書類をめくる手を止める。そして最後に確かめるように――厳かに問い掛けた。

「……戦うのか」
「別に、あの人への当て付けってわけじゃありません。……ただ、俺のしたいようにしてるだけなんです」
「彼女は、納得しないぞ?」
「しなくたって、構いません。あの子は、皆の笑顔を守ってくれる。だから俺は、そんなあの子の笑顔を守る。それだけのことですから」
「なるほどな。しかし――彼女の笑顔は、君が戻らねば失われてしまうぞ」

「――だから約束したんですよ。必ず、生きて帰るって」

 彼女と出会ったあの日。おまじないと称して交わした小指を見つめながら、サダトはそう宣言した。

 その言葉を最後に。サダトはバイクを走らせ、街の中へと消えていく。追うことも引き留めることもせず、その旅立ちを見送った吾郎は、静かに青空を仰ぐ。

「必ず帰る、か」

 手にしたワインボトルに視線を落とし、彼はひとりごちる。――脳裏に、いつかもう一度と誓った恋人の姿を、過ぎらせて。

 そして――もう姿が見えないサダトに、誰にも知られることのない称号を送る。

「――それが答えなら。君には、『仮面ライダーAP』の称号を贈ろう。せめてもの、餞別だ」

 すると――自分を呼ぶ複数の声に、吾郎は思わず振り返る。彼に手を振る、アウラや人間に戻った元APソルジャー達が駆け寄って来ていたのだ。
 何も知らない彼女は、もうすぐサダトを人間に戻し、共に愛を育めるものと信じている。その表情は、意中の男と逢う瞬間を今か今かと待ち侘びる乙女そのものであった。

(……やれやれ)

 騎士に去られた姫君に、どう申し開こうか。そう思い悩む彼は、苦笑を浮かべて手を振り返していた……。

 ――その頃。

 街を抜け、高速道路を駆け抜けるサダトのバイクの後方に――蒼い薔薇が静かに舞い降りる。その薔薇には、人知れず一つのメッセージが込められていた。

『裏切り者には、死の薔薇を送ろう』

 それは、絶対に逃れられない――死の宣告。
 
 

 
後書き
※仮面ライダーAP(APソルジャー)
 本作のオリジナルライダー。名前の由来はAPERITIF(アペリティフ)=食前酒から。主菜の前に嗜むものであることから、前座=戦闘員ポジションを意味しており、シェード残党によるライダー型改造人間の先行量産型である。
 いわゆる量産型ライダーの一人であり、仮面ライダーGのデータが基盤であるため容姿もGに近く、複眼の意匠が「a」で胸のシンボルが「p」となっている。ただし量産型と言っても、Gの7年分の戦闘データを糧に生まれた最新型でもあるため、改造前の素体によっては非常に優れた性能を発揮できる。
 必殺技はワインボトルから腕部にエネルギーを充填し、専用装備「APナイフ」で切り裂く「スワリング・ライダービート」。

 
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