| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『Trap of a spider』

作者:零那
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

『Umbrella』



ほらまた着せかえ人形。
真っ白いフリルのついたワンピース。
紐を結ばれ靴も履かされ、自由なんてものは夢物語。
此の頑丈な鉄の鎖は外れない。

やまない雨が、強まる雨音が、恐怖を後押ししてく。
命を孕んだ此の躰を、イタミしかない此の躰を、あなたは弄ぶ。
イヤダ、イタイ、ヤメテ...あなたには何ひとつ聞こえない。
私も、もう言わない...。

可哀想な私、あわれな私。
そして可哀想なあなた、あわれなあなた。
激しくなった雨の中、傘だけを持って裸足で走った。

真っ白いフリルのワンピースは真っ黒に変わり、傘をさして寒さを凌いだ。
濡れた躰は冷たくなり、次第に熱くなる。
傘の下で丸くなり、眠りにつくと其処には血の海が待ってる。

今此処が奈落の底だというのなら早く這い上がらせて。
早く掬い出してよ。
こんな運命、辛過ぎる。
誰がこんな運命を辿らすの?
誰がこんな運命を決めたの?
誰が何の為にこんな運命を...?

此の日の私の命は唯1本の傘が守ってくれた...。

着せかえ人形にだって心は在ったんだよ...。
頑丈な鉄の鎖が外れる事を誰より願ったんだよ...。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧