おぢばにおかえり
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第三十六話 お墓地その一
第三十六話 お墓地
詰所からお墓地に行くまでの道を歩きながらです、阿波野君は目の前に見えるよろづ病院を眺めながら私に聞いてきました。
「あそこに教祖のお墓地があってですよね」
「真柱さん、本席さんのお墓地もあるわよ」
「あと信者さんの」
「そう、色々な人のお墓があるの」
「そうですよね、ただ」
ここで阿波野君はこんなことを言いました。
「怖い感じしないんですよね、あそこ」
「ああ、普通のお墓みたいに」
「はい、肝試しにも使いますし」
お墓は確かにそうしたことに使われています。
「怖いって感じしますよね」
「そう?」
私は首を傾げさせて阿波野君に返しました。
「私は別にね」
「怖くないですか」
「ええ、昔からね」
「どうしてですか?」
「だって人が沢山いる場所でしょ」
お墓は、です。
「別にね」
「人が、ですか」
「そう、魂があるでしょ」
天理教でもこうした考えです、仏教にある考えですがおみちでもなのです。
「魂が身体にあるかないかでしょ」
「お墓にいるのは身体がない人ですか」
「だからね」
「そう言われると幽霊も怖くないですね」
「生きてる人でも怖い人いるじゃない」
「はい、確かに」
こう言うと阿波野君も納得してくれました。
「ヤクザ屋さんとかですね」
「そう、頭がおかしな人もいるじゃない」
そうした意味で怖い人もです。
「だからね」
「お墓もですか」
「ただ身体がないだけの人が沢山いる場所だから」
本当にそうした場所だからです。
「怖くないわよ」
「じゃあ本当に怖がることないですか」
「全然ね」
私はこう考えています。
「そりゃ悪いことしたら駄目だけれど」
「墓石に悪戯とかですね」
「そういうことはしてないわよね」
「はい、してないですから」
阿波野君もはっきりと答えました。
「墓石はお家ですよね」
「そう御霊様のね」
だからこそです。
「それで大切にしないといけないのよ」
「そうですよね」
「その辺り阿波野君もしっかりしてるのね」
「と、いいますか親戚も入ってますから」
それでという返事でした。
「大切にしないって思ってまして」
「そう、後で私達も入るのよ」
「それならですよね」
「大切にしないと」
何しろお家だからです。
「そういうことよ」
「わかってます、僕も入るんですね」
「私もよ」
「誰でもですね」
「当たり前でしょ、人は絶対に死ぬのよ」
あらゆる命あるものはです。
「それじゃあね」
「誰でもで」
「私も阿波野君もよ」
「ですよね、不老不死の人はいませんから」
「私が知ってる限りはそうよ」
仙人でもない限りです、ちなみにおみちでは教会長さんを里の仙人という表現であらわすことがあります。
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