飛び出る
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第五章
「借金に困っている俺達への神様の思し召しだ」
「よかったよかった」
「目や鼻が出てな」
「そのお陰でな」
「借金が返せた」
「観光客が来てくれてな」
こう話して心から喜んだ、だが。
借金がなくなるとすぐにだった、この異変が。
なくなった、誰も顔から目や口が出なくなった。その状況に戻ってだった。ギリシア人達は考える顔になってこう言った。
「何かな」
「急に出なくなったな」
「どうしてなんだ?」
「面白かったのにな」
「観光になってな」
「借金もなくなったのに」
「これはあれか?」
ヘラクレスは自宅でかなりの量と種類の昼食を食べつつ共に食べているヘレナに言った。
「神様の思し召しか」
「キリスト教の?ギリシア神話の?」
「どっちかは知らないけれどな」
ヘラクレスもそこはわからない。
だがそれでもだ、こう妻に言った。
「どっちの神様でもな」
「私達の借金をどうにかしてくれる為に」
「俺達をああしてくれたのかもな」
「一時的でもなのね」
「そうじゃないのか?」
こう妻に言うのだった。
「それでそうしたことが出来たんだよ」
「そうなのね」
「だから借金がなくなったらな」
「出なくなったのね」
「そうじゃないのか?まあとにかくな」
「借金はなくなったわね」
「楽になったよ」
ギリシア自体がだ。
「少なくともドイツや他の国から言われなくなった」
「借金を何とかしろってね」
「返せないからいいかって思ってたけれどな」
「もう破綻するってね」
そう思ってどうでもいいと思っていたのだ。
「居直ってたわね」
「そうだったけれどね」
「まあいいな」
「そうね、じゃあね」
「飯食ったら寝るか」
シェスタ、それをしようというのだ。
「今日もな」
「そうね、ゆっくり寝てね」
「昼を過ごそうな」
「そうしましょう」
「借金はなくなったし」
それでというのだ。
「寝るか」
「明日もね」
二人でワインも楽しんでからだった、共に寝室に入った。そうして昼はじっくりとシェスタを楽しむのだった。これまで通り。
飛び出る 完
2016・4・23
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