動けること
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第二章
「あれ車椅子っていうんだよね」
「そうだよ、歩けない人が使うんだ」
「ああしてね」
お父さんとお母さんは自分達の子供にお話しました。
「そうしたものもあるんだ」
「世の中にはね」
「ううん、何かね」
亮太はそのお婆さんを見ながら言うのでした。
「あのお婆さんしんどそうだね」
「実は車椅子はな」
「大変なのよ」
お父さんもお母さんもこう亮太にお話します。
「走られないから」
「歩けないから」
「ううん、走れないのなら」
お父さん達に言われてです、まずはこう言った亮太でした。
「そんなに大変なの?」
「ああ、若しもな」
お父さんはわかっていない亮太にこう例えて教えるのでした。
「亮太が悪い人に追い掛けられるだろ」
「そうした時になんだ」
「走られなかったどうだ?」
「僕は走るの嫌いだけれど」
それでもと答えた亮太でした。
「若し逃げられないのなら」
「困るだろ」
「うん」
その通りとです、亮太は答えました。
「とてもね」
「それにね」
今度はお母さんが亮太に言いました。
「歩けないとね」
「うん、その時は」
「おトイレやお風呂にもね」
そうした場所にもというのです。
「自由に行き来出来ないのよ」
「それは」
「急におしっこやうんこをしたくなる時あるでしょ」
「あるよ」
亮太にも心当たりがあります、だから答えるのでした。
「よくね」
「そうした時若し歩けないとね」
「漏らしちゃうよね」
「そう、そうなるから」
「歩けないとだね」
「困るでしょ」
「そうだよね」
「だからなのよ」
お母さんは亮太にさらに言いました。
「歩けなくても困るのよ」
「そうなるんだね」
「だから歩けるならね」
「そして走られるなら」
「それは凄くいいことなのよ」
「歩けなかったら」
ここで亮太は自分の足を見ました、しっかりと歩いています。
「そして走られなかったら」
「困るでしょ」
「そうなるよな」
お母さんもお父さんも亮太に優しい声でお話します。
「だからね」
「歩けることは凄くいいことなんだぞ」
「走られることもね」
「それだけで素晴らしいことなんだぞ」
「いい、亮太」
また亮太にです、お母さんは言いました。これまでよりもずっと優しい声になってそのうえでお話をします。
「世の中にはさっきのお婆さんみたいにね」
お婆さんはもう見えなくなっています、お店の外に出たのかも知れません。
「歩けない人もいるの」
「そうなんだね」
「歩きたい、走りたいって思っていても」
「そう出来ない人がいるから」
「だからね」
それでというのです。
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