人の為に
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第五章
コーネルは大学で神学を熱心に学びつつだ、ボランティア等に励んだ。大学に入ってもまずは人の為に動いていた。
学問にも励み優秀でしかも立派な人格を持った学生だと忽ち評判になった。当初は彼の学業と人気にやっかむ者もいたが。
彼を知りすぐに彼を好きになっていた、決して器用な人物ではないが。
その優しく献身的で公平な人柄は誰からも愛された、それでだった。
大学の教授もだ、彼についてこうしたことを言った。
「彼ならば」
「はい、必ずですね」
「立派な人物になりますね」
「あのままいけば」
それこそとだ、周りにも言うのだった。
「素晴らしい神学の実践者、世の中に役立つ人間になる」
「そうですね、凄い人物です」
「まだ若いですが優れた人格者です」
「まず人のことを考える」
「そうした人なので」
「うん、彼の将来は」
教育者としてだ、教授はこうも言った。
「素晴らしいものになる、ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「問題は彼がどの仕事になったらだ」
大学を卒業してからというのだ。
「最も人の、社会の役に立つか」
「そのことですか」
「そのことが問題ですか」
「彼は常に人の為に動き人に尽くしたいと考えている」
愚直なまでにだ、コーネルはそうなのだ。
「それならばだ」
「どの職業ならばですね」
「一番貢献出来るか」
「それが問題なんだ」
まさにというのだ。
「彼の場合は」
「そうですね、それはです」
「難しい問題ですね」
「難しい、しかしね」
それでもというのである。
「彼ならだよ」9
「立派にですね」
「人の為に尽くしていける」
「そうなのですね」
「うん、必ずね」
こう言うのだった、自分の研究室にいる准教授や院生達に。
「この大学に残ってもいいが」
「より、ですか」
「広く働いて欲しい」
「世の為人の為にですね」
「その仕事は何か」
教授は考える顔になり述べた。
「色々あるにしても」
「学校の先生でしょうか」
院生の一人が言った。
「それなら」
「子供達の為に尽くすからだね」
「どうでしょうか」
「それもいいね、そしかしそれなら」
「この大学に残って」
「うん、そしてね」
そのうえでというのだ。
「先生になり」
「学生達に尽くす」
「それもあるね」
「どちらでもですね」
「いいね、先生もいいが」
しかしとだ、教授は言うのだった。
「私は彼にはね」
「より、ですね」
「そう、世の為人の為に役立つ」
「彼にはそうした仕事をしてもらいたいですか」
「宗教家か、団体に入るか」
「NGO団体ですか」
「確かなね」
こうした団体も色々とある、中にはお題目を唱えても悪質な行為を繰り返している団体もある。美辞麗句は常にその通りであるとは限らない。
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