FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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運とツキ
前書き
や・・・やっとできた・・・
シリル「お疲れ様」
マジ頭から飛んでってもうダメかと思った。
レオン「あそこで止められたら俺タヌキで終わっちゃうとこだったじゃん!!」
ソフィア「それはそれで一興かも(笑)」
各々の数字と着ぐるみが決まり、迷路と化した広場を歩き始める。皆多種多様な着ぐるみになっていることもあり、素早く移動できているものもいれば、なかなか手間取っているものもいた。
「ん?声は出せても変声されてるのか?」
その中でサルの着ぐるみに身を隠しているこの男は、自らが発している声に違和感を覚え、迷路の中を進みながらも何度も発声し、通常の自分の声とは変えられているそれを確認していた。
(考えてみれば、声がそのままじゃサブを騙すことなんかできねぇか)
冷静になって考えてみると、この現象は不思議なことではないとユウカはわかった。仮に声がそのままだった場合、サブがその人物が誰なのかあっさりとわかってしまい、駆け引きも何もなくなってしまうからだ。だから声を変え、どちらのプレイヤーか見分けられないようにしているのである。
(ま、今はそれは関係ない。とにかく誰かに会わないことには・・・)
壁に手をつきながら前方へと進んでいき、T字路でどちらかに曲がろうかと左右を見渡した時、自分の方向に向かってゆっくりと歩いてきているウサギを発見する。
バッ
無意識に出しかけた体を曲がり角の影へと隠すサル。彼はそこから頭をわずかに覗かせ、歩いてくるウサギの様子を伺う。
(辺りをキョロキョロしてる。俺には気付いてないってことか?)
ウサギはどこに向かおうとしているのか決まっていないようで、ゆっくりと歩きながら辺りを見回し、誰かと遭遇しないかと探し回っているようだった。
(ウサギっていったら・・・中身は誰だ?)
この時ユウカは着ぐるみから中身を見分けられないかと考察することにしてみた。自分がサルだったのは、一体なぜなのかわかれば、着ぐるみから中身を見分けることもできるのではないかと。
(・・・ダメだ。さっぱりわかんねぇや)
どういう基準で着ぐるみが決まったのか、そもそもちゃんと意味があってそれぞれの着ぐるみが決められているのかもわからない。その中で見ただけで正体を見分けるのは難しいとユウカはすぐにわかった。
(ウサギなら・・・女か?)
何となくではあるが、ウサギのような小動物は女性の方が似合うとユウカは考えた。男である自分がサルだったのも、ビジュアル的に考えればわからなくはない。
(シェリアかウェンディか・・・はたまたソフィアか)
カグラとミリアーナは小動物といった感じでは決してない。もしかしたらシリルの可能性もなくはないとも一時は考えたが、さすがに運営も気を使うのではないかとユウカは考え、頭の中なら考えを消した。
(じゃあ、その線でい――――)
目の前の相手からポイントをあげようと動き出そうとした。だが、彼はあるものを見つけると、出しかけた足を引っ込め姿を潜める。
(チッ、また誰か来やがった)
ウサギの後ろからノソノソと歩いてくるクマ。もしどちらかがソフィアだった場合、ポイントを与えてしまうのは得策ではないと考え、ユウカは隠れたのだ。
(まずはこの二人のやり取りを見て判断するか)
ゆっくりと歩くウサギとそれに接近するクマ。サルはその様子を伺い、チャンスを待つ。
シリルside
一直線に続いている道をゆっくりと進んでいく。この道はほとんど脇に反れる道がなく、奥の行き止まりまでは歩いていくしかないかな?
(それにしても、誰にも会わないなぁ)
辺りをキョロキョロと見回しながらゆっくりと歩を進めていく。しかし、頭についている長い耳が顔を振る度に揺れているのを感じ、かなり違和感を感じている。
(なんでウサギなのかな?)
個人的にはもっとカッコイイ動物にしてほしい気持ちがあった。ウサギはかわいいけど、なんか女の子っぽいような気もするし、素直に喜べない。
(ハッ!!もしかして・・・)
そんなことを考えていると、ある考えが頭の中を過った。ウサギは動きが早く、跳躍力がある。つまり・・・
(俺ってめちゃくちゃ運動神経いいと思われてるんじゃ!?)
どういう基準で着ぐるみが選ばれたのかはわからないけど、この可能性もないことはないと思う。自分で言うのもなんだけど、動き事態は決して悪くはない。足もそれなりだし、体を動かすのは好きだから、なかなかの身のこなしをしている自負もある。
(ちょ・・・ちょっとやってみようかな)
好奇心が湧いてきたので、その場に立ち止まり軽くジャンプして体をほぐす。心もウサギさんになってるのか、なんだか軽く感じる。
(よし!!)
地面に着地し、大きく一度深呼吸をし、この直線道を走り出そうとした。その瞬間・・・
むぎゅっ
後ろからいきなり何者かに抱き付かれ、胸を揉みしだかれた。
(ぎゃあああああああ!!)
ゲームのルールでサブは言葉を発することができない。そのため、後ろから胸を揉んでくるクマに何も反撃することができず、されるがままでいるしかない。
「見つけた」
(!?)
あまりのクマの慣れた手つきで息が荒くなり始めた頃、そいつは声を発することができないゲームの中で、確かにそう口に出していた。
(こいつ・・・まさか・・・)
サブは声を出すことはできない。しかし、たった二人だけこのゲーム中に声を発することができるメンバーがいる。
「41番、シリル・アデナウアー」
俺のお腹辺りに書いてある数字を読み上げ、名前まで確実に回答してくるクマ。その瞬間、俺はこいつの正体を確信した。
(このクマ・・・絶対ソフィアだぁ!!)
抱きついて胸を触ってきた時点でおおよそ見当はついていたが、まさか本当にソフィアだったとは・・・てかこいつ・・・胸を触って俺だと見分けたなんて・・・変態過ぎる・・・
『ソフィア選手正解です!!小さき魔術師に1ポイントが加算されます!!』
どこからか聞こえてくる司会者の声。この音量から考えて迷路全体に聞こえるようになっているんだろう。
『41番ウサギ!!退場です!!』
だがそれは同時に、誰が正解を当てられたのかをみんなにも知られることにもなってしまう。名前は出てこなかったけど、次のサブが飛ばされてくると、俺が当てられたこともバレてしまう。もしこんな恥ずかしい当てられ方をしたのを誰かに見られてたら・・・そう思い、恥ずかしさと絶望感に苛まれながら、俺は転送魔法でフィールドの外へと飛ばされたのであった。
第三者side
(へぇ、正解が誰だったのか、相手にはわからないのか。これは有利になったかも)
目の前にいたウサギが消えたのを見ていたクマは、踵を返し元のの道へと歩いていく。
(これで1ポイントリード。それに、着ぐるみの生地がそこまで厚くないから、触れば誰だかすぐに判別できそう)
いまだに残るシリルの胸の感触に心を踊らせながら、先ほどの回答で得た情報を整理していた。
(リオンさんとトビーさんとユウカさん以外は感触覚えてるから、これはソフィアの勝ちだなぁ。負け戦なんて、ユウカさんも可哀想)
勝利を確信し、余裕綽々の表情をしているソフィアだったが実は違った。この時、彼女は気付いていなかった。自分が回答していたその様子をじっと見ていた人物がいたことを。
(ラッキー!!退場したのが誰かわかった上に、ソフィアの番号もわかった!!)
本来なら誰が退場したのかわからず、後々に響いてくるはずだったのだが、ユウカはソフィアが回答しているのを見ることができた。おまけに、敵からも最低1ポイントは奪わなければならない性質上、敵の・・・それもプレイヤーの番号を得たことはとても大きい。
(すぐにでもコールするべきか?いや、今コールするとソフィアが戻ってくる可能性がある・・・もう少し待つべきか)
ユウカはソフィアの姿が見えなくなるまではコールをせず、十分に距離を置いてから回答を行おうと考えた。
ポイントはソフィアが優勢。しかし、シリルが退場したこととソフィアの番号を入手したユウカにもツキが回ってきているようにも感じた。だが・・・
「ん?」
幸運の女神は、ソフィアを見放してはいなかった。
(トラ!?)
ソフィアが真っ直ぐの道から曲がり角へと入っていくと、すぐさま目の前に黄色と黒の縞模様の入った着ぐるみを着た人物が飛び込んできた。
(あ・・・でもちょっと可愛いかも)
一瞬トラが視界に入ったことで体をビクッとさせ硬直していたソフィアだったが、中身が人間であることと、本物のトラよりも親しみの持てる容姿になっていたことで、彼女は警戒心を解いていた。
(トラかぁ・・・中身は誰かなぁ?)
目があったため、動きを止めたトラに向かってゆっくりと歩み寄っていくクマ。それに対し、トラの中身の人物はというと・・・
(誰だ?このクマは)
不審な表情で、近寄ってくるクマをじっくりと観察していた。黒く、長い髪をした女性が入っているトラは、向かってきているのか、すれ違おうとしているのか判断しにくい目の前の存在をじっと見つめている。
(クマの割りに小さいな・・・リオンとトビーではないな)
体のシルエットは浮かび上がらないようになっているが、ある程度の動きやすさが求められる構造にしなければならない性質上、中の人物の体にフィットさせる必要がある。そのため、着ぐるみの大きさで中の人物を絞り込むことができる。
(ユウカの可能性もあるが・・・ソフィアだったら逃げなければならない)
ソフィアとユウカの身長は大きくは変わらない。そのため、正体を知らないカグラからすれば、どちらの可能性もあるので下手に動くことはできない。ただ、シェリアやレオンも同じくらいの身長であるため、クマの中身がプレイヤーの二人とは確信を持つことはできないが。
テクテクテク
徐々に近付いていくクマを見て、それが自分目掛けて歩いていることにカグラは気が付いた。なので、彼女はそのクマがここからどういう行動を取るのか、身構えつつ対処できるようにしている。
(向かってくるということは、恐らくこいつはプレイヤー。どっちだ?)
ユウカなら自分がカグラであることを伝え、ソフィアなら彼女に誤回答をさせて回答不能にさせる、またはその場から逃げて答えさせない。このどちらかを選ぶしか彼女にはできないはずだった。だが!!目の前のソフィアにはそれをさせる必要がなかった。なぜなら・・・
ムギュッ
彼女は抱き付けば、着ぐるみの中身を判別することができるのだから。
(!?)
いきなり抱き付かれたことに驚きを隠しきれないカグラはパニックに陥っていた。おまけに、ソフィアがガッチリと抱き付いてしまっているため、引き剥がすことができない。
サスサス
(な!?こいつ・・・お尻を・・・)
さらに、抱き付くだけでは飽き足らず、左手を下げていきお尻を撫で回し始めるクマ。トラがクマにセクハラをされるシュールな光景に、観客たちはどう反応すればいいのか迷っていた。
(むぅ・・・カグラさんぽいけど・・・微妙・・・)
本来なら十分すぎるほどにカグラの体を堪能しているのだが、今回は普段よりも厚手の着ぐるみを着ていることと不正解を出すわけにはいかないというプレッシャーから慎重に判別しようとするソフィア。彼女はカグラである確実な証拠を手に入れるため、右手をある部位へと移動させていった。
モミ
(あ・・・)
思わず声が漏れそうになったカグラはそれを懸命に堪えようとしていた。ゲームの仕組みでサブの声は外部には漏れないと事前に説明はあったのだが、それが消し飛んでしまうほどの展開が起きたからだ。
(おっ!!この感触は間違いない!!カグラさんだ!!)
何度も何度も胸を揉んでいくソフィアとすぐにでも彼女を切り刻みたい衝動に飲み込まれそうになっているカグラ。
「見つけた。39番、カグラ・ミカヅチ」
抱き心地、お尻、胸の感触からソフィアはトラの中身を見破り早々にコールする。
『ソフィア選手正解です!!小さき魔術師に1ポイント追加です!!39番トラ!!退場です!!』
ソフィアが正解したことにより小さき魔術師は2ポイントを獲得。それも、敵チームからポイントを上げて退場させたことで、ひとまずのノルマを達成することができた。
(これ、もう終わっちゃうかなぁ?なんか歯応えが無さすぎてつまんないかも・・・)
ノシノシと移動しながらクマはそんなことを考えていた。このままならまず間違いなくソフィアが勝つのは目に見えていた。だが・・・
『ユウカ選手正解です!!』
このコールが流れを大きく変えることになる。
(オッ?ユウカさんも正解出したか。誰が退場させられるのかな?)
ソフィアは続けてアナウンスされるであろう退場者の番号と着ぐるみの種類に耳を傾ける。
「・・・?」
しかし、いつまで経ってもアナウンスがならない。不審に感じたソフィアは、ある結論に至っていた。
(もしかして・・・ソフィアが当てられた!?)
開始までのルール説明で退場者するのはサブの八人のみと言っていた。そのため、退場者のアナウンスがないのは、プレイヤーが番号をコールされたからだとソフィアは察していた。
(この近くにユウカさんがいるってこと!?)
辺りをキョロキョロと見回し敵の存在を探そうとする。だが、どこにも人影は見当たらない。それもそのはず、ユウカはソフィアから十分に距離を取ってからコールをしたので、その場にいるはずなどないのだ。
(ユウカさんは近くにいるの?それとも離れてから答えた?どっち?)
チョコチョコと動き回りながら周囲に人がいないか確かめるが、ユウカどころか他には誰の姿も見当たらない。フィールドがある程度の大きさになっているため、そう簡単に遭遇することはできなくなっているからだ。
(仕方ない・・・こうなったらこの手で確認するしかないか・・・)
近くにいるのか、はたまた遠くにいるのかを確認するためにソフィアはある作戦を使うことにした。彼女は大声を出すために、体一杯に空気を吸い込んでいく。
「レオ~ン!!レオンならこの壁飛び越えて来れるんじゃないの!?」
フィールド全体に聞こえるようにと目一杯の声で叫ぶソフィア。彼女は、運動能力の高いレオンだったら、背丈よりも遥かに高い迷路の壁も飛び越えて自分のもとまでやって来れるのではないかと考えた。
(レオンが来てくれたらそのままポイントにできるし、ユウカさんがそばにいたら誘い出してポイントを奪い取ってみせる!!)
レオンに聞こえるのであれば、ユウカにも聞こえているのは言うまでもない。彼が遠くにいればレオンをポイントにできるし、近くにいるなら誘い出して彼からポイントを奪ってやろうとソフィアは狙いを定めていた。
だが、肝心のレオンがいつまで経っても姿を現さない。それどころか、壁を飛び越えようとチャレンジしている音や震動すら感じ取れないのだ。
「レオン!!聞こえないの!?」
自分の声が聞こえてないのかともう一度、さっきよりも大きな声で少年を呼び寄せる。しかし、彼をいくら呼んでも無意味なのである。なぜなら・・・
(ソフィア・・・間が悪すぎる・・・)
不運にも、レオンことタヌキとユウカことサルが真っ正面で対面していたからだった。
後書き
いかがだったでしょうか?
まさかの主人公の速効退場とレオンの大ピンチです。
次はシリルとカグラの退場者同士の会話とレオンがユウカと対面した経緯を行こうかと思います。
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