聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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263部分:第三十七話 砂漠においてその三
第三十七話 砂漠においてその三
「私がアテナに敗れる筈がない」
「それだけの力があるからこそか」
「その通りだ。私はこの世界を統べる者」
声は誇らしげに語ってみせてきた。
「その私がアテナなぞに遅れを摂るはずがない」
「本来の姿ならばだな」
「言ってくれるな。次にはだ」
「その時を楽しみにしている」
男もまた実に楽しそうに声に返すのだった。これからのことを心から期待しているかのような声で。
「叔父上と手合わせするその時をな」
「我が僕達は不死身だ」
声の声に闇が混ざった。いや、それはむしろ本来からあったものだが今それをあえて出したかのような。そうした闇が混ざった声であった。
「それをよく覚えておくようにな」
「それは私の僕達もだ」
男も言葉を返す。
「不死身と不死身か。面白い」
「楽しい戦いになりそうだな」
「ではだ。その戦いの為にだ」
男の声が起き上がったようになった。
「私は間も無く地上に戻る」
「うむ」
「そしてアテナの軍勢を蹴散らしてくる」
「そうして私の元に多くの死者達がやって来る」
また声が闇を露わにさせた声を出してきた。
「いいことだ」
「それではだ」
男はこれで話を終わらせようとしてきた。
「これから二人で食事とするか」
「食事か」
「そうだ。たまには二人でどうだ」
こう声に対して提案するのだった。
「共にな。叔父上の僕達でも交えて」
「いいな。貴殿と共に食事を摂るのもな」
彼もそれをいいと言うのだった。
「ではだ。ネクタルとアンブロシアはあるか」
「無論」
既に用意されていたかのような質問であった。そう、既に。
「ではそれでな」
「楽しくやるとするか」
「そうだな。そうしよう」
彼等はこう言葉を交えさせていた。そうしてそのうえで何処かへと小宇宙を消したのだった。彼等もまた何かを話し合いそうして何かを期待していた。
その頃アルデバラン達はイラクに着いていた。しかしそこはイラクはイラクでもまだ砂漠ではなかった。
そこは岩山だった。草木一つとしてなく黒い岩と枯れた土があるだけである。そしてその荒涼とした岩山が高くそびえ連なっている。彼等はそこにいるのだった。
「あれっ、イラクっていっても」
「砂漠じゃないんですか?」
「とはいってもここは随分と荒れてますね」
「何か人っ子一人いませんし」
「ここは国境だ」
アルゲティが重い声で辺りを見回し声をあげる青銅の者達に対して告げた。
「国境のな」
「ああ、っていうとあれだよな」
「つまりここはだ」
「イラクとトルコだのシリアだのの国境か」
「そうだよな」
「その通りだ」
今度はモーゼスが彼等に答えた。
「ここはな」
「っていうとクルド人自治区か」
「つまりここがか」
「その通りだ」
アルデバランは後ろにいる彼等を振り向かなかった。しかしそれでも彼等に対して告げるのだった。
「とはいってもここは居住地域ではないがな」
「サダム=フセインが滅茶苦茶やってましたからねえ」
「あの独裁者が」
青銅の者達は今度は口を歪ませてかつてこの国にいた所謂独裁者に対しての批判をはじめた。それは彼等にとっては常識の話であった。
「あいつがクルド人を弾圧して虐殺していましたからね」
「それだけは何とか終わったんでしたっけ」
「それがあったのは事実だ」
アルデバランもそのことは否定しなかった。
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