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HUNTER×HUNTER 六つの食作法

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002話

「大変お待たせ致しました。ただいまをもってハンター受験者の受付時間を終了いたします、まず忠告を。これより開始されるハンター試験は運が悪かったり実力が乏しい方は大怪我を負ったり最悪死に至る事もあるでしょう。それでも良いという方のみご同行ください。そうでない方は後ろのエレベーターへ」

スライドした壁の奥にて待ち構えていたのはトランプのキングのような風貌をしている丁寧な物言いの男、懇切丁寧だが彼の言葉が孕んでいる危険は人の命を容易く奪う物なのだろう。彼の言葉通りに下手すれば死ぬ危険な試験。だが此処に集った豪傑武士共は動じなかった。

「宜しい、承知しました、第一次試験参加者405名……ですね」

試験参加者を確認すると振り返って大きく腕を動かしながら歩き始める、それに続く一同。遂に始まる、世界中の誰もが待ちわびたこの時を。帰る訳が無い、此処まで来るのにも苦労したのに勿体無い事はしないだろう。歩いていると僅かに前の人間の足を進める速度が徐々に大きく、小走りになっていく。遂にはランニングほどの速度で走っている。

「申し遅れましたが私1次試験担当のサトツと申します。これより皆様を2次試験会場まで案内いたします」
「2次試験会場?んじゃ1次試験は?」
「つまりだサトツさんよ、今から2次試験の会場まで行くのが試験って事だな」

何処か嬉しそうに笑いつつ声を発したシャネル、その言葉に周囲は動揺するが徐々に納得の声で満ちていく。サトツも肯定の言葉を送りながら唯黙々と走り続ける。

「成程、差し詰め持久力試験という所か」
「面白れぇ、とことん着いて行ってやろうじゃねえか!!」
「その意気だレオリオ。喉が乾いたら俺にいいな、食料はたんまり持ってきてる」
「わぁいありがとうシャネル!」
「良いって事よ、旅は道連れ世は情けってな」

シャネルの笑顔に元気を貰いつつゴン、クラピカ、レオリオ、シャネルは走り続ける。唯走り続けるという試験内容、一見酷く簡単に見える。実際に行う事は走るという行為のみだがゴールについては一切知らされていないに加えて薄暗い地下、変わり映えしないの風景は精神を蝕んでいく。

試験開始から2時間。試験者が走った距離は既に30キロを越えていた、合計(トータル)で何キロ走ればいいのか解らぬ状況、終わりの見えぬ道を走る為のペース配分などをも考慮すると体力と精神力を大幅に磨り減らす事になる。既に数名の脱落者を出していた。


「はぁ、はぁ……(まだ先すら見えぬとは……ゴン、達は大丈夫か……?)」

いまだ余力を残しているクラピカは共に試験を受けたゴン達の姿を軽く探す為に視界内を探った。自分がいる集団より少し離れた所で息を少々切らしながらも精神力で食らい付いているレオリオ、その前を走るゴンは余裕を持っている、寧ろ同い年位の少年と話していた。彼らの心配は無いようだ、そして……

「ふっふっふっふっふっ」

隣で規則正しいリズムを刻みながら足を動かし続けているシャネル、顔だけを見ればゴンより余裕がありそうに見える。

「(流石だな……)ッしまった!?」

思わず関心と安堵の息を漏らした時ペースを乱してしまい脚が縺れた、前かがみになりそのまま転びそうになってしまう。一旦ペースが大きく崩れると一気にきつくなる、拙いと思っても自分ではどうしようもない。どうすればと思った時、背中全体を押す暖かい感触と腕が掴まれ前へと優しく引っ張れた。そのお陰で何とか持ち直し走り直せた、だが一体何がと思ったがその答えは実に簡単だった。隣に居たシャネルによる物だった。

「大丈夫かクラピカ?」
「……ぁ、ああすまないシャネル、世話を掛ける!しかし何故助けてくれた!?」
「言ったろ?道は道連れ、世は情けってな!気にすんなって、怪我しちまったらこの後の試験が大変だからな。頑張ろうぜ」

シャネルは然も当たり前のように答えてくれた、折角会えたのだからこのまま一緒に試験を受けようと。しかもまるでもしも助けの手が間に合わなかったら背負ってくれるような口ぶりをしていた、優しい言葉にクラピカは一瞬言葉を失ったが直ぐに笑った。

「有難うシャネル、お前のお陰で走れる!!」
「気にすんなって。もしも転んでも俺が背負ってでも走るからよ!」
「それは流石に申し訳ないのだが……」
「あっお姫様だっこの方が良かったか?」
「なぁ!?お、お前は何を言うんだ馬鹿か?!」
「ははははっそんだけ元気があれば問題なさそうだな!」

気持ちよい笑いを上げる彼は自分の気など知らないように底抜けた笑いを上げてそのまま走り続ける、クラピカは少々呆れつつも赤くなった頬を隠しながら先程より力が出ている足に力をこめて走り続けるのであった。そんな時

「ぬぉぉおおおおおお!!!!絶対ハンターになったるんじゃぁあああああああ!!!!!!!」

と凄まじい勢いで集団に合流しそのまま上位集団に突入した男が居た、レオリオだ。どうやら形振り構うのを止めたのか上半身は裸になり、服は腰に巻いてダッシュしている。そのまま見えてきた地上へと向かうであろう階段を登っていく、これからは更にきつくなるという事だろう。そしてサトツはペースを上げている、これはこちらも上げていく必要が出てくる。

「あいつも元気だなぁ、ありゃ大丈夫そうだな」
「寧ろ、私たちも負けて、られないなっ!」
「おうペース上げるか、着いて来れるか?」
「愚問だ、寧ろ―――お前が私に付いて来いッ!!!」

挑戦的な笑みを浮かべて挑発するクラピカはシャネルを一瞥するとそのまま階段を先に駆け上がっていきハイペースを維持し続けるレオリオと並列する、一瞬後ろを向き笑みを浮かべるとシャネルもメラメラと勝負心が刺激される。

「負っけねぇぞぉおおお!!」


「「ゴォオオルッッ!!」」

気付けば競争になっていたのかクラピカとシャネルは階段の終わりと到達すると勢い良く飛び出して声を張り上げた。飛び出た先は深い深い霧に包まれて2メートル先も見渡す事が出来ない場。

「はぁはぁはぁ……ど、どっちが先だった……!?」
「お疲れ様シャネルにクラピカ!」
「ようゴン……ふぅ、んっそちらさんは新しい友達か?」
「うん!一緒に競争してたキルアだよ!」
「宜しく、それと俺の目には二人同時だったぜ」
「おうよろってマジか……」

結果に若干がっかりしながらもバックからドリンクを取り出してゴクゴクと飲む、流石にあれだけ走りこんだ後に飲むドリンクと言うのは身に染み込んで来る。

「シャネル俺にも貰えないかな?」
「おう約束だからな、ほれ好きに飲めよ」
「あっ俺にもくれよ」
「私にも頼む」

次々とドリンクへを手渡し一同は喉の渇きを潤していく、休憩しつつ他の試験者がやってくるのを待っているとよろよろと階段を上りきったレオリオは倒れ付した。

「つ、着いたぁ……」
「レオリオお疲れ様!」
「お先に休憩させて貰ってるぞ」
「だらしねえぜおっさん」
「誰がおっさんだてめぇ!!俺はお前らと同じく10代だああぁ!!!!」
『え"っうそ!?』

レオリオの発言に思わず凍り付き動揺しまくる一同、何気に今日一番驚いた出来事かもしれない。まさか20代後半のような風貌で10代だとは………。

「レオリオって10代だったの!?うっそぉ!?」
「うそじゃねえよ!!っててめぇらだけなんでなに飲んでんだよ!!?俺にもくれ!!」
「あ、ああほらよ」
「老けすぎだろ……」
「喧しい!!」

不貞腐れたようにドリンクを飲むレオリオ、あそこまで驚かれたならまあ解らなくも無いが。

「あ~一応言っとくが俺は20代だからな、今22だ」
「あ~良かった、もしもシャネルまで10代だったらもう顎外れちゃうかと思ったよ」
「寧ろそんな形で22なのかよ、もっと歳行ってても可笑しくないだろ」
「(私と5歳差だったのか……もっと年上かと思ってた)」 
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