DQ5~友と絆と男と女 (リュカ伝その1)
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48.青い鳥と言う物語がある。実は自分の家の鳥が探し求めた鳥だったという…そりゃ無いぜベイベー的な物語。
<世界の某所>
強張った身体に血潮を感じる!
闇の中に小さな光が瞬き、そして広がって行く…
遙か彼方から呼びかける声が近付いてくる。
俺の視界が開け目の前で恰幅の良い男性と、男女の幼い双子が見つめている…
「サ…ンチョ…?」
声が上手く出ない。
「坊ちゃん…いえ!リュカ様…私の事が分かりますか?お答え下さい。リュカ様が幼い頃、ラインハットへ赴く前に私が探していた物は何ですか?」
「まな板だよ」
「間違いありません!リュカ様です。リュカ様に化けた偽者ではありません!」
どうやらサンチョは俺の言い付けを守った様だ…
俺を亡き者にしてすり替わろうとするヤツが居るかもしれない…だから俺とサンチョにしか分からない事を聞くようにと、グランバニアを立つ直前に言っておいたのだ。
「さぁ、ティミー様、ポピー様…お父上ですよ!」
ティミー?ポピー?父?
「「お父さん!」」
双子は俺に抱き付き感涙しながら俺を父と呼ぶ!
子供特有の早口で一気に話す為、殆ど理解出来ない。
何とか理解できたことは、俺は石にされて8年経過していた事。そして、この双子は俺の子で、親は無くとも子は育ちまくった事。
「さぁさぁ…お二人共!そんなに一度に話してもお父様が混乱してしまいます。一度お城に帰り、ゆっくりしましょう」
そうサンチョが宥めると、娘のポピーが呪文を唱えた。
「ルーラ」
ル、ルーラ!?
参ったなぁ…
あんなキツい思いをして魔法適正を得たのに…
この子は生まれつき魔法の天才の様だ…
俺、形無し…
<グランバニア城>
昨晩は双子が甘えてくる為、一緒のベットで眠ったがイマイチ自分の子であると言う実感が湧かない。
ダメな父親だ!
朝…というか昼に近い朝。
俺はオジロンに呼び出され謁見の間へ来た。
どうやら苦労をしてきた様だ…
おでこが広がってる…(笑)
オジロンは俺に玉座を薦めたが、俺は断り手近な椅子に腰掛ける。
「叔父上、8年もの間留守を守って頂きありがとうございます」
そんなにおでこを広げちゃって…
「なに、ワシに出来る事をしただけだ」
「それともう少しの間、国王代理をお願いします。何だったら、代理の字を外してもいいですよ!」
「馬鹿を申すな!!今後は王としての勤めを果たしてもらう!国王はリュカ、お前なのだぞ!」
「お断りします。僕は王である事より、夫である事を優先します。8年前そうした様に…もっとも、僕にとっては昨日の事ですか…」
「まったく…お主も兄上も無責任だ!いつも苦労するのはワシだ…」
「オジロン様!諦めて下さい。分かっていた事でしょう」
「そうだよ、親父!リュカが言って聞く様なヤツじゃないのは分かっているでしょ!」
不意に巨乳の美女が現れ、オジロンを親父と呼び宥める。
「!?もしかしてドリス?…美人になっちゃって…まだシマシマ穿いてる?」
強烈な踵落としを喰らった!
しかも残念な事に中にスパッツを穿いていた。チェッ!
「お父さん!僕も連れて行ってくれるよね!」
ティミーが不安気に問いかける…
「私、いっぱい魔法の勉強しました。お父さんの足手纏いにはなりません!」
足手纏いか…実力はあるのだろうが…
「「お願い!お父さん!」」
「………誰か……剣を貸してくれ!」
周りを見渡すと一人の若い兵士が近付き剣を手渡す。
「リュカ様これをお使い下さい。リュカ様の剣です」
受け取った剣を見ると…父、パパスの剣だ!
回収してくれたんだ…
「ティミー。着いてきなさい」
俺は剣を腰に差し、中庭へティミーを誘う。
皆それにつられて着いてくる…
中庭へ着くとティミーに向き直り剣を構える。
「え!?」
「足手纏いになるかどうか、確かめさせてもらう。構えろ!」
俺は父親の威厳を見せるかの様に、渋く格好を付ける。
ふとティミーの背中の剣を見ると………あれ?
天空の剣じゃね?
あれ!?
もしかして俺の息子………伝説の勇者!?
まぢ!?
勝てる訳ねぇーじゃん!
やっべー!
どうしよう…『構えろ!』とか渋く格好つけちゃったよ!
息子にボコボコにされたらハズカシー!
負けるにしても威厳を保たないと…
まずは先手必勝だ!
いきなり攻撃を仕掛けて優位に立つ!
あとは負けない様にして、ある程度したら………うん!勝敗をうやむやにして、何か格好いい事言って終わらせる!
よし!
それでいこう!
…まずは、不敵に笑って先手必勝…
<グランバニア城>
ドリスSIDE
リュカは不敵に笑うと鋭い一撃をティミーに放つ!
ティミーは、あの鋭い一撃をすんでの所で受けると、リュカに向かい構え直す。
さっきの一撃に対応出来る人間はいないだろう…
ティミーも天空の剣じゃなかったら、防げなかったに違いない。
天空の剣がティミーを動かしたと言った方が正しいだろう…
リュカの連撃が続く!
ティミーはリュカのフェイントに翻弄され、情けないダンスを踊っている様に見える。
本当はティミーも強いのだ!
まだ8歳なのに、ピピンやピエールと互角に渡り合える!
天空の剣無しでだ…
だがリュカは強すぎる!
天空の剣が無かったら、既に勝負は着いていただろう…
ティミーも意地を見せ反撃をする。
リュカは難無くティミーの攻撃を去なし、軽やかに舞って見せる。
そしてリュカは、ティミーの隙を突いて強烈な剣撃を浴びせる。
だがティミーが天空の剣を使う限り、自動的に剣が防御するので、何時まで経っても決着は着かないだろう…
そう思った時、リュカが手近にいたポピーを抱え、刃を突きつけた!
な!?
どういう事!?
「ティミー、剣を捨てろ!」
「え!?…どういう事…?」
ティミーも混乱している。
「お前が剣を捨てないと、お前は妹を失う」
「ズルイよ!ポピーは関係ないじゃん!」
「(クスッ)…確かにズルいな。ズルをした父さんの負けだ」
そう言うと剣を鞘へ納め、ポピーを抱きながらティミーの所まで近付き腰を下ろす。
そしてティミー、ポピーを膝の上に乗せ語り出した。
「昔、パパスという屈強な戦士が息子を連れて旅をしていたんだ」
皆が静かに聞き入っている。
「パパスは強かった。誰にも負けないくらい強かった。だがある時、息子を人質に取られ無抵抗なまま魔族に殺されてしまった」
まるで他人事の様にリュカは語るが、間違いなく全て体験談だ…だからこそ重みがある。
「お父さん…」
「確かに父さんはズルをした…でも、敵はズルい奴らばかりだ。もし、お前達が人質に取られたら…父さんはパパスと同じ道を歩むだろう…」
リュカの気持ちが痛い程分かる…だが…
「お言葉ですがリュカ様!パパス様はお一人で旅をなさっておりました。リュカ様には多くの仲間がおります。私も両殿下をお守りする為、ご一緒させて頂きます」
「君はさっき剣を渡してくれた…」
「はい!お久しぶりであります。ピピンです」
「偉そうな事を言う様になったな!………パピンさんは?」
「父は陛下の行方を捜す途中で…」
「そうか…すまない…」
「いえ、父は私の誇りです!ですから、父パピンの為にも私と両殿下をお連れ下さい」
格好いい事言うじゃない、あいつ!
「………分かったよ。分かったけど、今にも旅立とうとするのは止めてくれる?まだ出かけないよ!やる事あるから、まだ旅立たないよ!」
ビアンカさんを助け出す旅かぁ…私も行きたいなぁ…
ドリスSIDE END
後書き
息子に勝てなかったけど、威厳だけは保てました。
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