シャルワール
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第三章
ここでだ、マルヤムはこうしたことを言ったのだった。シャハラザードがそのまま成長した顔で。とはいっても背もスタイルも娘と大体同じだ。
「目立って風俗的にもいい服ね」
「それだな」
「結果としてそうなるわね」
「そう、ただね」
ここでだ、また言ったマルヤムだった。
「私ふと思ったけれど」
「何か思いついたか?」
「ハーレム調でそれでいて露出も少ない」
「ハーレムか」
「そう、いい具合にね」
まさにというにだ。
「あるのよ」
「それどんな服だ?」
夫は思わず身を乗り出して妻に尋ねた。
「一体」
「シャルワールよ」
この服だというのだ。
「それはね」
「シャルワールか」
「そう、あの服よ」
「ああ、あれな」
言われてだ、スライマーンも頷いた。
「あの服ならそうだな」
「いいでしょ」
「よし、じゃあな」
「あれにする?」
「そうだな」
スライマーンは真剣な顔で妻の言葉に頷いた。
「それじゃああれにするか」
「我が国の伝統衣装だしね」
「あれで風俗的にどうかはな」
「言われないでしょ」
「ああ、じゃあな」
「あれでいくわね」
「ああ」
妻の言葉にまた頷いた。
「それじゃあな」
「それでね」
「何、そのシャルワールって」
この場では黙って話を聞いていた娘が両親に尋ねた
「一体」
「それはね」
マルヤムは娘に話した、そのシャルワールのことを。
「トルコの民族衣装よ」
「私達の国の」
「そうよ」
その通りだというのだ。
「そうした服もあるの」
「そうだったの」
「シャハラザードは知らなかったのね」
「うん、はじめて聞いたわ」
素直にだ、娘は母に答えた。
「そうした服もあるのね」
「そうなのよ」
「じゃあそのシャルワールをなのね」
「お店の人が着てね」
「お客さんを惹き寄せるのね」
「そうした風にね」
「やってみるか」
父も言う。
「一度な」
「そうね、メイドがまずいのなら」
「シャルワールなら可愛いしな」
「しかも露出も少なくて」
「そうした店にも思われない」
「一番いい感じになるから」
こう言うのだった、夫婦で。
「それじゃあね」
「一度やってみるか」
「お店の娘達にシャルワールを着てもらって」
「営業してみよう」
「そうしてみましょう」
「とりあえずどんな服なの?」
シャハラザードは今度はこう両親に尋ねた。
「デザインは」
「それね」
「一度見せて」
母に言った。
「その服ね」
「ええ、じゃあ明日のお昼に服を買って来るわ」
「早速なのね」
「そうよ、安く売ってるお店知ってるから」
商いをしているだけにこうした店にも詳しいしツテもある、それでマルヤムもそちらに行くとしたのである。
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