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東方叶夢録

作者:くしゅん
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人里

 
前書き
書き忘れてたんですがこの話には紅魔郷から地霊殿までのキャラ+萃香+オリキャラしか出てきません。理由は俺がそれまでしかやってないからです。受験やらで星蓮船から出来なくてそこから新作に手を出すのを控えっぱなしでして…。小傘ちゃんが可愛いから暇があれば星蓮船やりたいんですけどね。そういう訳で俺の書く幻想郷は地霊殿までのものになってますのでご容赦を。 

 
「えーと、これとこれも。あとそれもお願い」
「おっ、えらく羽振りがいいな博麗の。何かあったのかい?」
「ええ、少し臨時収入がね。あ、それも貰おうかしら」
「こちらとしては商売繁盛で願ったり叶ったりなんだが…後ろの坊主、大丈夫か?」
「……いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
現在冬宮叶夢は霊夢と共に人里へ来ていた。
(風呂敷を渡された時点である程度持たされるだろうなとは思ってましたけど……)
そして叶夢は今買った商品を詰めた風呂敷を持たされていた。しかも相当大きめのものだ。
「こんなものね。ありがとおじさん」
「毎度ありー!坊主も頑張れよ!」
「はい……」
両手が塞がっているので手を振ることも出来ず軽く頭を下げる。
「次で最後よ。頑張りなさい」
「いやいや、霊夢さんも少しは手伝ってくれてもいいんじゃないですか、これ」
叶夢がいっぱいまで詰め込んだ風呂敷を両手に持っているのに対し霊夢は手ぶらである。
「私が持ってたら買い物に支障が出るでしょ。全部買い終わったらちゃんと手伝ってあげるから辛抱して」
はぁ、とため息をつく叶夢。少し歩き目的地につく。
「んじゃ買ってくるからそこの茶屋にでも入ってなさい。適当に注文しててもいいわよ」
「はーい…」

言われた店に入り空いている席に座り一息つく。だがこの荷物を持って帰ることを考えると気が重くなった。
「いらっしゃいませー。ご注文は何に致しましょうかー」
「えっと……とりあえず冷たい水を貰えますか」
「あ、冷水ですね。少々お待ちを」
そう言って去っていく店員。叶夢はメニューを見て何にしようかと考える。一般的な和菓子が揃っており悩んでいると店員がコップを持って戻ってきた。
「お待たせしました。ご注文はお決まりですか?」
「んー…みたらし団子2つお願いします」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
迷っていたのでとりあえず無難なものを頼んでおくことにした。それに叶夢はスーパーのみたらし団子しか食べたことがなかったので少し手作りというものに期待していた。
「あ、慧音様。いらっしゃいませー」
「ああ、緑茶を頼むよ」
「かしこまりました。席にかけてお待ちください」
叶夢の次の来店客のようだ。
「……ん?」
ふと見るとその来店客は少し変わっていた。髪の色が青みがかかった白で特徴的な帽子を乗っけており、服は他の人と違い洋服を着ていた。すると視線に気づいたのかこちらを見てきた。
「何かついているかい?」
「ああいえ、そういう訳では…」
「ふむ、見ない顔だね。その格好もそうだし、もしかして外来人かい?」
外来人。外から来た人という意味である。叶夢がそう呼ばれたのは初めてだがそう察する事は出来た。
「はい、先日この世界に来ました。はじめまして、冬宮叶夢といいます」
「ああ、はじめまして。上白沢慧音だ。この人里の守護者と寺子屋の教師をやっている者だ。歓迎するよ、叶夢」
初対面だというのに苗字ではなく名前で呼んでくるのに少しの困惑を覚える叶夢。外の世界では苗字やあだ名で呼称することが多く名前で呼ばれる事はあまりなかったのだ。これも文化の違いというものだろうか。
(そういえば八雲さんや霊夢さん、射命丸さんとかもいきなり名前呼びでしたね…)
文化の違いを実感していると先程の店員がやって来た。
「お待たせしました、みたらし団子になります。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
注文の品が届いたので思考を中断する。
「お待たせしました慧音様、緑茶になります」
「ありがとう」
「ごゆっくりどうぞー」
ほぼ同タイミングで慧音の方にも届いたようだ。
「いただきます」
さっそく食べ始める。そして次の瞬間叶夢は今まで食べてきた団子との違いを思い知らされた。
「おお、凄く美味しい…焦げ目がついてて団子もみたらしも熱いです…」
「それって普通じゃないかい?」
緑茶を啜りながら慧音がツッコミをいれるが外の世界ではちゃんとした団子屋さんでないと熱い団子は食べられないのだ。近所に団子屋など無かった叶夢にとって熱い団子は初体験だった。叶夢は夢中になって食べていた。
「ふう…団子ってこんなに美味しかったんですね」
「外の世界では団子は珍しいのかい?」
「いえ、珍しくはないんですけど。ちゃんとしたのは珍しいと言いますか」
「ちゃんとしてない団子とはいったいどのようなものなんだ…?」
慧音はよくわからないといった顔をしていた。その間に叶夢は2本目に取り掛かっていた。
「しかし君が食べているのを見て私も食べたくなってきたよ。すまない、こっちにもみたらし団子を1本頼む」
「かしこまりましたー!…あっ、いらっしゃいませー!」
「緑茶と三色団子3本お願いねー」
「かしこまりました。少々お待ち下さい!」
霊夢が買い物を終えて戻ってきたようだ。慣れた風に注文し叶夢に近づいてくる。
「お待たせ叶夢……ってあれ、慧音もいたんだ」
「やあ霊夢。買出しかい?随分沢山買ったな」
「まーね。持って帰るのも一苦労だわ」
「あ、霊夢さん。お帰りなさい」
叶夢は既に団子を食べ終え水を飲んでいた。
「霊夢さん、幻想郷の団子って美味しいですね」
「そう?普通だと思うけど…」
普段から茶屋の団子を食べている霊夢からすれば普通のものでしかないのは当然だった。少し待っていると慧音が頼んだものが来た。
「お待たせしました。こちらみたらし団子になります」
「ありがとう……ふむ、確かに美味しいが叶夢が言うほど大層なものでもないと思うのだが」
「幻想郷ってグルメなんですね、和菓子は」
実際は幻想郷がグルメなのではなく叶夢の舌が貧乏なのだがそれに気づくよしもなかった。
間もなく霊夢の頼んだ品もやってきた。
「お待たせしました。三色団子と緑茶になります」
「ありがと。いただきます」
パクパクと団子が口に消えていく。その様子を見て叶夢は巫女さんに団子って映えるなぁと思っていた。
「ごちそーさま。叶夢、あんた何頼んだの?」
「みたらし団子2本ですね」
「おっけ……お代置いとくからー。帰るわよ叶夢」
「ありがとうございました!」
ここで叶夢は重い荷物を持ち帰ることを思い出しまたも気が重くなった。が、気が重くとも帰る以外に選択肢はないので我慢するしかない。
「よいしょっと……それじゃあ上白沢さん。さようなら。また会いましょう」
「ああ、人里に来れば会うことも多々あるだろう。寺子屋にも遊びに来るといい。それと私の事を呼ぶ時は慧音で構わない」
慧音に別れを告げ店から出る。やはり名前呼びを要求されるのでこれからはそうするべきかもしれない。郷に入っては郷に従えということわざに習いこれからはそうしようと叶夢は思った。
「あ、霊夢さん。買い物終わったから手伝ってくださいよ」
「あーはいはい。一つよこしなさい」
左手の荷物を差し出す。
「うわ、結構重いわね…」
霊夢はそこで初めて荷物の重さを知るのだった。
「んー…叶夢、私飛んで帰っていい?」
「はい?」
叶夢はこの時まだ霊夢が飛べることを知らなかったので何を言ってるのかわからなかった。
「荷物重いから飛んで帰るって言ったの。大丈夫、ちゃんと戻ってくるから。道がわかるなら歩いててもいいわよ」
そう霊夢は言ってふわっと飛んで行ってしまった。
「えー…」
取り残された叶夢は飛んでいく霊夢を呆然と眺めていた。下着が見えそうだったが見えなかった。
少しの間立ち尽くしていたが道は何となくわかっていたので進むことにした。

叶夢がしばらく歩いていると突然周りが闇に染まった。
「え?」
夕方を通り越して突然夜になったような感覚。辺りを見回すが暗くてあまり見えない。
「わはー」
「?」
聞こえたのは幼い女の子の声。先程までそんな気配はなかったがどこからか聞こえてくる。
「お腹空いてる時に人間が通りかかるなんて、私はついてるなー」
「えーと、どこにいるんですか?」
呼びかけてみても姿は見えない。
「それじゃ、いただきまーす」
「っ!?」
瞬間叶夢は自身に迫る死の気配に背筋を凍らせる。先日大きな口に食べられそうになった時の感覚が叶夢を襲う。
(八雲さん…妖怪って夜しか出ないんじゃないんですか…)
心の中で最後にここに来た元凶に恨み言を連ねるがもはや伝わることは無い。

「あー重かった」
霊夢は博麗神社について一息ついていた。
「こんな重いのずっと持たせっぱなしって…ちょっと悪いことしたかも」
普段これ程までに大量に買い物することがなかったので加減が効かなかったらしい。少し反省してそろそろ迎えに行ってやらねばと腰を上げる。
「そういえば妖怪に襲われたりしてないわよね…昼間だし大丈夫よね…」
昼間とはいえここに来て間もない人間をお札も持たせず放置したのは不味いかもしれないと思う。
「嫌な予感がしてきたわね…」
霊夢は自身の感がよく当たることを知っているので少し急いで飛んでいった。

「嘘でしょ…」
そして感は当たってしまった。人里に近い森の中、周りの明るさを否定するかのように暗い空間が広がり止まっている。
「何であいつ…!」
それは宵闇の妖怪に向けられた言葉。霊夢からすればさほど脅威でもないが一般人からすれば十分過ぎる脅威だった。しかし彼女はあまり積極的に人を襲わないはずなのだが。
「とりあえず突っ込むしかないわね、生きててよ」
そう言って霊夢は闇の中に入っていった。

「相変わらず暗過ぎるわね…」
苦言を漏らしつつ目当てを探す霊夢。そしてようやく目当ての声が小さく聞こえてきた。
「むぅ、早くたべられてよー」
「嫌です」
2人分の声が聞こえてきて安堵する。そして少女の声がした方に弾幕を放つ。
「ぎゃ!?痛い!」
「ん?」
叶夢の不思議そうな声が上がる。
「ちょっと霊夢、邪魔しないでくれない?」
先程弾幕を放たれた少女が不服そうな声を上げる。同時に暗闇が消えた。彼女からすれば食事の邪魔をされたのだから当然だろう。そんな少女に向き合い霊夢は話し始める。
「あ、霊夢さん」
「いいことルーミア、よく聞きなさい」
声をかけたがスルーされてしまった叶夢。
「何よ」
「こいつを食べたら私があんたを殺すわ」
「物騒過ぎません!?」
霊夢が少女に条件付きの殺人予告をしたため叶夢はツッコミを入れざるを得なかった。
「えー、何でよ?」
「それは勿論お金のため…じゃなかった叶夢が私の同居人だからよ」
しかしツッコミをスルーされた上に新たにツッコミを入れたくなる事を霊夢は言った。
「うーん…私じゃ霊夢に勝てないししょうがないなー。それにそいつ凄く避けるの上手いし」
「聞き分けが良くて助かるわ」
そして交渉は成立したらしい。ツッコミをいれるタイミングを失ったため叶夢はため息をついた。
「ねぇ」
「はい?」
「貴方、名前は?」
少女が近づいてきてそう言ってきた。先程まで自分を追いかけていた正体が彼女だと言われてもあまり信じられない。
「冬宮叶夢です。貴女は?」
「私はルーミア。…じー」
名乗りを終えるとルーミアは叶夢を様々な角度から眺め始めた。
「えっと、何か?」
「うん、もう食べないように覚えておこうと思って」
「ルーミアさんも妖怪なんですか?」
「そうよ、宵闇の妖怪って呼ばれてるわ」
宵闇の妖怪と言われても叶夢はあまりピンと来なかった。確かに真っ暗だったが。
「うん!多分覚えたー」
「そ、じゃあ帰るわよ叶夢」
「はーい…てあれ、荷物どこだっけ…」
追われていた時逃げるために置いたのだがどこに置いたのだろうか。
「あ」
「どうしたの?早くしなさい」
「えーと、霊夢さん。ごめんなさい」
「は?何を謝って……」
霊夢が叶夢の方に振り返るとそこには見るも無惨に潰れた風呂敷に入っていたものが散らばっていた。
「……お昼ご飯は抜きね」
「はい…」
ルーミアに追いかけられていたので仕方ないと言えば仕方ないのだが反論したら晩も抜きにされる可能性があったので素直に受け入れた。
「じゃーまたねー」
「あ、ルーミアさん。さよならー」
「いつもこの辺飛んでるから。今度は見かけても食べないし暇だったら遊んでねー」
「はーい、喜んでー」
そう言ってルーミアは去っていった。「お腹すいたなー」と言いながら消えていったのでまだ食べられそうなものをあげればよかっただろうかと思う。
「あんた、食べられそうになったってのに意外と肝が座ってるのね」
「ええ、まあ。もう食べないって言ってましたし」

帰り道。無事なものを抱え並んで歩いていると思い出したように霊夢が問うてきた。
「そういえばさ、ルーミアが避けるの上手いって言ってたけどあんたあの暗い中避けてたの?」
「うーん…避けてたんですけど、自分の意思じゃないって言うか。勝手に体が動いていたんですよ」

《回想》
(夜しか出ないんじゃないんですか…)
そう思っていると急に体が横にスライドしたのだ。
「うわっ」
自分の意思ではなく勝手に動いた。そして元いた場所を何者かが高速で通り過ぎたのが風でわかる。
「あれー?」
声の主は不思議そうだった。食べたと思ったら獲物が動いたからだろう。
「この辺だとおもったんだけどなー」
そう言って声は辺りを回っている。
(もしかして、向こうも見えてない?)
そう思っていると今度は急にしゃがんだ。次の瞬間頭上を通り過ぎる声の主。
「なんだこれ…」

《回想終了》
「こういう感じでして」
「ふーん…」
霊夢は不思議そうな顔をしていた。
「てい」
そして何を思ったのか突然こちらに拳を突き出した。
「わっ」
しかし間一髪で叶夢はそれをかわす。しかしそれは叶夢が避けようとして避けたものではなかった。
「今のも勝手に?」
「はい」
「そう…」
何かを考えるような顔をしていたがそれは少しの間ですぐに戻った。
「ま、危機回避能力に長けてるってのはいいことよ。それが自分の意思でなくても」
「まあ、そうですねぇ。幻想郷では特に」
自分の意思ではないというのは些か不安だが現に今回これのお陰で助かったのだ。感謝すべきだろう。

「帰ったら掃除よ」
「はーい…」 
 

 
後書き
遅くなりました。ルーミアだったり慧音さんだったりの口調がイマイチ安定せず自分の文章力の無さをおもいしらされますねー(白目) 
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