Three Roses
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第十五話 衰える身体その十二
「お会いしたかったのですが」
「そうですね、だからですね」
「私も常にお話したかったのですが」
「それは出来ませんでしたね」
「そのことも残念に思っています」
無念の顔での言葉だった。
「実に」
「そうですか、ですが」
「はい、これでですね」
「マリー様はマイラ様とお話が出来ます」
「そうなりましたね」
「嬉しいことです」
ここでようたく微笑んだマリーだった。
だがその彼女にだ、今度はロドネイ公が後ろから言ってきた。
「マリー様、それでなのですが」
「はい」
「お会いすることはいいですが」
「それでもですね」
「マイラ様はそうした方ではないですが」
「暗殺ですね」
「それにはお気をつけ下さい」
くれぐれもというのだ。
「常に」
「王国の動きはいつも見ていましょう」
外交、諜報を得意とするデューダー卿も言う。
「彼等がマイラ様に近付くと」
「厄介ですね」
「そうです、ですから」
「既にそうなっていてもおかしくない、いえ」
「マイラ様はたぶらかされる方ではないです」
そうした暗愚な人物ではないのだ、人を見抜く目も備えているのだ。ただその心を閉ざしているだけなのだ。
「しかし周りに潜んでいてです」
「これを機にですね」
「毒を盛ることも考えられます」
「この王宮にも王国の者は潜んでいるでしょう」
グラッドストン大司教も言ってきた。
「かなり追い出しましたが」
「疑わしい者は」
「しかし王国は謀略を得手としています」
「それで、ですね」
「まだ王宮に息を潜めている者がいるかも知れません」
大司教もこう言うのだった。
「ですから」
「姉様とお会いする時はですね」
「お会いする時に何かを飲まれたり召し上がられるなら」
「それを機に」
「マリー様、マイラ様のお命を狙ってくるかも知れません」
大司教もこう考えているのだった、それで己の主に言うのだ。
「ですから」
「刺客には注意してですね」
「現にマリー様の周りはいつも我々が固めています」
またキャスリング卿が言ってきた。
「毒見役も置き料理人も選んでいますね」
「厳重に、ですね」
「しています、やはりです」
「王国には気をつけないとなりませんか」
「あの国には、あとです」
「他にも気をつけねばなりませんか」
「太子にもです」
キャスリング卿はマイラの夫である彼女の名前も出した。
「あの方についても」
「ロートリンゲン家ですね」
「あの家と婚姻を結んだ国では王位継承者が次々と死にます」
「そのことですが」
デューダー卿もマリーに再び言う。
「どうもです」
「毒を、ですか」
「半島からカンタレラを貰い受けたとも言われています」
「教皇庁で使われていた」
「はい、教皇庁及びあちらの半島では昔から多くの陰謀が行われ」
「毒殺は日常茶飯事ですね」
「その中でゴロンゾ家が使っていたという毒薬ですが」
そのカンタレラをというのだ。
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