聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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218部分:第二十九話 アフロディーテの闘志その五
第二十九話 アフロディーテの闘志その五
「アルデバランのフォローの為にな」
「はい」
こうしてアイオロスは一礼してからそのうえでその場を後にした。そうしてシオンは一人になるがここでまた言うのだった。
「アフロディーテ。アルバフィカの時と同じならばだ」
またここで彼が知っている名前を出した。
「その熱さ。見せてもらうぞ」
こう言いアフロディーテの戦いについて思いを馳せるのだった。そこにあるものを見ているようであった。
アフロディーテは舟で武漢に向かっていた。その時に周りの聖闘士達が相変わらず適当に舟の旅を楽しみながら過ごしていた。その中でであった。
「何か退屈ですけれどね」
「それでも狂闘士の奴等いるんですよね」
「やっぱり」
青銅の者達は甲板で中国将棋をしていた。それをしながらアフロディーテに対して尋ねていた。
「そうですよね」
「武漢に行ったら」
「今更何を言っている」
ミスティはアルゴルとポーカーをしていたがその中で彼等に対して言うのだった。
「二日前に雑兵達に囲まれたな」
「忘れたわけではあるまい」
アルゴルも彼等に対して言う。
「あの時のことは」
「忘れたのか?」
「いえ、勿論覚えていますよ」
「それはもう」
忘れている筈がなかった。それは。
「ですけれどね。何かこんな平和なことが続けば」
「いい加減だれてきません?」
「そうそう。平和に越したことはないですけれど」
「今は何かね」
こんなことを言いながら将棋を続ける。本当にかなり緊張が緩んでいた。
「舟でゆったりしてますから」
「そうそう、まあたまにはこんなのもいいですけれど」
「そうやってたるんでいるとどうなっても知らないぞ」
「急に狂闘士達が来るぞ」
また言う白銀の者達だった。その穏やかな中でアフロディーテがふと起き上がった。
「あっ、アフロディーテ様」
「どうされました?」
「来ます」
起き上がった彼の声は鋭いものだった。
「またあの者達が」
「っていいますとやっぱり」
「連中ですか」
「その通りです。来ます」
その言葉と共にであった。またあの小舟達が来た。
「げっ、また来やがった!」
「何時の間に!?」
「ふふふ、アテナの聖闘士達よ覚悟はいいな」
「先に倒された仲間達の仇取らせてもらうぞ」
「ふざけるな、そうそう上手くいくか!」
「俺達が御前等雑兵に負けるか!」
既に聖闘士達は聖衣を装備していた。何時でも闘える状態になっている。
「何時でもな。やらせるか!」
「今度は俺達が御前等を倒す!」
そしてこうも言うのだった。
「覚悟しやがれ!」
「このシオンの拳見せてやる!」
「いえ、案ずることはありません」
しかしここでまたアフロディーテの声がした。
「私が行きましょう。また」
「えっ、アフロディーテ様」
「今度ばかりは我々が」
彼等は黄金聖衣を着たアフロディーテを見て言う。流石に今度ばかりは彼等も闘わなくては申し訳がないと思ったのである。
「ですからお気遣いなく」
「どうか」
「いえ、そういうわけにはいきません」
しかし彼はこう言って彼等の言葉を退けるのだった。右手に薔薇を持ち。
「ここは是非闘わせてもらいます」
「是非ですか」
「はい、是非共」
あくまでこう言うのだった。
「私にやらせてもらいます」
「そうですか。それでは」
「そこまで仰るのなら」
彼等も黄金聖闘士がそこまで言うのなら従うしかなかった。黄金聖闘士の言葉は聖域においては教皇のそれに次ぐものであるからだ。
「我等はこれで」
「アフロディーテ様、どうぞ」
「はい。それでは」
アフロディーテは悠然と立っていた。その彼を囲むようにしてインプ達は剣呑な笑みを浮かべてきていた。
「ピスケスか。先のことは知っているからな」
「そうだ。仲間達の仇」
その剣呑な顔で言ってきた。
「ここで取らせてもらう」
「覚悟はいいな」
「覚悟ですか」
アフロディーテは彼等の言葉を聞きながら静かにその言葉を出してきた。
「確かに覚悟はできています」
「とはいっても死ぬ覚悟ではないな」
「違うか?」
「如何にも」
それではない、最早インプ達にもわかっていることだった。
「それは有り得ません。私にある覚悟とは」
「何だ?それは」
「言ったところで貴様を倒すことには変わりはないがな」
「戦う覚悟」
彼の言う覚悟とはそれであったのだ。
「それはできています」
「やはりな。ならばだ」
「その覚悟をそのままにして死ね」
三叉の槍をそれぞれ手にしての言葉だった。
「何度も言うが仲間の仇」
「ここで取らせてもらおう」
またアフロディーテとインプ達の闘いがはじまろうとしていた。そうしてその中で彼等は舟の上でそれぞれ対峙し激しい小宇宙を見せていた。
第二十九話 完
2009・5・6
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