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イナイレ外伝 イケメンブラザーズ

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1話

どどどどと、階段を勢いよく駆け下り、靴を履き替え校庭に。そしてたどり着いた先には古びた建物。物置のようにも見えるが…。右側に引っかけられた看板に目をやる。そこに書かれた文字は…。

―――イケメンクラブ。

「おーーい!!みんな生きてるかーー!」

馬鹿でかい声を上げながら戸を開ける。彼の名は円堂守。絵文字顔で寸胴。イケメンのかけらもない彼はこの部のキャプテンだ。

だが差し込む光の先には暗闇の部室。さけずんだ表情の部員が3人。顔は闇に隠れておりイケメンさが伝わってこなかった。

「ふん・・・どうせ死んだようなもんだろ。イケメンクラブなんて」

口を開いたのは記念すべきスカウト一人目と言われた半田真一。色々な部活に取り組んでみて最終的にたどり着いたのがここ。円堂に誘われ、一日くらいなら…と入部した。しかし今は“一人やめれば廃部”という状況で、新しく誰かが入部しなければ抜けられない状態になっている。

「活動しようにもどう活動すればいいのかわかんねえし。もう廃部を待つだけだな」

呟いたのは風丸一郎太。しつこくスカウトされ、助っ人として入部。とは言っても幽霊部員のため、部活に顔を出さなくていいのだが。しかも彼は陸上部。大会も近く、退部を考えている最中だった。

「馬鹿だった…こんな部に入った俺が馬鹿だった・・・」

ぶつぶつと呪っているのは染岡竜吾。体育会系の彼はサッカー部を希望していたのだがないとわかったため、かじったこともない野球部に入ろうか、それともいっそ帰宅部かと迷っているときイケメンクラブにスカウトされたため入部。その後、何の活動もせず学校が始まるまで半田とくっちゃべる毎日。だがしかし、廃部の危険が迫り焦り始める。部活をやめると内申が落ちる。それはだめ。

「おいおいみんなー顔まで死んでどうすんだよー。イケメンが台無しだぞー」

「お前が言うな」

半田に指摘され、深く傷つく円堂。今はキャプテンも暗闇の奥深く、だが立ち直りが早い。

「それよりキタぞっ!」

「何が?」

風丸が訪ねる。すると円堂がふっふっふと不気味な笑みを浮かべる。きもい。

「見よ!!」

ばっと取り出したのは散らし。それにはでかでかと“イケメンフロンティア”と書かれている。

「イケメンフロンティア?」

「おう!!招待状だってよ!!応募しようぜーーー!」

「円堂。よく見ろよ…」

チラシの下にはよく見ると大会人数の規定は5人以上と書かれている。それにきづいた円堂は落胆した。

「そっ・・・そんなばかなーーーーー!!!」

「しかも決定事項昨日だぞ?」

「んなばかなーーーーーーーーー!」

ますますどん底へと突き落とされる円堂。もう立ち上がれない。

「諦めるんだな」

と風丸が冷たく放つ。すると円堂がぐわあっと立ち上がった。

「いや!まだ手はある!!」

「そりゃついているからな、2本」

半田がギャグる。HAHAHAと笑う染岡たちに声を上げた。

「話聞けや!」

「はいはいわかった」

「くくくく実は…」

ともったいぶった上かっこつける。部員ら3人がどう見てもいらいらしていた。

「帝国学園!!!理事長が帝国学園と戦えってよーー!」

と叫んだ瞬間。えええええええええええええ!と声が上がる。

「ざけんなよーーーお前!!」

「超強いじゃん、あそこ!」

「やるだけ恥さらしだこのやろーー!」

円堂のせいじゃないのにブーイングが飛ぶ。

「なんだよもーーー!いいもん!一人でやるもん!」

と吐き捨て走り出す。何処へ行くのやら?



河川敷。鏡を手にオーラをためて“はあああ”とうなっている。

「いでよ!!ゴッドスマーーーーーイル!!!!」

「なにやってんの?」

後ろからマネージャーの木野秋の声が。彼女はマネージャーでありながら部活をサボり、気まぐれで部活に顔を出すときは遅刻者を取り締まっている。彼女曰く、“サボりと遅刻は違うから”らしい。

「ふふふ、ゴッドスマイルの特訓さ!」

「ああ、いつもの・・・」

円堂が服に隠していたノートを取り出した。

「じゃーん!じいちゃんの特訓ノート!」

「おー・・・・・・」

興味なさそうに声を漏らす。そんな秋にかまわず、ノートをぱらぱらとめくる。

「かつてじいちゃんが使っていたノートに載っている“ゴッドスマイル”、どんな敵もいちころなんだって!これなら帝国にも勝てるかもな!」

秋がひょいとノートを取り上げる。そして思った。

(読めねえ…)

「だからこうして練習してるのさ、お前マネージャーなら手伝えよ!」

「いやよ、つかマネージャーに何手伝わせる気よ。たかがスマイルなんて。自力で手に入るもんじゃないの?」

「む・・・」

確かに、と思ってしまい何も言い返せなくなった。すると、不良の声が。

「ようようねーちゃん」

なんと不良に女性が絡まれていた。アカン。

「あらま、不良」

どうでも良さそうに呟く秋を横目に飛び出す円堂。絡んでいた不良の目の前に立ちはかだった。

「やめないかね、君たち!」

紳士的な言い口で女性をかばう。

「なんだてめえーは?」

「どけっこの不細工!!」

と顔面に蹴りを入れられ、そのままどしゃあっと倒れ込んだ。ああ、無様だ。

(不、不細工…)

イケメンクラブのキャプテンがこのようなことを言われても良いものだろうか。傷つきようは半端無かった。秋が円堂を回収しようと立ち上がったとき、とてつもなくイケメンなオーラを放つ少年が横切った。

(え?)

少年はそのままジャンプし、不良の顔面に跳び蹴りした。そのまま不良が倒れ込む。そして振り返りざまに見えた少年の目は夕日の色が映り込んでいた。

(あれは!!)

円堂が立ち上がる。蹴飛ばされた連れの不良は、びびって逃げ出した。

「あ、あのー」

呼びかけた女性に、さわやかなほほえみをプレゼントした。すると女性は目がハートになり叫んだ。

「きゃああ♪」

痺れるー♪と言わんばかりの声量。少年はやれやれといった表情でその場を立ち去ろうとする。

「待てよ!」

円堂が叫ぶ。少年は厳つい顔で振り返った。

「・・・・」

「・・・・」

沈黙は10秒ほど続き、少年が早く用件言えと言いたそうな顔をしたのできっぱりと言った。

「イケメンクラブ、入りませんか!?」

「興味ない」

と言ってスタスタと立ち去る。秋はそりゃそうだわとあきれた視線を送る。ぬぐぐぐと歯を食いしばって、叫んだ。

「見てろよーーーー!諦めないからなーーーー!絶対スカウトするからなーー!イブニングアーーイ!」

秋は思った。

(…イブニング愛?)

つづく 
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