平成ライダーの世界
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十七章
彼は嶋を憎んでいました。それと共に愛情も抱いていました。嶋を人間の代表とするならば彼はファンガイアの代表です。ファンガイアとは何かということを考えますとこの両者の関係は非常に重要でした。
嶋をファンガイアに改造し殺したと思われましたが実は殺しておらず元の人間に戻しています。ここで重要なのは嶋は姿だけがファンガイアになったことと登が結果として嶋を殺さなかったことです。彼は確かにファンガイアですが心は人間でした。その意味において彼は母親である先代クイーンと同じです。完全にその心までがファンガイアになったと信じ込んでいる、つまりスサノオの術中に陥っている先代キングやクイーンとは決定的に違うのです。
ただ彼はファンガイアという姿。劇中ではそれは見せませんでしたがネットにおいてはそのライダーの姿のモチーフや感情を爆発させた時に出て来る蛇の攻撃から見て蛇の姿のファンガイアと考えられる意見がありましたがそのファンガイアであるという意識が彼の呪縛となっていました。そしてその王ということがです。
このことから解放する為に紅は自らファンガイアの王となったり最後に拳を交えています。その結果先代キングを弟である紅と共に倒し、これまでのことからファンガイアという概念は姿形だけのことであり心がどうかということが重要であることに気付きます。そうして人間とファンガイアの共存、即ちファンガイアとは所詮は人間の姿形が変身できてそれが多少変わっているだけだということに気付いたのでした。彼はそのことにより生きることができました。
次には三人のアームドモンスター達について述べさせて頂きたいと思います。
まず三人の中心人物と言っていい次狼です。彼は過去篇においてかなり重要な位置にいました。
種族の最後の生き残りでありクールな性格ですがその中に攻撃的なものも持っていました。
最初は完全にモンスターであり人間を襲ってもいました。ですが音也と出会ったことが彼の運命を変えていくことになっていきます。
音也と何度も会い衝突を繰り返します。その中には戦いもありました。人間と怪人という仮面ライダーの世界の対立軸がです。両者の中にもありました。
しかしその対立、衝突の中で音也という人間がわかりです。最後には彼の頼みを聞き入れるのでした。それはまさに友人としてのものです。そのうえで彼は紅の後見人と言っていい立場になりました。
そこに至るまでの変化がです。過去篇では細かく書かれていました。それにより彼の心境の変化、人間となっていく過程がよくわかりました。
やはり彼も人間なのです。その心が人間だからです。人間の姿形をしていてもその心が人間でなければそれは最早人間ではないのですから。彼が人間になっていく描写はキバの隠し味の一つではないかとさえ思います。
次にラモンです。彼は半漁人です。その種族バッシャー族でありますがこの一族もまた滅びようとしていています。しかし彼は自分の種族の運命については半ば諦めている感じです。その考えに基いて人間社会の中に生きています。
彼は何処か醒めていて次狼とも距離を置いています。しかし冷たい性格かというとそうではありません。次狼や力、そして紅の危機には力を貸していますし何よりも最後には音也の頼みを聞いて紅を護る存在となっています。こうしたことを見ていると彼もまた人間の心を持っています。井上敏樹作品、ひいては平成ライダーによくある一歩距離を置いた位置にいるキャラクターですが決して非道でもなく人間の心がない存在でもありません。
アームドモンスターの最後に来るのは力ですがフランケン族らしく非常に大柄で屈強な外見でした。演じておられた滝川英治さんの容姿が実に見事だったこともあり燕尾服も似合うとても格好いいキャラクターだったのを覚えています。
その彼は言葉が片言で一見すると何を考えているのかわかりにくくしかも妙に狂暴ではないかと思われる描写もありました。他の二人とはまた違った意味で異質な存在でした。
三人の中では最も人間とはかけ離れてしまっている部分があるのではないのか、放送中にはそんなことも思いました。次狼は自分をファンガイアと認識していましたが実は人間でした。それは力もそうではないだろうかと思ったのですが実際にそうでした。
音也との交流において次第にそうした人間的な部分が出て来てファンガイアの能力を自ら封じていってです。彼もまた人間であることがわかりました。結論としましてアームドモンスター達は姿形が違うだけの人間でした。しかも人間としての姿を取れるのです。それでは彼等は完全に人間です。スサノオの罠、姿形を見てそれで人間でないと判断できるのかどうか、彼等もそのことについて自分達で答えを出せました。
アームドモンスターの話はこれで終わらせてもらいます。続いてはヒロイン達のお話に移らせて頂きたいと思います。
キバはヒロインが非常に充実している作品だったと思います。ヒロインと呼べる人が五人もいてしかもそのどのキャラクターも非常に個性的で魅力的だったのです。ヒロインの面から見てもキバは見応えのある作品でした。
その中で最初に書かせてもらいたいのは野村静香です。彼女は紅の保護者的ポジションにいました。ただ年齢的なことも考えますと妹的な存在でもあったでしょう。
キバ、とりわけ前半の彼女の存在は非常に大きく紅は彼女がいるお陰で何とか人間世界とつながっていたとさえ言える程でした。極めて内向的で半ば世捨て人の如き有様だった彼の傍にいつもいて時には優しく時には厳しく接している彼女はまさに紅の妹であり保護者でした。思えば静香は難しい位置にいますし存在感を出さなければならない役でもあります。しかし演じておられた小池里奈さんのかなりの可愛らしさと年齢を感じさせない見事な演技、それこそシリアスからギャグまでこなせるそれがこの役を生かしていました。
ページ上へ戻る