聖闘士星矢　黄金の若き戦士達

第二十七話　紅の毒その四

「ギリシアの蟹よりもな」
「こう言ったら何だが蟹限定だったら辰巳のおっさんの店よりもな」
「ああ、全くだ」
「ほう」
　アフロディーテは今度は彼等の言葉に対して目を向けるのだった。
「貴方達も辰巳さんのお店にですか」
「はい、まあ」
「安いしサービスもいいですし。それで」
「時々は」
　外見に似合わず意外と心配りができる辰巳なのであった。
「行っています」
「いや、あそこの和食はいいものですね」
「全くです」
「実は私達もです」
　アフロディーテは相変わらず蟹を食べながら彼等に応えて述べる。
「あの店には時々行きます」
「えっ、そうなのですか！？」
「あの蛸親父の店に」
「おい」
　今の青銅の者達の言葉はすぐにアルゴルに注意された。
「幾ら何でもその言い方はないぞ」
「あっ、すいません」
「ついつい。普段仲間内で言っていますから」
「全く。あの親父さんもボロクソだな」
「確かに」
　ミスティも蟹を食べながら話に加わっていく。
「蛸だの何だのと」
「いい店だがな」
「あの店でまた和食を食べようと思っています」
　アフロディーテはまた言うのだった。
「この戦いが終わりましたら」
「中国の戦いがですね」
「その通りです。それが終わってからです」
　また述べるのだった。
「また行きます」
「何か黄金の方が行かれるとなると」
「そうだよな。行きにくいな」
「また日をあらためるか」
　青銅の者達はアフロディーテがその店に通っていると知ってまた言い合うのだった。
「また別の日にな」
「そうしよう」
「それでです」
　アフロディーテはここで蟹を食べ終えるのだった。
「次ですが」
「ああ、蟹も終わりですね」
「メインディッシュも」
　丁度いいタイミングだった。皆蟹を食べ終えてしまった。ついでに言えば酒も全部飲んでしまった。今残っているのは茶だけだった。白と青の如何にも中華といった趣のその陶器の湯飲みに入った茶を飲みながらここで彼等は手もちぶたさになってしまったのだった。
「なら後は」
「デザートだが」
「確か果物を頼んでいたよな」
「はい、それに杏仁豆腐もです」
　またここでアフロディーテが話してきた。
「もうすぐ来ます」
「杏仁豆腐はわかるが」
「問題は果物だな」
「何が出るかな」
　ここでまた皆顔を見合わせた。
「中国の果物といえば」
「ライチか？」
「そうだよな」
　彼等の脳裏に真っ先に思い浮かんだのはやはりこれであった。
「それが出て来るのかな、やっぱり」
「そうじゃないのか？」
「どうやらそのようです」
　ここでまたアフロディーテが述べた。するとここで赤いチャイナドレスを着た艶やかな美女がやって来て実際にそのライチを置いてきたのだった。杏仁豆腐もだ。