ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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番外編ExtraEditionパート2
直葉side
シリカちゃんと竜兄ちゃんが出会った時の話を聞いて、色々と恥ずかしいエピソードまで語られた竜兄ちゃんは羞恥心によって完全にダウンしてしまったため、プールサイドのベンチの日陰に隠れて顔のほとぼりを冷ましてる。
リズさんはSAOでは和人お兄ちゃんと先に知り合って、後に二刀流を発動する際に使う二本目の剣を鍛えたらしい。でもシリカちゃんと竜兄ちゃんの時と比べて全くドラマチックじゃなかったそうだった。なんでも売り物の剣をへし折ったり、一緒にドラゴンの巣穴に落っこちたり、ドラゴンのーーー女の子の口から言えないような物体を投げつけられたり。妹のあたしとしては身内がすごい迷惑をかけたと思ってしまう。ちなみに竜兄ちゃんの時もほとんど同じだったらしい。当時は知らなかったとはいえ、双子だからってやる事成す事シンクロしすぎだよーーー
「竜兄。そろそろお昼にしよ?」
「あい・・・」
未来ちゃんの声掛けで無気力な様子で返事をする竜兄ちゃん。プールサイドの日陰にレジャーシートを敷いて、プールで冷えた身体を温めるために上着を着たりタオルを巻いたりしてみんなで座る。
「色々作ってきたからどんどん食べてね」
「あたしもお弁当作ってきたから、よかったら食べてください」
「あたしたちも持ってきたよ〜」
お昼ごはんに作ってきたお弁当をレジャーシートに置く。あたしとアスナさんと神鳴兄妹の作ったお弁当をみんなで囲んで手を合わせて『いただきます』と挨拶をする。
「あっ、これ超美味しい!ミラって料理上手なのね〜!」
「あ~、それ作ったの竜兄。というか全部」
『え!?』
「ライリュウさん、お料理するんですか?」
「まあ母さんがいない時はいつもオレが作ってるけど・・・そんなに驚くことか?」
意外ーーー竜兄ちゃんすごい料理上手なんだ。確かにこのチャーハンとかすごいお米がパラパラしてる。一瞬だけ冷凍食品のチャーハンかと思っちゃった。
そう思っていたらアスナさんのスマホから着信音か鳴りだした。
「誰から?」
「キリトくん。先に食べててって」
「じゃああたしがキリトの分まで食べてあげよう」
「太るぞグフッ!!」
「竜兄、デリカシーのないこと言わないでよね」
お兄ちゃんがまだ時間がかかるらしくて、先にお昼食べててくれってメールが来たみたい。もう実際食べてるけど。それよりも未来ちゃんに肘打ちされた竜兄ちゃんは大丈夫なのかな?バリバリ口の中に噛んでた物入ってたけど。でも未来ちゃんの肘が少し痛そうにしてるところを見ると、そこまで大袈裟なダメージはなかったみたいだね。
それにしてもアスナさんのお弁当可愛いなーーーお肉や野菜が入ったバケットサンドに魚のフライやウィンナー、キレイに茹でた海老なんかもある。それに比べてあたしのお弁当はちょっと茶色っぽい体育会系のお弁当って感じがすごい。おにぎりに生姜焼きにウィンナー、ポテトサラダに卵焼き、黒豆やミニトマト。やっぱり和人お兄ちゃんもこういうお弁当作れる女の子っぽい人がいいのかなーーー
「どうした?スグ。オレ血液不足だからって食いすぎたか?」
「ううん!そんなことないよ!」
あたしがボーッとしてたのを竜兄ちゃんが心配して声をかけてくれた。そういえばあたしが作ったお弁当の減りが早いと思ったら竜兄ちゃんだったんだ。何か上手い言い訳はーーーそうだ。
「その・・・アスナさんとお兄ちゃんって、どんな風に知り合ったのかなって」
「えっ」
『あたしも聞きたい(です)!!』
「でも・・・」
「いんじゃね?話しても。何も言ってないのアスナさんだけだぜ?今度はアスナさんが恥かく番だ」
実はアスナさんと知り合った時のーーー言ってしまえば馴れ初め話に前から興味があった。みんなも興味津々だし、このまま押せば聞けるかも。
明日奈side
「・・・もう、仕方ないなぁ・・・」
『やったー!』
キリトくんとの馴れ初めかーーー恥ずかしいけど仕方ないか。
「オホン。えー、わたしがキリトくんと初めて会ったのは第1層攻略会議が開かれたトールバーナという街なの。ライリュウくんともそこで出会ったのよね」
「ああ、そうだったな。あれから二年半か・・・今思えば懐かしいぜ」
あの頃のわたしはゲームクリアの事しか考えてなかったの。わたしに良い肩書を求めてた母さんに見限られないように、早く元通りになるために一刻も早くゲームをクリアしようと思ってた。でもあの夜キリトくんと一緒に食べた黒パンが救いになったーーー
『本気で美味しいと思ってる?』
『もちろん。この街に来てから一日一回は食べてるよ。まあ、ちょっと工夫はするけど・・・』
『工夫?』
そう言ってキリトくんがくれた《逆襲の雌牛》というクエストの報酬のクリーム。黒パンにクリームを塗って、恐る恐る一口食べてみてーーー口の中に広がった甘みが食べ物を美味しいと感じる事を思い出させてくれた。そしてキリトくんがわたしにアインクラッドにも生きる喜びがある事を教えてくれた。
そしてしばらくして、わたしが《血盟騎士団》の副団長になってから一年と少しした後、圏内事件が起きた日の昼頃。のんびり昼寝をしていたキリトくんを見つけた時ーーー
『・・・なんだ、あんたか』
『攻略組のみんなが必死に迷宮区に挑んでいるのに、何であんたはのんびり昼寝なんかしてるのよ。いくらソロだからってもっと真面目に・・・!』
『今日はアインクラッドで最高の季節の、さらに最高の気象設定だ』
『は?』
『こんな日に迷宮に潜っちゃもったいない』
『あなたね、分かってるの?こうして一日無駄にした分、現実でのわたしたちの時間が失われて行くのよ?』
『でも今、俺たちが生きているのはこのアインクラッドだ』
そう言われたわたしはそれまでずっと張り詰めてた物を少しだけ緩んでみたの。わたしも寝転がって気持ちいい風に当たっていたら、温かい日差しも影響して夕方まで熟睡してたわ。それで目が覚めた時にキリトくんにご飯を一回奢るという事で睡眠PKされないように見張っててくれたお礼をしたの。そこまで素直にはなれなかったけどねーーー
「今の話を聞いた感じだと・・・」
「先に好きになったのはアスナさんの方みたいだね・・・というか何で竜兄には何も思わなかったんだろ。接点は竜兄の方があったよね?」
「うっせーな」
「いや、そういう訳じゃ・・・」
「隠すな隠すな〜♪いつだったか剣を研ぎに来た時に『まだ一方通行だけど♡』とか言ってたくせに♪」
♡なんて付けてないような気がするけどーーー
「そういやあれからどうやってキリトとくっついたんだ?やっぱりラグー・ラビットの件かぁ・・・?あぁん?」
「ライリュウくん、まだラグー・ラビットの時のこと根に持ってたんだ・・・」
「当たり前だ。食い物の恨みは恐いんだからな・・・今からあいつ殴りに行こうかな」
『ヤメテヤメテ』
ライリュウくんってキリトくんと比べると普段から物騒だなーーーというか好戦的すぎるよ。
まあキリトくんのパーティを組んだ切っ掛けは確かにラグー・ラビットかな。食材に免じてわたしの部屋を提供して、キッチンナイフを突きつけて半ば脅してパーティ申請を出して承認ボタンを押させたりーーー
「思った以上の猛アタックね・・・」
「やっぱりそのくらい積極的じゃないとダメなんでしょうか・・・」
「アスナさん大胆・・・//////」
「いや、大胆すぎてドン引きだぜ・・・つーか女ってみんなそうなの?アスナさんが特殊なの?」
「し、仕方ないじゃない・・・だって、好きだったんだもん・・・//////」
『ごちそうさまでーす』
自分で言っておいてすごい恥ずかしいーーーこの世のカップルや夫婦ってみんなこんな話をしてるの?勇者すぎない?
「で、あんたたちどこまでいったの?ゲームの中の事とはいえ、結婚までしたんだから当然よねぇ~?」
「おいおい野郎がいんたぞ。馴れ初めまでならともかく、そういう生々しい話まで持ってくなよ。レズベット壌」
「何よその特殊性癖持ってる風俗壌みたいな呼び方!!さっき未来の胸揉みしだいてたから!?」
リズの呼び方はともかく、わたしは別に何もしてないよ。わたしとキリトくんが結婚したのはーーーそう。キリトくんが団長に敗れて《血盟騎士団》に加入して、訓練の途中でキリトくんを殺そうとしたクラディールをライリュウくんが吹き飛ばした後のことだった。
『ごめんね・・・わたしの、わたしのせいだね・・・』
『アスナ・・・』
『ごめんね・・・』
あの時わたしは、わたしが原因でキリトくんが殺されそうになったんだと思ってた。それからわたしは泣いて、ただ泣いて謝ることしか出来なかったーーー
『わたし・・・もう、キリトくんには・・・会わない・・・』
わたしが彼と一緒にいたら、また彼の命を危険に晒すことになる。そうなるなら今後一切キリトくんには会わないーーーそうすすり泣きながら言ったわたしをキリトくんは黙らせた。そうーーーわたしの唇に蓋をするという方法で。
『俺の命はキミのモノだ、アスナ。だからキミのために使う。最後の一瞬まで一緒にいよう・・・!!』
『わたしも、わたしも絶対にキミを守る・・・これから永遠に守り続けるから。だから・・・』
『キミは、何があろうと帰してみせる。あの世界に・・・』
その夜、わたしはキリトくんを当時住んでいたセルムブルクの家に連れていって、一夜を共にしたーーーそう、あの夜からわたしたちはーーー
『ちょっとだけ、夢見てた。元の世界の夢・・・おかしいの。夢の中でアインクラッドの事が、キリトくんと会ったことが夢だったらどうしようって思って、とっても怖かった。よかった、夢じゃなくて』
『変な奴だな。帰りたくないのか?』
『帰りたいよ?帰りたいけど、ここで過ごした時間がなくなるのは嫌。わたしにとっては大事な二年間なの。今ならそう思える・・・ねぇキリトくん。ちょっとだけ、前線から離れたらダメかな?』
『え?』
『なんだか恐い。すぐ戦場に出たら、また良くない事が起こりそうで・・・ちょっと疲れちゃったのかもしれない』
『・・・そうだな。俺も疲れたよ・・・22層の南西エリアに、森と湖に囲まれた小さい村があるんだ。二人でそこに引っ越そう。それで・・・』
『それで・・・?』
この時キリトくんに言われた事が、この瞬間が今までの人生で一番ーーー
『け・・・結婚しよう』
『・・・はい!』
一番嬉しくて、決して忘れる事が出来ない。忘れられないーーー
未来side
ここまでの長時間、アスナさんが顔を赤くしてフリーズしてます。多分あのクラディールの事件の夜、キリトくんとひとつ屋根の下でプロポーズされたんだ。あの時あたしも竜兄もすごいブルーになってたのに、幸せそうでよかったねーーー
「もしも~し!アスナさ~ん!」
「ひゃっ!!なっ、何もしてないからね!?//////」
してるでしょ。絶対何かしてるでしょ、この反応。
「いいな~結婚。しかもユイちゃんみたいな可愛い子供までいるなんて・・・」
「分かる!羨ましいよねぇ~・・・」
「我が家の自慢の娘ですから。ねぇお義兄さん?」
「そうですなアスナさん。オレの自慢の姪ですから」
「おー!10代にして立派な溺愛っぷりですな〜!」
『それは褒め言葉として受け取りましょう』
シリカちゃんの言う通りあんな可愛い娘がいたら羨ましいよね。あたしもいつか弾くんと結婚して、二人でプールバーを継いでーーー
「子供は二人くらいにしてぇ~、親子のスキンシップを陰から録画してぇ~、それで子供が寝静まった時に・・・ああっ♡」
「弾あの野郎ォォォォォォォォォォォォ!!!いつの間に未来を調教しやがったァァァァァァァァァァァ!!!!!」
『何この兄妹!!!』
あれ?口に出てた?
「弾の野郎〜!いくらテメェの彼女だからってやりたい放題しやがってぇ~・・・!!責任取って今すぐ嫁に貰いやがれェェェェェェェェ!!!!!」
「いいの!?ありがとう!!竜兄大好き!!!」
『ありがとうじゃない!!それありがとうじゃないヤツ!!!』
ーーーとまあこんな事がありまして。
「実はあたし、ユイちゃん関係でちょっと面白い事があるのよね〜」
『面白い事?』
リズさんが突然そんなことを言ってきた。面白い事ってーーー何かある?めっちゃ天使って思えるくらい可愛いじゃんーーー
「ほら!ライリュウのこと『おいちゃん』って呼ぶじゃない!」
「そういえば!」
「言いますね!」
「シリカ!スグ!そんな面白い事でもねぇぞ!」
確かに初対面の時からそう呼んでたなぁーーーでもそこまで面白くもないかな。三人ともあの時の竜兄の反応を知らないからそう言えるんだよーーー
『おいちゃん!』
『ゴハァァァァァッ!?』
メチャクチャ血反吐撒き散らしてたもん。あれを見たら面白いとか思えないよ。
実は今日のクエストはクジラを見たいと言ったユイちゃんのために攻略することになったクエストで、我らが天使の笑顔を見るためのクエストでもある。このS級クエストは絶対に成功させる。
「ユイちゃんはSAOの中でアスナさんたちと出会ったんですね」
「うん。それからずっと、わたしとキリトくんの子供なんだよ」
そうーーーキリトくんとアスナさん、そしてユイちゃんの三人はあの世界で本当の愛で繋がった家族になった。
「だからライリュウくんもあんまり気にしないで?全部がキミのせいじゃないんだから」
「どういうこと?」
竜兄に気にしないでってーーーあたしたち黒鉄宮で90層クラスのボスモンスター、《ザ・フェイタルスカル》に襲われて、GM権限を行使したからユイちゃんはカーディナルシステムに消されそうになったんだよね?あの時竜兄いなかったしーーー
「・・・未来には言ってなかったか。ほら、前にヒースクリフの正体が茅場だって言っただろ?」
「うん」
あれを聞いた時は本当に驚いた。ヒースクリフ団長があたしたちをデスゲームに閉じ込めた大犯罪者、茅場晶彦だったなんて。割りと近くにいたのに全然気付かなかったもんーーー
「あいつ普通にGM権限を使えたし、オレがユイちゃんのこと教えたから、あいつもユイちゃんを消せたんじゃなかったのかってさ・・・」
そういえば竜兄はヒースクリフにユイちゃんの事を相談したんだっけ。それなら少なからずーーーいや、責任感が強い竜兄が責任を感じるよねーーー
「でももう大丈夫だ。全然気にしてないって訳じゃないけど、お前とアスナさんを助ける前に全部終わったからよ」
そうだよね。今でも気にしてたらかなりよそよそしいもんね。あんなに懐いてるんだもん、やたら避けたりしてたら可哀想だもん、竜兄はそんなこと出来ないよね。だって、竜兄はユイちゃんの大好きな『おいちゃん』なんだからーーー
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