平成ライダーの世界
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第十八章
もう一人のヒロインである滝澤みどりは響鬼の幼馴染みであり彼をよく知る人でした。響鬼に対してほのかな特別な感情もあったのかな、と思わせる描写もありましたが何処か一歩引いた自分の立場を自覚した人でした。この人もまた非常に好感の持てる人でした。
響鬼はまず明日夢が中心にあってそのうえで多くのいい人達が彼を支えてくれて成長を促してくれるストーリーでした。少なくとも前期はそうでした。こうした意味においては響鬼は不要となります。しかし響鬼はこの作品の紛れもない主人公であります。この作品が仮面ライダーかどうかということはかなり疑問だという方もおられるでしょう。ですが響鬼は間違いなくこの作品の戦いの部分、大人の部分を代表するキャラクターであります。そうした意味で主人公です。それに対して明日夢はその響鬼の背中を見て憧れその後ろについていくというキャラクターです。この作品の子供の部分の代表です。主人公は二人いる作品です。どちらがメインかというと難しいでしょう。しかし響鬼をヒーロー、明日夢をヒロインとするとそれで説明がつくのではないのでしょうか。そうした意味において響鬼において明日夢は話の中心にいるヒロインになります。まず彼がありその彼が憧れる存在がある、響鬼はこの設定が根幹にあり話を動かしていきます。そして響鬼もまた明日夢との触れ合いの中で成長していきました。最終回で人生の師弟関係は継続していくことになりましたがこれで成長するのは明日夢だけではありません。響鬼もなのです。後半でこのことがはっきりしました。とにかく前半と後半で議論が沸き起こり大変なことになってしまった作品でしたがそうして広い目で見てみるとです。前半も後半も非常にいい作品ではないでしょうか。平成ライダー最大の異色作でありまさに異端とも言える作品ですが素晴しいヒーローが描かれた作品です。何かと抵抗がある方も多いでしょうが観て損はありません。
異端の作品である響鬼の次はカブトになります。これはモチーフは紛れもなく仮面ライダーストロンガーでしょう。主人公である天道総司の性格も何処か仮面ライダーストロンガーこと城茂を髣髴とさせるものがあります。自信家であり尊大なところがあり頭が切れるところがです。カブトムシをモチーフとしておりその赤や黒の配色もまたストロンガーのものです。平成ライダーは多くが昭和ライダーをモチーフとしている部分があるということはよく見ていればわかることでしょうがこの作品はとりわけわかりやすいものであると思います。
カブトの設定ですがまず渋谷が隕石により崩壊しています。そしてワームという異星から来た存在が人々を殺しその人になりかわって人の世に溶け込んでいます。そのワームに対してどうしていくのか、カブトの世界はそうした世紀末的な色彩がある作品です。
その中でワームを倒すゼクトという組織がありライダー達がいます。ここで問題となるのはまずワームが何者かということでしょう。
ヒーローショーではワームの主はキュリオスというスカラベのワームになっています。スカラベはエジプトにおいて王の省庁となっている昆虫でした。キュリオスという言葉の意味もギリシア語において王という意味だそうです。つまり彼はワームの王です。
そのキュリオスが支配するワームは先程も申し上げましたが他の星から来ています。果たしてどの星から来たのか、問題はそこにあるでしょう。
僕はキュリオスもまたスサノオの分身であると考えています。カブトは三十五年前に何があったのか、が大きな伏線になっています。その三十五年前こそショッカーの暗躍がはじまった時です。カブト自体が仮面ライダー三十五周年記念作品であることがこの伏線の大きなヒントになったのでしょうがこれまで全くと言っていい程このことは触れられなかった昭和ライダーと平成ライダーのつながり、そして他の平成ライダーとの時系列の問題がカブト以降急激にこれまでないのではと思われていたのが実はつながっているのだ、と考えられるようになってきています。そしてディケイドでテレビ版の剣崎一真がブレイラウザーに変身してたことにより平成ライダーのつながりが明らかになりました。平成ライダーの世界は全て同じ時系列にありヒーローショーの設定により彼等は死しても何度も蘇りスサノオと戦う運命にあるのです。このことはカブトから実際に述べられてきたと思います。
カブトの特徴としてこのワームが人になりかわって活動しているということがありますがここでも果たしてそれだけで人でなくなるのか、という平成ライダーでのテーマが表れていると言えるでしょう。
まずその代表として日下部ひよりがいます。彼女はシシラーワームであり厳密に言うとネイティブになります、両親が殺された時にお腹の中にいたのでそこでワームに擬態されてそのうえで生まれたのが彼女です。そうした意味で彼女は人間ではありません。
しかし彼女が人間でないということは到底言えません。何故ならその心は紛れもなく人間のものだからです。人として生まれ育ってきています。外見なぞその事実の前には何の意味もないでしょう。兄である天道も最初は妹の真の姿に驚きどうするべきか戸惑いましたがやがて決意しました。人間である彼女を何としても、例え世界を敵に回してもそれでも守ろうと。カブトは絆がテーマとなっていますがひよりは兄との絆により救われています。
そして神代剣です。仮面ライダーサソードでもあり貴族の嫡流でもある彼は一見して非常に場違いで道化的要素の強いキャラです。貴族であるが為に世間知らずでありそのノブレス=オブリージュは常に空回りしています。しかし彼は姉と共に自分も殺されその自分を殺したサソードワームが正体となっています。彼は最後の最後まで自分が擬態されていること、殺されていることに気付きませんでした。
その間彼は間違いなく神代剣でした。爺やもそう考えて彼の傍にいました。彼もまた心は人間でした。ワームの姿であっても彼は間違いなく神代剣だったのです。
彼の絆は愛する岬祐月、そして爺やとのものです。あくまで純粋に、確かにかなり破天荒というか的が外れている愛情を注ぐ彼の姿は笑えましたが一途でした。その一途さが遂に岬の心を捉えています。それだけに彼の愛が最後まで適えられなかったことは悲しいことでした。
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