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歌集「春雪花」

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 陽炎も

  幻映す

   夏影も

 遠く翳りし

   秋の空かな



 揺らぐ陽炎も…暑さの中に彼の幻を映さんばかりの夏影も…皆夢ではなかったかと思うほど…。

 空を見上げれば、秋の高い空へと変わり…どこまでも遠い彼のことをまた、想ってしまうのだ…。

 この空を…彼はどんな気持ちで見上げるのだろう…。



 溜め息を

  うつや秋風

   木洩れ日を

 落とす真木の葉

   揺らしたりけり



 彼を想い…溜め息を一つ…。

 そんな私に、秋の涼やかな風が吹き…溜め息をそっと、打ち消しす…。

 その風は木洩れ日を落とす山の木々の梢を揺らし、ざわめく梢からまた…きらきらとした木洩れ日が降り注いだ…。


 もし、許されるものならば…この光景を、彼と一緒に…。




 
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