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真田十勇士

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巻ノ五十七 前田利家その七

「遠慮はいらぬ、どんどんな」
「飯をですか」
「食えと」
「たんと食ってじゃ」
 笑ってそうして言うのだった。
「そのうえでな」
「戦の場で、ですな」
「戦えというのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
「お言葉に甘えまして」
「食おうぞ、無論わしも食う」
 他ならぬ利家自身もというのだ。
「そうするぞ」
「飯はたんとあります」
 奥村がここでまた言って来た。
「ですから」
「うむ、ではな」
「たんと召し上がられ」
「そしてじゃな」
「戦われて下さい」
「そうするか、この度の戦で天下が一つになる」
 天下統一、それが成るというのだ。
「だからこそな」
「たらふく食いそのうえで」
「思う存分戦おうぞ」
 こう言ってだ、実際にだった。
 利家は信之達にも飯を食わせ自身も相当に食った、それがこの昼だった。
 その飯の後でだ、自身の軍に戻ってだった。幸村は十勇士達に言った。
「前田殿とお話してきたが」
「はい、如何でしたか」
「どうした方でしたか」
「噂以上の方であった」
 まさにというのだ。
「大身のな」
「ですか、やはり」
「そうした方でしたか」
「天下の前田家の主に相応しい」
「そうした方でしたか」
「うむ」
 その通りだとだ、幸村は十勇士達に答えた。
「実にな」
「そして、ですか」
「その方とお話が出来てですか」
「殿もよかった」
「そうだというのですな」
「大きなことを話して頂いた」
 こう言うのだった。
「実にな」
「それは何より、それではですな」
「その前田殿と共にですな」
「我等もいられる」
「有り難いことに」
「そうなる」
 まさにというのだ。
「だからな」
「はい、このままですな」
「我等は関東に入り」
「そして上杉殿、前田殿と共に戦う」
「そうしていくのですな」
「うむ、そうなる」
 まさにというのだ。
「では再び行くぞ」
「進軍ですな」
「それの再開ですな」
「もうすぐ父上も来られる」
 昌幸もというのだ。
「だからな」
「その時にですな」
「父上にお会いしようぞ」
「さすれば」
 幸村も頷く、こうした話もしつつ彼等も関東に進んでいく。その彼等の動きは北条家の方でも察していてだった。
 氏規はその話を聞いてだ、己の家臣達に苦い顔で言った。
「こうなることを恐れておった」
「殿はですな」
「そうなのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「総勢で二十万じゃな」
「はい、それ位になります」
「恐ろしい数です」
 家臣達も答える。
「北陸からも東海からもです」
「押し寄せてきています」
「おそらくじゃ」
 氏規はあらためて言った。
「敵はどうしてくるか」
「そのことですな」
「一体どうして攻めてくるか」
「まず小田原を攻める」 
 小田原城をというのだ。 
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