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ドリトル先生の名監督

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第四幕その九

「それに何よりもね」
「何よりも?」
「何よりもっていうと」
「皆がいつも一緒にいてくれる」
 そのこともというのです。
「それが何よりも有り難いよ」
「僕達がいつも先生と一緒にいてくれる」
「そのことがなんだ」
「先生にとっては何よりもなんだね」
「有り難いんだね」
「そうなんだ、そうしたことがね」
 それこそというのです。
「有り難いよ」
「そういうことなんだね」
「つまりは」
「先生にとっては」
「僕は一人だとね」
 到底というのです。
「何も出来ないよ」
「そういうことなんだね」
「僕達が一緒じゃないと」
「先生は困るんだね」
「そうなるんだ」
「絶対にそうなるよ」
 まさにと言った先生でした。
「今だってそうだしね」
「僕達が何か感じた」
「そのことがなんだ」
「嬉しいんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、皆の感性を信じるよ」
 こう言ってです、先生は。
 今はお茶を飲むのでした、そうしてゆっくりとしていますと。
 何とです、先日の先生にアドバイスを受けた相撲部の人のうちの一人、その人達の中でも一番大きかった人が研究室に来ました。
 そしてです、先生に挨拶をしてから言ってきました。
「先生、実は」
「あれっ、また怪我人が出たとか?」
「いえ、怪我人じゃないです」
 そうしたお話ではないというのです。
「そのことは安心して下さい」
「そうなんだね」
「はい、実は」
「実は?」
「今日はお願いがあって来ました」
 先生のところにというのです。
「そうしてきました」
「というと」
「前に先生が来られた時にお話しましたが」
「怪我のこと以外にも」
「はい、今うちの顧問の先生が入院していると」
「ああ、そういえばね」
 先生はその人にお茶を差し出してから応えました。
「そうしたお話もしていたね」
「そうです、それで」
「やっぱり顧問の先生がいないとね」
「うちの部では親方と呼んでいます」
「お相撲だからだね」
「はい、親方がおられないので」
 交通事故で入院してです。
「そうした稽古や食事もしていて」
「親方さん以外にはコーチの人はいないのかな」
「うちの部はいないんですよ」
「そうなんだね」
「はい、実は」 
 お茶を受け取ってから先生に困ったお顔でお話するのでした。
「そうなんです」
「それは困ったね」
「つまりうちの部は親方がいないです」
 まさにというのです。
「今は」
「親方がいない相撲部屋はね」
「稽古や食事も大変で」
 それにというのです。
「しかもです」
「ううんと、親方即ち監督だね」
「はい、そう思って下さい」
 まさにというのです。
「つまり試合をしてもです」
「監督がいないとね」
「というか練習試合すら組めません」
「それは参ったね」
「それで親方とお話をしまして」
 入院中のその人とです。
「親方が入院している間は代理の親方を立てようということになりまして」
「うん、それはいいことだよ」
 先生はまさにというお顔で答えました。
「監督がいないとどんなスポーツもね」
「何も出来ないですね」
「ラグビーでもサッカーでもクリケットでも野球でもね」
 イギリスのスポーツが最初に出ます。 
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