ひたすら沈黙が続くロッカールーム。
俺は椅子に座りビジョンを覗いていた。
「雷門対【ジェミニストーム】か、面白そうだな」
そこには心美の姿も伺える。
どうやらもうすぐ雷門対【ジェミニストーム】の試合が始まるようだ。
そんな時、走ってくる音が聞こえた。
「エクレールいつまでここにいるの!?試合始まるよ!」
シアリアの言葉に俺は頷く。
そう俺もこの後、大事な試合がある。
対戦相手はエイリア最強【ガイア】。
敵としては申し分無い。……いや、最高だ。
「ああ…わかっている。先に行っててくれすぐに向かう」
【ガイア】と戦うには俺たちは早いかもしれない。
だが奴らが【ザ・ジェネシス】の称号を取ってからだと遅い。
勝負を仕掛けるのは今しかないのだ。
俺は奴らと戦って確かめたい。
本当の強さというものを…。
そして俺は会いたい。もう一人の俺が好きだった人に…。
そう思うと自分の意思とは裏腹に、言葉が自分の口から発せられた。
「玲名……」
もしかしたら、もう一人の俺が放った言葉なのかもしれない。
「試合に集中するか…。雷門対【ジェミニストーム】は結果は見えてるしな」
俺は立ち上がるとビジョンを消し、ロッカールームから出た。
カツ…カツ…カツ……
「遅えじゃねえかエクレール」
俺がベンチに着くとすぐにガエンが迎えた。
「俺もあいにく暇じゃないんでね」
俺も軽くそうガエンに言うとメンバーを集める。
「この試合、父さんも見ているかもしれない。一つ一つのプレイに全力を注げ。一人でもそうじゃなければ絶対に負けるだろう」
俺がそう選手に喝を入れた時だった。
【ガイア】ベンチから誰かがこちらに歩いて来る。
その姿は間違える筈はなかった。
「八神 玲名……」
八神 玲名。エイリア学園マスターランク【ガイア】副キャプテン。
又の名をウルビダ。
子どもの頃は良くヒロトと玲名とサッカーをもう一人の俺がやっていたのを見ている。
「やはり本当に雷藤 真紅のようだな」
彼女は俺にそう言うと冷たい瞳で俺を見る。
違う…。もう一人の俺が記憶している玲名はこんな瞳ではなかった。
記憶にあるのは暖かな瞳。だが今は氷の様に冷たい。
「そうだ。お前は本当に八神 玲名か?」
玲名はその言葉に反応すると背を向けた。
「その名は捨てた。私はウルビダだ。貴様たちの様な星屑には到底かなわぬ敵と思い知らせる者だ」
ウルビダはそう言い捨てると【ガイア】ベンチに戻って行った。
「何を言われたんだい?」
心配したのかセツリュウが俺に問いかける。
「気にするな、単なる挑発だ」
セツリュウは納得すると下がった。
俺はもう一度向こうのベンチに視線を向け呟く。
「星屑でも集まることで1つの星になることを教えてやるぜウルビダ」
俺はそう呟くと他の奴らの処に戻った。
一方、同時刻雷門イレブンは………
瞳子監督が私たちを集めスタメンを発表する。
FW アツヤ 染岡 黒薔薇
MF 風丸 鬼道 天空橋 一之瀬
DF 塔子 壁山 吹雪
GK 円堂
というメンバーになった。
「俺たちはこの3日間、速さに慣れる特訓をしたんだ!大丈夫…俺たちなら絶対にエイリアに勝てる!」
円堂くんの檄が私たち全員を勢いづかせる。
「やはり円堂の言葉は凄いな、本当にそんな気しか湧いてこない」
黒薔薇くんも微笑しながらそう言う。
そんな私たちを見ていたレーゼがこちらに歩み寄って来る。
「貴様ら人間が我々【ジェミニストーム】に勝つだと…?笑わせてくれる…。そうだなあえて人間の言葉でいうならば【二度ある事は三度ある】貴様らの勝利はない」
私は良い返し文句を思い付き、前に出て話す。
「甘いよ宇宙人!あえて人間の言葉で言ってあげる…!【三度目の正直】ってね。私たちは絶対に負けない!」
レーゼは私を軽く睨むと背を向けた。
「せいぜい足掻くがいい。人間の限界を恨みながらな…!」
ジェミニストームを見ていたアツヤくんが話す。
「あいつらがエイリアか。まあ少しは骨のある奴みたいだな」
アツヤくんはそう言うと吹雪くんの肩に手を乗せる。
「まあ俺たちの敵じゃないよな兄貴?」
「そうかもね、まあこの試合楽しんでいこうよ」
なんという兄弟。
本当に頼もしいの一言に尽きる。
エイリア学園【ジェミニストーム】
FW ディアム リーム
MF グリンゴ レーゼ パンドラ イオ
DF カロン ガニメデ ギグ コラル
GK ゴルレオ
以上が相手チーム、【ジェミニストーム】のメンバーだ。
このチームやはり挙げるとしたらスピードだろう。
前回まで私たちは全くスピードについて行けず痛い惨敗を喫した。
唯一スピードについて行けていたお兄ちゃんも今はいない。
だけどエイリア学園を倒す為にこんなに協力してくれている仲間がいる。
私はこの繋がりを絆と言うんだと思う。
私は拳を握り締めて呟く。
「待っててお兄ちゃん…。私が絶対にお兄ちゃんを助けるから!」
呟き終わると同時に黒薔薇くんに肩を叩かれた。
「私がじゃなくて、私たちが…だろ?雷藤を助けたいのはみんな同じだ」
黒薔薇くんの言葉に私は大きく頷いて、私は空を見上げた。
「うん!絶対に私たちがお兄ちゃんを助けるからね!!」