英雄伝説~光と闇の軌跡~番外編 語り継がれなかった軌跡篇
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外伝~”六銃士”の”鉄血宰相”への宣戦布告~エピローグ
翌日、ギュランドロス達は帝国派議員達の要請によって演習のデータをみせる事となり、ディーター市長やマクダエル議長、そして警察の代表としてヴァイスとアル、ダドリーが映像を見る為にホールに集まっていた。
~翌日・クロスベル市・市庁舎・ホール~
「おやおや、帝国軍を相手によく無事でいられましたなあ?」
「まさか戦いは部下達に任せて自分達は見守っておられたのですかな?」
帝国派議員達は口元に笑みを浮かべてギュランドロスやルイーネを見つめ
「貴方達は………!」
「怪我もなく演習を無事に終えた事。それのどこが悪いのです?」
帝国派議員達の言葉を聞いたマクダエル議長は厳しい表情で帝国派議員達を睨み、ディーター市長は真剣な表情で指摘し
「いえいえ、特に他意はありませんな。」
「ええ、全くです。」
ディーター市長の指摘に帝国派議員達はそれぞれ口元に笑みを浮かべて答えた。
「クッ!(まさか帝国派議員達は今回の演習の内容を口実に警備隊、警察共に干渉をする気なのでしょうか!?)」
その様子をダドリーは悔しそうな表情で唇を噛みしめて小声で自分の傍にいるヴァイス達に尋ね
(間違いなくそのつもりだろうな。だが……)
(全ては映像を見てからですね。)
尋ねられたヴァイスとアルはそれぞれ既にどういう結果になっているのか予想できていた為静かな笑みを浮かべていた。
「ルイーネ、全員がお待ちかねの合同演習の様子を記録した映像をみせてやれ。」
「かしこまりました。」
そしてギュランドロスの指示によってルイーネは映像を再生し、再生された映像は信じ難い映像―――――クロスベル警備隊が帝国軍を蹂躙している映像だった!
「な、なななななななっ!?」
「て、帝国軍が警備隊にじゅ、蹂躙されている!?」
「ば、バカなっ!?装甲車で戦車を無力化したどころか、な、生身で戦車を破壊した!?」
予想外の映像の内容に帝国派議員達は狼狽え
「…………………」
「フッ、やはり思った通りだったな。」
「私達ですらも相当の被害を出して勝利した”三銃士”とギュランドロスに加えて彼らによって鍛え上げられた警備隊と戦う羽目になった帝国軍はあまりにも哀れですねえ。」
ダドリーは目を見開いて口をパクパクさせ、ヴァイスは口元に笑みを浮かべ、アルは苦笑いし
「こ、これは………!」
「ギュ、ギュランドロス司令!こ、この映像は本物なのですか!?」
警備隊が帝国軍相手に蹂躙するという信じ難い映像にマクダエル議長は信じられない表情をし、ディーター市長は目を見開いた後立ち上がって興奮した様子で身体を震わせ、嬉しそうな表情でギュランドロスを見つめて尋ねた。
「ああ、間違いなく本物だぜ。」
「このデータは正真正銘先日の合同演習の様子を録ったデータですわ。」
ディーター市長の質問にギュランドロスとルイーネはそれぞれ口元に笑みを浮かべて答え
「で、出鱈目だ!こんなの合成に決まっている!」
「そ、そうだ!帝国軍が警備隊に敗北するなどありえない!」
帝国軍が警備隊に蹂躙されるという現実を受け入れられない帝国派議員達はそれぞれ次々と怒りの表情で立ち上がって叫んだ。
「クク、疑うなら”本国”にでも確認すればどうだ?まあ、その場合お前らは一体どうなるかなあ?」
「―――ちなみに先日の演習後になりますが、エレボニア帝国の”情報局”から”氷の乙女”クレア・リーヴェルト大尉が私達を訪ねて参りまして。フフ、彼女から今回の演習の事は黙っておくようにと頭を下げられて頼まれたのです。」
「なあっ!?」
「ア、”氷の乙女”!?」
ルイーネの口から出た予想外の大物の人物の登場に帝国派議員達は口を大きく開け
「―――本来ならこの映像を第3者に見せたら不味いんだがなあ?お前らが”どうしても”と頼むからクロスベル警備隊司令として”仕方なく”みせてやったんだ。」
「万が一本国にでも伝われば自分達の身がどうなるかおわかりでしょう?少なくてもオズボーン宰相の為に複雑な思いで頭を下げた”氷の乙女”は貴方達の事は絶対に許さないでしょうね。」
「……………………………」
エレボニア帝国が必死に隠そうとしている事実を第3者に教えた際、自分達がどうなるか想像した帝国派議員達はそれぞれ表情を青褪めさせた。
「―――なお、今回の件を黙っている条件としてエレボニア帝国はクロスベル警察、警備隊共に干渉はしないという約束をして頂いたのでよ~く覚えておいてくださいね♪」
そしてルイーネの止めの一言によって帝国派議員達はガックリと肩を落とした。
「さてと。誰が戦いは部下達に任せて高みの見物だって?」
「フフ、今回の演習で警備隊全員は無事である事に対し、帝国軍はおよそ半数の重傷者が出たのですよ?それなのによく『帝国軍を相手に無事でしたな?』と言えるものですね?」
「ヒッ!?」
「ば、”化物”……!」
「………………………」
獰猛な笑みを浮かべるギュランドロスと微笑みを浮かべるルイーネが発する膨大な殺気や闘気、覇気によってクレア大尉のように巨大な獣に喰い殺される幻影を見た帝国派議員達は次々と表情を青褪めさせて身体を震わせて悲鳴を上げ、中にはギュランドロスとルイーネがさらけ出す威圧に耐えられず、次々と泡を吹いて気絶する議員達もいた。
「これに懲りたら2度と俺達”六銃士”にちょっかいをかけるんじゃねえ!屑共がぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!」
「も、申し訳ございませんっ!!」
膨大な覇気や殺気、闘気を纏ったギュランドロスが叫ぶとホール中にギュランドロスの声がビリビリと響き、帝国派議員達の身体は反射的に動いてその場で土下座をして頭を地面にこすりつけた!
(ば、馬鹿なっ!?ア、”氷の乙女”―――いや、エレボニア帝国相手に一方的に交換条件を呑ませるだとっ!?)
一方その様子を見守っていたダドリーは信じられない表情をし
(これでエレボニア帝国は警備隊、警察共に完全に手出しはできなくなりましたね。)
(やれやれ、案の定ユン・ガソルの国王だった時と同じくらい大暴れをしているな。できれば合同演習には俺達も混じりたかったな。)
アルとヴァイスはそれぞれ静かな笑みを浮かべ
「フフ、さすがリウイ陛下達が見込んだ方達ですな。」
「ええ………合同演習の件を公にして彼らを称える事ができないのは非常に残念ですが……その代わりに帝国軍を相手に奮闘し、更には勝利した彼ら全員に特別ボーナスを与えるべきですな。」
マクダエル議長とディーター市長はそれぞれ口元に笑みを浮かべて大国の謀略を正面から打ち破った頼もしい”英雄”達を見つめていた。
~同時刻・黒月貿易公司~
同じ頃ツァオは”銀”から信じ難い報告を受けていた。
「帝国軍相手に警備隊が圧勝ですか?」
「ああ。――――それどころかその後に釘を刺しに来た”氷の乙女”に”紅き暴君”と”微笑みの剣妃”は逆に”氷の乙女”――――いや、”鉄血宰相”に釘を刺した。」
「なっ!?”氷の乙女”どころか、”鉄血宰相”相手に!?」
銀の信じ難い報告にツァオの傍に控えているラウは驚愕し
「更にツァオ。”微笑みの剣妃”からお前に伝言だ。『―――相手が何者であろうと私達は全力でお相手して叩き潰します』と伝えられた。」
「まさか直接接触したのですか?」
「いや。奴等は司令室に潜んでいた私に”最初から気付いていた”。」
「なあっ!?”銀”殿に!?」
「……………………………」
世界最高峰の暗殺者である”銀”の潜伏すらも見破ったギュランドロス達の”規格外さ”にラウは口を大きく開け、ツァオは目を見開いて絶句していた。
「これはあくまで私の意見だが警備隊、警察共に下手に手を出さない方がいいと思うぞ。連中は最低でも私と同じクラスの強さ、最悪は”それ以上の化物”の上”鉄血宰相”の謀略すら正面から打ち破り、逆に”鉄血宰相”を脅迫するくらい謀略も長けている。いくら私と言えど、”化物”を六名も相手にはできん。」
「………銀殿すらも警戒する程の忠告、ありがたく受け取っておきます。」
「フン、せいぜい”化物”達の逆鱗に触れないように気をつける事だな。もしそうなった場合、”黒月”は帝国軍すらも蹂躙したベルガード門の精鋭部隊に加えて”六銃士”という”化物”達相手に全面戦争をする事になるのだからな。」
そして銀は空間の中へと入ってその場から去って行った。
「やれやれ。まさか”銀”殿すらも恐れる上”鉄血宰相”を脅迫する程の”化物”とは。――――”鉄血宰相”の二の舞になって、こちらにまで被害を拡大させない為にも共和国派の議員の方々にはこれ以上彼らに手を出さないようにと警告をしておいた方がよさそうですね。」
銀が去るとツァオは疲れた表情で溜息を吐き
「まさか”六銃士”がこれ程の”規格外”だったとは!”風の剣聖”と”叡智”に加え、”ブレイサーロード”達と入れ替わりに遊撃士協会に所属した”嵐の剣神”達も厄介だというのに……!」
「フフ、それどころかあの二人も超える”嵐の剣神”達レベルの”化物”なんでしょうね。――――だが、だからこそ面白い。”D∴G教団”に操られていた”ルバーチェ”の時以上に力と知恵を振るうことが出来そうですね。」
新たなる強敵の登場にラウは唇を噛みしめ、ツァオは不敵な笑みを浮かべていた。
~同時刻・エレボニア帝国・帝都ヘイムダル・バルフレイム宮~
同じ頃、オズボーン宰相はクレア大尉から驚愕の報告を受けていた。
「演習はクロスベル警備隊の圧勝だと?それは本当なのか?」
「はい。警備隊の練度は余りにも凄まじく、加えて”六銃士”の一人――――”鋼鉄の剣姫”がとてつもない戦術家でして………我が軍は序盤から警備隊に翻弄され、完全に制圧されてしまいました。」
「完全に制圧されたという事は”アハツェン”の部隊すらも撃破したのか?」
「はい。複数の装甲車で”アハツェン”を包囲して攪乱し、スピードを活かして砲撃を回避すると共に側面からの攻撃によって”アハツェン”の車輪や砲口を狙って無力化し……さらに信じ難い事ですが”紅き暴君”が生身で”アハツェン”を次々と破壊したのです。―――被害は余りにも甚大で今回の演習で出撃した”アハツェン”全てに加え、演習に参加した兵達の武器も全て破壊され、更には死傷者は幸いにも出ませんでしたが重傷者はおよそ半数が出てしまいました。」
「………………………」
クレア大尉の信じ難い報告を聞いたオズボーン宰相は目を見開いて絶句し
「更に今回の件を彼らを”推薦した者達”――――”英雄王”達に黙る代わりにクロスベル警備隊、警察に対してエレボニア帝国が干渉しないという条件を呑む事になってしまいました。―――申し訳ありません!私の落ち度です!」
「…………………フッ、まさか釘を刺すつもりが逆に刺される事になるとはな。他に何か言ってこなかったのか?」
悔しそうな表情で説明した後頭を深く下げたクレア大尉の話を聞いて黙り込んだ後口元に笑みを浮かべて尋ねた。
「そ、それが。彼らは閣下に向けて私にこう伝えました。――――”紅き暴君”ギュランドロス・ヴァスガンからは『テメェら”如き”が俺達”六銃士”をどうにかできると思うな。身の程を知れ』、”微笑みの剣妃”ルイーネ・サーキュリーからは『私達が進む道を阻むなら全力でお相手し、叩き潰しましょう。―――――”六銃士”の名に賭けて』と。」
「………………………」
クレア大尉の説明を聞いたオズボーン宰相は呆けた様子で黙り込み
「………ククク………ハハハハハハハッ!」
「か、閣下……?」
やがて大声で笑い出し、自分達自身を挑発や侮辱しているにも関わらず笑い続けるオズボーン宰相の考えがわからないクレア大尉は戸惑った。
「いいだろう、”六銃士”!貴殿らの挑発、この”鉄血宰相”、喜んで受けて立とうぞ!まずは”通商会議”にて、せいぜいお手並みを拝見させてもらうとしようぞ!」
新たな”遊戯”の”駒”の登場にオズボーン宰相は好戦的な笑みを浮かべて笑い続けた。
「合同演習は警備隊の圧勝?本当かい、それは?」
同じ頃宮殿の一室でミュラー少佐から説明を聞いたオリヴァルト皇子は信じ難い話に目を丸くした。
「ああ。結果はクロスベル警備隊は約200名の戦闘不能者を出したことに対して、帝国軍は”全滅”。加えて被害は余りにも甚大で演習に参加した帝国兵達全員に戒厳令が出されたそうだ。」
「被害が甚大って………一体どれ程の被害が出たんだい?」
「幸いにも死傷者は出なかったが重傷者が約半数、武器は全て破壊された挙句、演習で使用した”アハツェン”も全て破壊されたとの事だ。加えてオーラフ中将も”紅き暴君”ギュランドロス・ヴァスガン司令との一騎打ちによって制圧されたそうだ。」
「………………………」
ミュラー少佐の余りにも信じ難い報告にオリヴァルト皇子は目を見開いて絶句し
「フフ、宰相殿も予想外の結果にさぞ慌てているだろうね。どうやら君はとてつもなく心強い仲間を手に入れたようだね、ヴァイス。―――――”六銃士”か。機会があれば一度会ってじっくりと話してみたいな。」
やがて静かな笑みを浮かべて窓から見える景色を見つめてかつて共に戦った親友や、まだ見ぬ”英雄”達を思い浮かべた。
後にギュランドロスとルイーネのクレア大尉――――”鉄血宰相”に向けて発した宣言は”六銃士の鉄血宰相への宣戦布告”としてゼムリア大陸の歴史に伝えられ続ける事となる………
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