IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第34話「思い通りにならない(させない)」
前書き
ようやくラウラVS一夏です。
当然、原作と違ってペアが互いに違います。
P.S 地の文の改行の際の空白を1マスに変えました。
=桜side=
「ほぉ~...なかなかやるなぁ...。」
「ふむ...高町とも戦ってみたいものだ。」
秋十君とユーリちゃんの試合を見て、俺はそう呟く。
隣にいる桃色のポニーテールの女子もなんか戦意を滾らせてる。
「...もしかしてバトルジャンキーだったりする?」
「さぁ、どうだろうな?少なくとも、強者と戦うのは心躍る。」
「充分バトルジャンキーだわそれ。」
彼女と会ったのは偶然。...というか、俺はラウラの様子を見に来ただけだ。
そのラウラのペアが彼女...八神シグナムだった訳だ。
「どこにも隠れた強者はいるものだな。」
「同郷の軍人とあれば、近いうちに手合わせしたいのだが...。」
「まずは試合に集中しろ。」
ダメだこいつら。同じドイツ出身だからか、意気投合して手合わせをするかどうかばっかり考えてやがる...。試合の事考えてないぞ...。
...まぁ、対戦相手が考える必要のない相手だしな...。
「...とりあえず、手合わせに関しては試合が終わってからにしよう。」
「そうだな。」
そういってようやく二人は目の前に迫る試合について考えるようになる。
「(...それにしても、今年の一年生って隠れた実力者多くないか?)」
高町や八神とか...本音もそうだが、彼女の場合は暗部に関係してるから除外だな。
高町は父親の方が実は裏にも通ずる剣術の一族らしいけどな。
ちなみに、八神はこの日本にいる遠い親戚の家で一緒に暮らしているから苗字が八神なんだそうだ。故郷はドイツらしい。
「(...さて、そろそろ俺も観客席に戻るか。)」
おそらく“奴ら”も動いているだろうし....な。
=out side=
「....どういう事だ....。」
生徒ホールに掲示されている対戦表を見て、一夏は信じられないかのようにそう呟く。
「箒が俺とペアになっている...のはまだいい...!だが...!」
一夏が睨むように見るのは、先程の試合の対戦表と、自身の相手。
「なんで、リリなののキャラがいるんだよ...!」
そう、高町なのはと八神シグナムという名に、一夏は驚愕していた。
「いや...元々ユーリもいた...って事は、あいつらのせいか...!」
そういって思い浮かべるは、桜と秋十。
「あいつらのせいで、リリなのキャラまで...!」
桜か秋十が特典で望んだから、なのは達がいる。そう一夏は思い込んだ。
...実際には、ただの偶然どころか、二人は転生とは無関係なのだが。
「どうした秋十。もうすぐ始まるぞ。」
「あ、ああ。わかった。すぐ行く。」
箒に呼ばれ、ハッとした一夏は急いでアリーナの方へ向かう。
「(...ラウラだって必要以上に俺に絡んでこなかった。まるで、その価値すらないかのように...。くそっ、あいつらのせいでラウラもシャルも展開がおかしい!)」
悉く思い通りに行かないと、一夏は苛立つ。
「(...まぁいい。ここでラウラをVTシステムから救い出せば....!)」
とりあえず目の前の事に集中しようと、一夏は思考を切り替える。
...彼は知らない。既に、VTシステムなぞ存在しない事を....。
「...ふむ、篠ノ之の方は私に任せてくれ。あの男とは少しばかり因縁があるのだろう?」
「気づいていたのか?」
「なに、目を見ていれば気づける。」
試合開始直前にて、一夏&箒ペアと相対しながらラウラとシグナムはそんな会話をする。
「....箒、気を付けろよ。」
「分かっている。」
少し逸れたが、これからの展開にほくそ笑む一夏は、箒にそういう。
...そして、試合が始まった。
「っ!」
ギィイイン!!
「っ、なっ...!?」
始まった瞬間、シグナムが動き、箒に向けてブレードを振るう。
咄嗟に箒は防いだものの、いきなりの事に動揺してしまう。
「箒!?」
「...貴様の相手はこちらだ。」
「っ....!」
箒といきなり分離された一夏の下へ、ラウラが躍りかかる。
「貴様には、少々思うところがあるのでな...付き合ってもらうぞ...!」
「くっ....!」
敢えてAICは使わず、プラズマ手刀で一夏を攻める。
手加減に手加減を重ねたような攻め方なので、一夏も何とか防ぐ。
「なんだよ...!やっぱり俺は千冬姉の弟にふさわしくないってのか!?」
転校してきてから、ラウラと一夏の間にはほとんど関わりがなかった。
それなのに、まるでわかっていたかのように言う一夏に、ラウラは冷めた目で返す。
「...貴様は既に教官の弟だとすら思っていない。」
「なっ....!?」
“認めない”のではなく、既にそう思っていないと断言するラウラ。
その事に、つい一夏は驚愕する。
「それに、自分でふさわしくないのかと勘繰る時点で、それだけの事を仕出かした自覚はあるのだろう?」
一夏からの攻撃を捌きつつ、ラウラは涼しい顔でそういう。
「っ、それは...!」
「正直、関わる事がなければ会話すらするつもりはなかったが...貴様と戦う事となったからには、はっきり言っておこう。」
少し遅れて全然関わってすらいない事を思い出す一夏。
そんな一夏に、ラウラは“ドイツの冷水”という異名にふさわしい視線をぶつける。
「私は貴様を認めない。...教官の弟としてではなく、同じ人間として!貴様を認めない!!」
「っ、ぐぁっ!?」
確固とした怒りを込めた一撃が、一夏を弾き飛ばす。
「貴様がいたから、教官は...秋十は....!っ...それだけじゃない、貴様と直接的にも間接的にも関わった者全てが...貴様のせいでっ!!」
「がぁっ!?」
さらにラウラは加速し、追撃を一夏に喰らわす。
雪片弐型で攻撃を防ぐが、そのうえからの衝撃に一夏はまた吹き飛ばされる。
「一夏っ!!」
「どこを見ている。」
「っ、ぐっ...!」
一夏の援護に入ろうとする箒だが、シグナムに阻まれる。
「そこを...どけっ!」
「それはできないな。」
箒の斬撃をシグナムは容易く受け止める。
「この太刀筋...なるほど。やはり篠ノ之流か。」
「なに...?」
「...だが、まだ未熟。」
一人で納得するシグナムを箒は訝しむも、すぐに吹き飛ばされてそれどこじゃなくなる。
「っ...強い...!」
「これでも様々な剣の使い手と手合わせをした事があってな。...だからこそ、言わせてもらおう。貴様の力はそんなものではないはずだ。」
そういって間合いを詰め、一閃する。
近づいて斬る。...ただそれだけの事だが、箒にはそれが脅威に見えた。
「はぁああっ!」
「ぐ、ぁあああっ!?」
翻弄するように何度も斬りつける。
飽くまで直撃はさせず、少しずつラウラは一夏を追い詰める。
「どうした織斑一夏!私はまだ武装を一つしか使っていないぞ!」
「く、くそっ....!」
必死に回避し、反撃を試みようとする一夏。
しかし、その悉くがラウラには通じず、全て捻じ伏せられる。
努力を積み重ね、芯の通った攻撃を繰り出す秋十と何度も戦ったラウラにとって、そんな苦し紛れのような反撃は一切通じない。
「弱い!あまりにも弱すぎるぞ織斑一夏!!」
「くっ...!」
全力を出していないのに手玉に取られている事に、一夏は顔を顰める。
「(なんだよこれ...!ラウラってこんなに強いのかよ...!?)」
“原作”で思っていたのと違う強さに、一夏はどんどん追い詰められる。
「(これじゃあ、ラウラを倒すどころか、VTシステムを出すことさえ...!)」
「...どうした。考え事とは余裕...だなっ!」
「がっ...!?」
つい思考が長くなった所を、ラウラの蹴りが入る。
「立て!織斑一夏!貴様にはこの程度では生温い!」
「くっ....!」
圧倒的で、ただし一気には決めずにラウラは一夏を追い詰める。
「...圧倒だな。」
「まぁ、さすがに予想してましたけど。」
観客席では、試合が終わって一段落着いた桜と秋十が、共に試合を見ていた。
「さっきまでと違って盛り上がる訳でもないしね。」
「....というか、何気にこの学園、剣が上手い人結構いますよね?」
秋十はふとそう思って言葉を漏らす。
「俺に秋十君にマドカちゃん、高町に八神...確かに多いな。他にも薙刀なら簪ちゃん、槍なら生徒会長と...。」
「まぁ、武術ができれば有利になりますしね...。」
ISでも接近されれば、武術を生かす事ができる。
そう思いつつ、秋十は呟いた。
「それにしてもラウラ...結構キレてるな...。」
「そりゃあ、秋十君を虐げていた張本人だからな。他にも尊敬する千冬を洗脳していたんだ。むしろ試合で圧倒するのみってだけでもマシな方だろう。」
「あー...。」
自分も頼りにしていた人達を洗脳された身なので、ラウラの気持ちを察する秋十。
そんな時、ふと桜は空を見上げる。
「桜さん?」
「....予想じゃ、そろそろか...。」
空を見上げながらそう呟く桜に、秋十は訝しむ。
「どういうことですか?」
「ん?...なに、実はデュノアの件は終わった訳ではなくてな...。もうすぐ終わりに向かうと俺は予想しているんだ。」
「は、はぁ....?」
どういうことなのかと、秋十は首を傾げる。
「幸い、デュノア本人は会社で預かってるから安全だけど、ここはそうはいかん。俺たちで何とかするんだ。」
「...正直、嫌な予感しかしないんですけど。」
なんとなく何が起こるか予測がつき、秋十は顔を引き攣らせる。
「襲撃?」
「だろうねー。とりあえず念のためユーリとか呼んでおいてくれる?」
「オッケー。その間は任せたよ。桜さん、秋兄。」
マドカは桜の指示通りにユーリや簪たちを呼びに行っておく。
襲撃されるのなら、すぐに動けるようにという考えだ。
「(しかしまぁ...見事なまでに“原作”と同じタイミングで試合中止になりそうだな。)」
“原作”の知識から、確かラウラと一夏の試合で中止になったと思い出す桜。
それと同時に、アリーナにアラートが響き渡る。
「来たか...。」
【試合は中止です!不審なISが学園に接近しています!来賓の方々と生徒の皆さんは大至急避難してください!繰り返します!】
山田先生によるアリーナに向けた放送の声が響き渡る。
「...悪いな、巻き込んでしまって。...被害は出さないからな。」
「桜さん...やっぱり...。」
「これが一番やりやすかった。...まぁ、大丈夫だ。」
そんな問題じゃないと思いつつ、避難し始める生徒たちの最後尾に就く秋十だった。
「なんだ...!?」
「一体何が...。」
試合をしていたラウラ達も動きを放送の声に止める。
「ISの襲撃?なんでIS学園にそんな事が...。」
「ぐ、...ぅう....!(なんだよ...!?なんでここで襲撃なんだ!?こんなの原作にはなかっただろう!?)」
ラウラによってボロボロにされた一夏は、呻きながらもそう思う。
「とにかく、私たちも避難に....っ!」
“向かおう”とシグナムが言おうとした瞬間、アリーナのシールドに衝撃が走る。
「早い...!これでは教師が間に合わないぞ...!」
「...私が喰い止めよう。」
「ラウラ!?」
少しの時間ならアリーナのシールドで稼げるが、教師が来るには間に合わない。
ならば、とラウラは自身が足止めに買って出る。
「軍人たるもの、近くの生徒ぐらい守れないでどうする!?」
「っ....分かった....だが。」
シグナムはそんなラウラの横に立つ。
「...私もお供しよう。」
「なっ...!?」
「...これでも色んな剣士と手合わせした経験がある。...なに、すぐにやられる事はないさ。」
それでも実戦に対して冷や汗を掻くシグナム。
「...それに、だ。...もう、選択する時間がない。」
「っ...!」
その言葉と共に、シールドが破られ、複数のISが入ってくる。
「....幸い、相手はラファールのみ...おそらく代表候補生並の相手はいない。ならば、倒すのは私で、シグナムはそこの二人を守ってくれ。」
「...わかった。」
いざ行動を起こそうと、二人が動き出した時...。
―――いや、二人とも守る方でいいぞ。
「っ...!」
「....お前は...。」
横合いから聞こえた声に振り返ると、そこには桜が立っていた。
「いつの間に...。」
「シャッターが閉まる前に、ちょちょいっとね。...さて...。」
そう言って生身のまま桜はIS達の前に立つ。
「...お前らがご所望の相手が来たぜ。」
「っ...なら、貴様が...!」
怒りを滲ませ、襲撃者の一人がライフルを桜に向ける...が、そこにはいなかった。
「なっ...!?」
「そうだな。お前らが勤めるデュノア社を潰した会社の一人だ。」
「いつの間に...!?」
既に桜はその一人の懐に入り込んでいた。
「というか、自業自得だぞ?そんな後ろめたい事ばかりやっているから、それをばらされただけで会社が潰れるんだ。」
桜や束がデュノア社に行った事はそこまで複雑ではない。
ただ汚職などとにかく黒い部分を露見するようにしたのだ。
そして、潰れるまでの間にシャルを会社から移動させたのだ。
「うるさいっ!!男なんて私たちのいう事を聞いてればいいのよ!」
「っ、避けろ!」
ブレードが振られ、それを見たシグナムは咄嗟にそう叫ぶ。
「大丈夫だ。」
「ラウラ!?何を...!」
それをラウラが制し、訝しんだシグナムが再度桜を見ると...。
「...ブレードの使い方がなっちゃいないねぇ。そんなんじゃ、生身の人間すら殺せないぞ?...まぁ、ISの用途はそんなんじゃないけどな。」
「なっ....!?」
ブレードの刀身に乗った桜がそういう。
そして、手元に蹴りを入れてそのままブレードを奪う。
「...ほら、来いよ。男の強さを見せてやるよ。」
「っ....調子に乗るな!男風情が!!」
ブレードを手に、桜は襲撃者たちを挑発する。
その挑発に襲撃者たちはあっさりと乗り、戦闘が始まった。
「(な、なんでこんな事に....!?)」
そんな中、一夏は展開についていけず、ただ“原作”と違う事に戸惑っていた。
「おい、早く避難するぞ。聞いているのか!?」
「(...そうか、あいつが...あいつがいるから...!)」
ラウラの声も聞かずに、一夏は桜に憎悪を向ける。
「速い...あれで生身なのか...?」
「師匠には常識は通用しない。......後、避難の必要もなくなったな。」
ラウラがそう言った瞬間、ピットの方からいくつものISが出てくる。
鎮圧部隊の教師たちだ。以前と違ってシステムが無事なため、もう来たようだ。
「いーや、こっちには戦闘不能が二人いるからな。後、生身も。」
「...師匠?どうして戦闘をやめて...。」
「さすがに生身でやり合ってるのが知れ渡るのはやばいからな。」
アリーナの観客席にいた者は全員避難しているため、桜の戦闘を見ていたのは管制室にいた千冬と山田先生ぐらいだった。
さすがに、周知になるのは避けるのだった。
「無事....ですね!」
「おい、俺を見て大丈夫だと断定するな。」
鎮圧部隊の一人...アミタが桜を見て無事だと断定する。
「また恨みでも買ったの?」
「買ったっちゃ、買ったな。...ちなみにお前らも買った内の一人になるな。」
キリエの問いにそう答える桜。
今回の場合、恨みを買ったのはワールド・レボリューションなので、その会社に所属しているアミタとキリエも一応恨みを買ったと言える。
「っ.....!」
「...とにかく、捕縛します。」
「任せた。ほら、避難するぞ。」
後を教師陣に任せ、桜は四人に呼びかける。
「..........。」
「っ....一夏、避難するぞ。.....一夏?」
素直にいう事は聞きたくないが、渋々従う箒。
だが、なんの反応も示さない一夏に訝しむ。
「っ...ぁああああああ!!」
「っ!」
ギィイイン!!
突然、一夏は雪片弐型を桜に向けて振るう。
それを桜は持っていたブレードで受け流す。
「桜さん!?」
「何を...!?」
突然の事に、アミタとキリエが驚く。
「おいおい。この状況で俺に斬りかかるとか...状況わかってる?」
「うるせぇ!!てめぇさえ...てめぇさえいなければ!!」
思い通りにならない。そんな思いで、一夏は桜に斬りかかる。
幸い、我武者羅に振るっているだけなので、桜は何とか受け流せている。
...実際はそう見えるだけで、余裕だったりするが。
「っ、キリエ!そちらは頼みます!」
「りょーかい!」
すぐさまアミタが動き、一夏を抑える。
「ぐっ....!」
「この状況で場を混乱させるとは...人を危険に晒したいのですか!?それに、桜さんだったからよかったものの、ISで人に斬りかかるなど、何をしようとしたのかわかっているのですか!?」
「おい、俺だったからよかったってなんだ。」
桜の突っ込みも無視してアミタは一夏を叱責する。
「(なんだよ...!なんで、思い通りにならねぇんだよ...!)」
だが、一夏はそんな事よりも、自分の思い通りにならない現状にただただ怒りを抱いていた。
「.........。」
「っ.....!」
そんな一夏を、桜は無言で見下ろす。
「...アミタ、後は頼んだ。」
「桜さん?...あ、はいっ!」
数秒間の睨み合いの後、桜はアミタにそう言って背を向ける。
―――....てめぇなんかの思い通りにはさせねぇよ。
「(....ま、概ね予定通りだな。)」
先ほど見下ろしてた際の心の声を思い出しつつ、桜はそう思った。
「(白式には悪い思いをさせちまうが...まぁ、臨海学校までの辛抱だな。)」
「師匠?」
「ん、なんでもない。」
ラウラに話しかけられた所で、桜は思考を中断した。
「すみません、一応私たちが来るまでの事情を聞きたいのでついてきてください。」
「分かった。行くぞ、皆。」
そして、一人の教師にそう言われて桜たちは移動した。
...こうして、突然のIS学園への襲撃は無事に解決したのである。
尤も、事後処理がまだなのだが。
「このっ...大馬鹿者が!!」
スパァアアアアン!!
事情聴取にて、部屋に大きな乾いた音が響き渡る。
千冬が一夏に対して出席簿で思いっきり叩いた音だ。
「ぐ....!」
「貴様は何をしたのかわかっているのか!?その場にいる全員...特に桜を危険に晒したのだぞ!?幸い、相手が桜だからよかったものを...!」
あまりの怒りに、桜の事を苗字ではなく名前で呼んでしまう。
桜が襲われた事に、千冬も少なからず動揺していたらしい。
「....どうして皆俺なら大丈夫だというんですかね?」
「...日頃の貴方のチートっぷりを振り返ってください。」
隅の方でボソリと呟いた桜の突っ込みに、アミタが呆れながら言い返す。
言われた通り、桜は少し振り返って...。
「いやまぁ、確かに大丈夫だと自分でも思うけどさ。」
「思うのか...。」
大丈夫だと認める。その事にあまり詳しくは知らないシグナムも呆れた。
「あ、そうだ。アミタ、さっき襲ってきた元デュノア社の連中は?」
「他の部屋で尋問中です。」
一夏を問い詰める千冬を他所に、桜は少し気になった事をアミタに聞く。
「ま、大方女尊男卑思想の連中が会社を潰された腹いせに目障りな会社の一員の男である俺や秋十君を狙いに来たんだろ。」
「....そこまで既に推測してるんですね。...あっ、そういえばトーナメント前に会社で色々やってたような...。」
白々しく言う桜に、アミタは会社に一度戻った際に気づいた事を思い出す。
「アミタ、お前は何も見なかった。いいな?」
「え?もしかして...。」
「いいな?」
「....はい。」
しかし、桜の威圧によってその事はなかった事にされた。
「ちょっとお姉ちゃん?事情は聞き終わったの?」
「あ....。」
「何やってるのよ...。もう、こっちで聞いておいたわよ。」
どうやら桜とアミタが会話している内に、キリエが代わりにラウラやシグナムから事の経緯を聞き終わったらしい。
ちなみに、一夏はまだ千冬の説教を受けている。
「とりあえず、この事件に関わった生徒には箝口令が出されるわ。それ以外は特になし。....いいわよね?織斑先生。」
「ん?...ああ、そうだな。こいつ以外はな。」
実際は襲われて教師が来るまで耐え凌いだだけなのだ。
罰せられる謂れはないだろう。...桜を襲った一夏を除いて。
「....はぁ、とりあえず、結論から言っておこう。襲撃者達はIS学園がきっちりと対処する。お前たちは...まぁ、口止め以外は特に何もない。ただし、織斑。お前だけは反省文20枚と二週間の自室謹慎を言い渡す。」
「っ、そ...!」
「文句はないな?言っておくが、織斑の意見は聞かん。自分の思い通りにならないから人を襲うなどと馬鹿げた理由で斬りかかるとはな。」
千冬からの言い渡しに一夏が言い返そうとするも、それを封殺する。
「な...!?」
「...言わなければわからないと思ったか?」
これでも勘の鋭い千冬である。弟の考えている事ならある程度見抜けるのだろう。
「.....まったく、私は育て方を間違ったのだな...。すまない、私の弟がこんな事を仕出かして....。」
「教官....。」
その場にいる全員に頭を下げる千冬に、ラウラは言い様のない悲しさに見舞われる。
秋十と会って色々変わったラウラだが、それでも尊敬する千冬の弱々しい姿は見ていられないのだ。
「ち、違っ...!」
「何が違うというのだ?」
一夏は苦し紛れに事実を否定しようとするが、誰も信用しようとしない。
「ほ、箒...!」
「...どういう事だ一夏....いくらなんでも人を殺そうなどと....!」
唯一洗脳されたままの箒に一夏は頼ろうとする。
しかし、その洗脳は“原作”の箒のようにしただけ。緊急時に人に斬りかかるという愚行を許容させるような洗脳ではない。
「お前はそのような奴じゃなかったはずだ!どうして...!」
「ほ、箒...?」
庇ってくれない事に、予想外だと一夏は茫然とする。
「い、いや、これは...!」
「っ...!みっともないぞ一夏!!」
パァアアン!!
またもや室内に乾いた音が響き渡る。
感極まった箒が、一夏の頬を思いっきり叩いたのだ。
「ぇ....?」
「少しは頭を冷やせ!」
「あ、待て!」
涙を流しながら怒りをぶちまけ、箒は勝手に部屋から出てしまう。
さすがにそれはダメだろうと、シグナムが止めようとしたが、手遅れだった。
「....まぁ、いい。伝えておくべき事は伝えておいたからな。...八神、追いかけたければ追いかけてもいい。...別に、既にお前たちを留めておく必要はないからな。」
「...ありがとうございます。では。」
千冬の言葉にシグナムはそう言って箒を追いかけて行った。
後書き
今回はここまでです。中途半端ですがここ以外で切れませんでした。
また出てくるリリなのキャラ...。オリキャラじゃないので扱いやすいんです...(´・ω・`)
innocent基準に見せかけてなのはと同年齢。...ベルカ語ってそういえばドイツ語に近いという事で、ラウラと相性がいいという事でチョイスしました。
束や桜は所謂真の黒幕的なポジです。状況をどう動かすかも、二人に掛かれば自由に決めれます。
そしてなんか自暴自棄になる一夏。そろそろ評価がガタ落ちしそう。
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