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ご馳走が綺麗に並べ終わると、男性は女の子を椅子へ座らせご自分も座られました。
そしてそのご様子の美しいこと。ソファからもたもた降りた女の子の肩をゆっくり押し食事へ促すと女の子の座る椅子を引いてやっていたのです。
どうという事のない動作でしょうか。しかしこの流れが本当に美しかったのです。
お二人の周りの時間は私等とは違うように感じるのです。なにをなさるにもゆっくりとしていらっしゃいました。下女の方が冷めないように、と急いで並べられた食事なでど微塵も気にするご様子は無く椅子に座らせ、何を飲むかなどをしゃがんで聞いていらっしゃいました。

私はこの男性の女の子を思いやる言動があまりにも美しく壁に寄りかかったまま夢見心地で眺めておりましした。
すると下女の方が私にもテーブルで食事をとるようにと近寄り伝えてくださいました。私はたまげてしましました。三人前の食事の最後の一人前は私だったのです。
私は今まで一軒家に住んだこともなければ暖炉や蝋燭や下女がいるような家に住む人間とは無縁の生活を送って参りました。
私のような小汚い貧乏老人があのような美しい若者と一緒に食事を取ってもいいものか、と戸惑ってしまいました。
しかし私の心の中で「引け目」よりお二人に御近づきになってもっと間近でみたいという「興味」のほうが勝手しまい下女の仰られる通り私も食事に参加させていただく事にしたのです。

椅子に座り確信致しました。この家にある家具はそこらで売っているようなものでは無いと。
使っているフォークやナイフ、燭台、花瓶、すべての物が繊細で美しい細工が施され私のような素人が見ても国内で売っているものでは無いことも半端な値段ではないことも分かりました。私は恐縮してしまい先ほどいた部屋の隅に今すぐ戻りたくなっておりました。
そして何よりも恐縮してしまったのはお二人のお顔立ちでした。
部屋の隅から眺めさせて頂いた時からぼんやりと美しい端正なお顔立ちだと思っておりましたが、近くで拝見させて頂くと端正だなんて言葉では片付けられないようなお顔立ちでした
男性は彫りの深く切れ長な三白眼が傍から見ると冷淡に伺えてしまう程でした。体は引き締まり袖から覗く腕は筋肉質でしたがすらりと伸びている為か色が白い為か指が細く繊細な為か、筋肉特有のむさ苦しさは感じられず、映画の一描写のように優雅に肉を切っていらっしゃいました。
私は男性を拝見させて頂いただけでうっとりとしていたのですが、女の子を見た瞬間美しさのあまり驚いたり感動したりする前にギョッとしてしまいました。それは暴力的な美しさでした。私のような貧相な語彙力では小学生の読書感想文程の描写しか期待できませんが、精一杯書かせて頂きます。
彼女は初めボンネットを深く被っておりましたし、常に男性が傍にいらっしゃいましたから私からはしっかりとした顔をうかがう事が出来ませんでした。
しかし椅子に座り顔を合わせた瞬間美しさという概念に私は頭を強く殴られました。
腰まで垂らした真っ黒で艶やかな長い髪に囲われた真っ白な顔は恐ろしく整っていたのです。
桃色のサクランボのような小さな唇に細く先が上向きに尖った鼻、そして硝子玉のような紫色の瞳に言葉を失いました。
紫色の瞳など存在するのでしょうか。私は一瞬この子は本当は人形なのではないかと疑ってしまいましたが、真っ白な小さな手がフォークを不器用に動かすさまを見せられては人間だと信じるほかはありませんでした。

本日はここで終いとさせていただきます。
自分で情けなくなるほど体力がありません。本日はお二方の容姿の描写を書くので限界でした。
どうかご容赦くださいませ。