聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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143部分:第十七話 グランドキャニオンへその六
第十七話 グランドキャニオンへその六
そんな話をしながらさらに先に進むのだった。するとやがて。シュラが不意に立ち止まった。
「!?シュラ様」
「まさか」
「そう。そのまさかだ」
こう後ろの聖闘士達に言うのだった。シュラのその細い目がさらに鋭いものになっていた。今彼等は左手に崖を置いている。そこで立ち止まったのである。
「狂闘士がいるな」
「なっ、それでは遂に」
「闘いが!?」
聖闘士達はシュラの言葉に一斉に身構える。シュラもまたその右手を手刀にしている。敵はまだいないというのに一触即発の状況になろうとしていた。
そしてトレミーが。ここでシュラに対して問うのであった。
「で、シュラ様」
「うむ」
「その狂闘士は何処に?」
やはり彼もそのことが気になっているのだった。
「いるのですか。まさか」
「その崖ではない」
左手の崖については否定するのだった。
「そこではない」
「というと一体」
「何処に」
「目の前だ」
何とシュラはここでこう言うのであった。
「我々の目の前にいる」
「目の前!?」
「まさか」
「そう。そのまさかだ」
だがシュラは己の言葉を全くぶれさせることはなかった。
「そのまさかだ。目の前にいる」
「ですがシュラ様、我々の目には」
「狂闘士なぞ一人も」
彼等はその自分達の目の前を見てやはり何も見えはしないのでいぶかしむのだった。シュラの言葉を疑ってはいないがそれでもであった。
「しかしいるということは」
「それでは」
「そこだ」
言いながらその手刀を左から右に軽く一閃させたのだった。
「隠れても無駄だ。出て来い」
「ふふふ、確かに」
するとここで声が聞こえてきたのだった。
「流石は黄金聖闘士の一人カプリコーンのシュラというわけか」
「!?この声は」
「まさか」
「そう、そのまさかだ」
声は聖闘士達の言葉にも応えるのだった。不敵な笑みを含ませて。
「我が名はバド」
「バド!?」
「何者だ、貴様は」
「火軍団、伯爵にしてハルパスの狂闘士」
こう名乗ってきた。
「以後覚えておくことだ」
「狂闘士の一人が遂にか」
「我等の前に」
聖闘士達はその声を聞いて身も心もさらに身構えるのだった。しかしであった。
「だが。声はすれど」
「まだ姿を現わさないとはどういうことだ?」
彼等はまだそのバドが姿を現わさないことに気付いて言うのだった。
「ハルパスといったな」
「早く出て来い」
こう彼に対しても言う。
「まさか怖気付いたとでもいうのか?」
「アーレスに仕える狂闘士ともあろう者が」
「案ずることはない」
やはりバドの声だけが聞こえてくる。
「既にカプリコーンの目には私の姿は見えている」
「シュラ様には!?」
「それでは貴様はやはり」
「このシュラの目を誤魔化すことはできはしない」
シュラは冷静そのものの声で正面に対して言うのだった。
「今の手刀はほんの余興。次は手加減はしない」
「ふむ。噂に聞こえたカプリコーンのエクスカリバー」
声と共に聖闘士達の目の前で何かが出て来た。
「やはりその鋭さは侮れぬか」
「むっ!?出て来たか」
「そうか。それが貴様の姿か」
「如何にも」
赤黒く輝く戦衣を全身に纏った男がそこに現われたのだった。
黒く長い波がかった髪に細面の尖りきみの顔に大きいが切れ長の目をしている。その彼が今シュラ達の前に姿を現わしたのだった。
何よりも目立つのはその右手に持つ剣だった。戦衣と同じその剣は禍々しい光を放ちつつその巨大な姿を誇示しているのだった。
「私がここにいるのは何故だと思うか」
「それは最早言うまでもないことだな」
アステリオンが彼の言葉に応える。
「貴様等狂闘士が我々の前に現われる理由はな」
「それではだ。話は早い」
バドはその右手の剣をゆっくりと持ち上げてきた。そうしてまた言うのであった。
「ここで貴様等聖闘士達全員倒してみせよう」
「このシュラもだな」
「まずは貴様からだ」
シュラに対しても臆することなく言葉を返すのだった。
「カプリコーン。貴様を倒せばそれだけジーク様の御苦労も減る」
「あの男のか」
「八大公の方の御手をわすらわせることもない。私のこの剣でな」
構えながらさらに言うのだった。今アメリカにおける聖闘士と狂闘士の最初の戦いがはじまろうとしていた。双方互いに激しい小宇宙を燃え上がらせるのだった。
第十七話 完
2009・3・11
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