| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Three Roses

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十三話 旅立ちその十三

「この国の王になる、ロートリンゲン家の血を引くな」
「この国自体がロートリンゲン家のものになる」
「そうなっていきますね」
「だからこそですね」
「これからも動き」
「そしてロートリンゲン家のお子をもうける」
「そこまでされますね」
「その通りだ、我々がこの国に来た理由はだ」
 ロートリンゲン家の者としての言葉である。
「この国をロートリンゲン家の者達がすることだ」
「だからこそ」
「それ故にですね」
「この国に来た」
「その究極の狙いの為にだ」
 まさにというのだ。
「妃との間に子をもうけねばな」
「味方を増やすと共に」
「お子も必要ですね」
「では今宵も」
「勤めを果たされますか」
「そうする、だが妃は夜についてはどうもな」
 マイラのその一面についてもだ、太子は話した。
「弱い、信仰の深さ故にか」
「旧教も禁欲的ですし」
「姦淫は戒めています」
「その姦淫になるからですね」
「それで、ですね」
「お妃様はそうしたことに抵抗があるのですね」
「しかも身体もだ」
 マイラのそれはというと。
「今一つ強くないな」
「そういえば度々風邪をひかれていますね」
「少し身体が弱いですね」
「だからそのこともあって」
「夜は、ですか」
「勤めに消極的だ」
 王家の者達が果たすできそれにというのだ。
「残念なことにな」
「ではお子は、ですか」
「難しいですか」
「どうにも」
「そうかもな、だがだ」
 太子は生真面目な顔で述べた。
「私は必ずだ」
「お子をもうけられますね」
「お妃様に」
「そうされますね」
「その為に来たのだからな」
 だからこそというのだ。
「そうする、ではな」
「はい、それでは」
「お励み下さい」
「是非共」
「そうしよう」 
 太子はマイラの為に働いていた、だがそれは駒自分も含めて帝国のそれとして見てのことだった。そのうえで粛々と動いていた。
 マイラもその太子の動きをわかっていた、そのうえで言うのだった。
「あの人も」
 自分を、と言うのだった。そのうえでまた孤独を感じるのだった。それも深く。


第十三話   完


                          2016・6・13 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧