艦隊コレクション 天を眺め続けた駆逐艦
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第六海
「それは....」
口を閉ざすということは本当のことなのですね。
川上ちゃんが嘘をつくような子には見えないので、たぶん本当なんでしょう。
ということは綾川ちゃんたちは私たちに遭遇する以前にも、他の艦娘たちに会っていたということなるのです。
ではどうして彼女たちの存在が公にされなかったのでしょうか?
今では艦娘を運用する鎮守府はいくつもあるはずなのです。
「諜報機関及び独立行動権をもつ私たちを公にすることは当時の海軍への不信を広げる可能性があった。だからこそ隠密に済ますつもりだったんだろうな」
綾川ちゃんたちがばれることで起きるであろう事態が怖くて隠していたというのdすか?
それは、私たち艦娘が反乱を起こすのが怖かったからなのでしょうか?
「私たちが去った後でわかったことがあるわ。元海軍省艦娘艦隊総責任者は私たち艦娘から感情を消そうとしていたわ」
「そのあとそいつは姿を消した。‥‥‥‥いや、そうするしかなかったのだろうな」
前任の責任者の方は確かに私たち艦娘に対していい思いはしていなかったようです。
私たちに会っても目を背け、私たちが話し掛けるとあからさまな態度をとっていたのです。
「私たちは艦娘たちが平和に暮らせる世界があればいい。初めはそう思っていた」
「だからこそ海軍を裏切り失踪したのです」
艦娘を裁いていた私たちが言うのは何か違うかもしれませんが、私たちにだって目的があったのです。
でも仕方ない。
逃げ出した責任者を始末するためにも動いていたこともあった。
「今はそんなことより、これについて話しませんか?」
綾川ねぇには悪いけど話題を変えさせてもらうよ。
このままだといろいろばらしてしまいそうだからね。
私たちがよくても有間ねぇたちの目的を話してしまうと私たちは確実に処分されちゃうから。
執務室の重い雰囲気を変えようとする川上の言葉に耳を貸そうとする人は少なく、重大なことを話している綾川の言葉に耳が行ってしまっていた。
しかしそれは仕方がないことであり、誰も川上が悪いとも思っていなかった。
それに気づいたのか司令官が川上の顔色をうかがい始めていたのです。
「・・・そうだな。暗い話はこのあたりでやめて、川上の持つ設計図について話すか」
司令官の一言で綾川はすぐさま川上を見ると、そこには綾川が知らない設計図を川上は所持していた。
その設計図こそは湯川に関するものではなかったが、綾川をびっくりさせるにはいい材料だった。
設計図だからというのもあるのであろうが、暁型の改装設計図とは比べ物にならない量であったのだ。
「これはねえさんたちに黙って本部から盗んだものなの」
この量の設計図は普通であれば重巡洋艦以上のものであると推測されたのだが、川上が紙を一枚めっくってあらわれたのは『改有間型駆逐艦改装図』と書かれていた。
改有間型、つまりは綾川型のことを指している。
有間型の中でもかなりの改装を繰り返してきた綾川型はその先の改装はないものだと思われてきた。
そんななか、川上が提示した設計図はさらなる改装が記されていたのだ。
川上が持つ設計図を見た綾川は川上を見るのをやめて、反対を向いて執務室から出て行こうとした。
この設計図の存在は綾川たちにとってはいいことなのだが、綾川は改有間型というところに反応してしまったのだ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
満潮が止めにかかるがお構いなしに出ていく綾川。
入ってくるときも自由に入ってきて、出ていくときも自由に出ていく。
なんていうか子供である。
「川上ちゃん、どうして持ち出して来ちゃったのですか?」
設計図は本来、大本営が管理して、必要な際は各鎮守府に貸し出すシステムなのだが、それを無断で持ち出していることは、それだけで軍規違反なのである。
「でも、本物じゃないよ」
本物ではない?
細部までは見てなかったのですが、それでも大本営の印があると言うことはそういうことのはずです。
「少し話を聞いてくれる?」
これは今から一年半くらい前だったはず。
横須賀鎮守府近海海域において、戦艦ル級三隻との戦闘があった。
そのときは運が悪くも、主力艦隊が大平洋中央海域に攻撃を仕掛けているときであったため、横須賀鎮守府には予備艦数隻と修理中の艦しか残っていなかった。
そこで有間ねぇは仕方がなく出撃を指揮していたの。
第一艦隊は有間ねぇ率いる有間型駆逐艦四隻と鴻型水雷艇、そして第二艦隊は私が率いたんだよ。
その時綾川は、その戦いに参加できなかった。
私は綾川ねぇさん以外の改有間型を率いて戦闘海域に向かったらしい。
当初の予定では第一艦隊が正面にて、敵艦隊の注意を引き付けている間に、第二艦隊が後方に回り込み挟み撃ちにする予定だったのだが、有間ねぇたち第一艦隊は第二艦隊到着前に緊急離脱処置をとって海域を離脱したんだ。
その知らせを知らなかった第二艦隊はそのまま後方に侵攻。
でも、第二艦隊は第一艦隊が攻撃しているものだと勘違いし、敵艦隊に攻撃を開始したところ戦艦ル級に発見され集中砲火をくらい、艦隊の大部分は機関停止、航行不能になるほどの大打撃を受けたの。
でも滑沢ちゃんや銚子ちゃんたちは私の指揮を無視して突っ込んでいったの。
私たち第二艦隊を逃がすために。
私は前線指揮を滑沢ちゃんに移換して後退、帰投を開始した主力機動部隊に救援要請をしたんだけど、間に合わなかった。
横須賀鎮守府では伊58を含む潜水艦隊にて捜索を行いましたが発見には至りませんでした。
その結果翌日に横須賀鎮守府は艦娘査察隊第五査察隊旗艦駆逐艦滑沢及び同隊駆逐艦銚子の除籍を行い。登録を抹消。それに伴い第五査察隊は解散しました。
その後、鎮守府近海に新種の深海凄艦が出没しました。
強大な力を持つ彼女たちを私たちは新種の深海凄艦だと気が付くのに、そう時間はかかりませんでした。
その後も何回も近海に現れるようになったことから、横須賀軍令部は近海哨戒の強化に努めたのですが、狙われるのは輸送船団や遠征艦隊。
私たち監査隊も以上だと判断し、近海哨戒を何度も行ったのですが、会敵には至らなかったのです。
そんなある日でした。
呉鎮守府において姫級である『駆逐凄姫』が倒されたのは。
しかしただ倒しただけならば大きな話にはならなかっただろう。
戦闘終了後に同地点を通過した大湊輸送船団がその場に立ち尽くす艦娘を発見。
旗艦神風は復帰艦と判断し、呉まで連れて行ったそうです。
それを聞いたあやねぇは横須賀鎮守府司令部に艦隊編入を依頼し、私とあやねぇをそれぞれ第一輸送船団と近海哨戒艦隊に編入してくれたんだ。
それと同時に第一、第二査察隊は大湊警備府に向けて出港、第三査察隊は横須賀鎮守府の緊急査察を始めました。
私たちは長距離警戒および哨戒に徹していました。
そんなある日です。鎮守府近海に例の深海凄艦が現れていたのです。
哨戒艦隊旗艦綾波はすぐさま私たち第四査察隊を招集してくれました。
それに伴って私たちはあやねぇを旗艦に出撃、出撃していた橘型駆逐艦梨を緊急招集し、該当海域に進軍、敵艦隊の撃滅に向かいました。
しかし私たちは敵艦隊を壊滅させることはおろか、打撃を与えることもできなかったのです。
敵深海凄艦は私たちに砲撃してくる中、私たちは回避行動及び鹵獲作業に移っていたのです。
新種の深海凄艦。
それは私たちの妹である滑沢と銚子の深海堕ちした姿だったのです。
その後、梨による緊急打電を行い、鎮守府全艦娘に詳細報告を実施。
そのままD事案に認定を行った。
帰投後、第四査察隊に松型駆逐艦松を編入。
また、臨時の処置として、第八査察隊を編成。
旗艦を若竹型駆逐艦若竹に任せ、第四査察隊がつく予定であった任務にあたってもらいました。
同時期に駆逐艦吹雪が鉄底海峡にて轟沈の知らせが入ったため第二査察隊が調査を行ったものの、轟沈の形跡はなく、駆逐艦吹雪の行方は分からなくなった。
査察隊初ともいえるこの失態は、私たちを大きく変えていきました。
まさかの有間型からの深海堕ち、同型艦クラスでの戦闘においての敗北。
轟沈艦の発見もできない。
軍上層部は査察部隊総旗艦である有間ねぇを呉から呼び戻し、作戦指揮をとるように指示を出したのですが、姉妹と言うこともあり、拒否。
仕方がなく、横須賀鎮守府に駐屯していた第一調査隊の水雷艇鷺らに作戦指揮を命令。
鷺はこれを了承し、作戦指揮をおこないました。
翌日。鎮守府近海に湯川ねぇ率いる第三査察隊配備。同様に、第二調査隊を展開しました。
そして私たち第四査察隊は何度も出現しているポイント近くにて待機をしていました。
有間ねぇ率いる第一査察隊および、鷺が率いる第一調査隊はそれよりも離れた場所にて待機していました。
私たちはかなり虚しくなり、出来ることなら来てほしくないとねがっていました。
でも願いは簡単に打ち砕かれました。
接近するに辺り、次第に胸が苦しくなり、何処と無く帰りたい気持ちになってきたのです。
戦闘海域前についた私たちは‥‥‥‥
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