つま先立ちの恋に慣れたら
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夢②
【怜治(大学生)×奈々(大学生)です】
蝉が鳴き始め、じわじわと汗をかく季節になるころ。奈々は午前中の講義を受けるために大講義室へ入り席に着くと、大きくため息をついて机へ突っ伏した。
「おつかれ!・・・どうしたの?奈々~元気ないじゃん」
「お、おつかれえりちゃん!はは、なんでもない!気にしないで~」
奈々はなんとか笑顔を取りつくろってその場をごまかす。友人はなんとも不思議そうな顔をして、それ以上は何も言わず、隣の席について、その日は同じ講義を受けて、何事もなく帰宅した。
適当に通学かばんを置いて部屋着に着替えた後、そしてまた机に突っ伏す。そう、奈々はある悩みを抱えていた。
(また今日も見てしまった・・・・おかげで寝不足だよ~~)
ここ最近、毎日怜治とキスをする夢を見るのだ。いつも真夜中に目が覚め、その後は緊張して目が冴えてしまい、結局眠れない。こんなこと友人にも話せないし、ましてや怜治に話したら絶対にからかわれる。夢ばっかりは自分でもどうにもできない。しかも内容が毎回違い、刺激どころの話ではない。
(会いたいけど、まともに顔みれないかも・・・!)
こうして奈々は、一人悶々と悩むのであった。
「いらっしゃい、奈々」
「お、おじゃまします」
「・・・?」
怜治の休みの日に合わせ、2人は彼の家で過ごすことにした夕方のこと。奈々は玄関で会ったものの、やはり彼の目を見ることができずにいた。怜治は奈々の様子がおかしいことにすぐに気づく。
「あっ、これ差し入れです。すごくおいしかったから、一緒に食べたいと思って買ってきました!」
「ほんとう?ありがとう、冷蔵庫に入れておくから、あとで持ってくるよ」
「はい!」
怜治は奈々から差し入れを受け取り、冷蔵庫に入れる間、自分に思い当たる節がなく、疑問に思った。その後も一緒にご飯を食べ、適当に会話をしながらテレビを見たりしてくつろいでいるときも、やはり奈々はどこかぎこちなかった。ますますあやしくなり、お酒を飲んでいる途中、怜治は隣にいる彼女に問いただすことにした。
「最近、なにかあった?」
「へ!?べ、べつに、なにもないです。ふつうの日常です!」
「ふうん・・・」
「どうして?」
「目、合わせてくれないから」
「!」
あからさまにおどろき、奈々は下を向いた。お酒も入っていることもあってか、動揺が隠しきれてない。自分には話せないようなことがあるのかと怜治はもやもやし、少し苛立ちを覚える。
「俺には、話せない?」
「・・・・・・・・」
奈々はカクテルの入ったグラスを傾けた後、ゆっくりと怜治と顔を合わせた。彼女の頬はほんのりと赤く染まり、瞳は潤んで揺れている。すこし見つめ合った後、彼女はおもむろに口を開いた。
「毎日怜治さんにキス、されます。夢で」
「・・・え?」
「おかげで寝不足です」
彼女は吹っ切れたのか、今度はしっかりと目を合わせてきた。どうしてくれるのかと言いたげな顔である。色っぽい表情に、怜治は一瞬気を取られてしまう。
「・・・れいじさん?」
「夢って自分の願望をうつす鏡っていうよね」
「・・・・・・!」
「つまり、そういうことなのかな?」
「~~~~っ」
「ねえ、俺にどんな風にキスされるの?」
顔を近づけて尋ねてみると、口をへの字に曲げて、一向に口を割らない。奈々が話せるはずもない答えをあえて質問するのだから、我ながらいい性格をしていると怜治は思った。彼女から甘ったるい酒の香りがして、まるで煽られているようだ。自分も酔っているからなのか、いつもより自分の気持ちに我慢がきかない。
「・・・・・・・・」
「話せないようなこと、されたんだね」
「からかわないでくださいっ・・・・」
「・・・・じゃあ、現実の俺は、どんな風にキスすると思う?」
「・・・・・・知りません!」
「つれないなあ」
いつもよりからかい甲斐のある奈々の反応を見るのが楽しい。最初はゆっくりと唇を重ねるだけだったが、徐々に深いものへと変えていく。だんだんと息苦しくなったのか、背中にしがみついてくる奈々の手が愛おしくてたまらなくなる。普段ならここでやめるが、今日は気持ちが盛り上がってしまい、そのままソファへ押し倒してしまった。
「んん・・・・ちょ、はなして、れいじさ・・・・・やっ」
「今日はいつもよりキスしたい気分なんだ。誰のおかげだろうね?」
「っ・・・・・・ばか」
「なにか言った?」
「なんでもないです」
「俺も奈々に夢で会いたいよ」
「これ以上いじらないでください・・・・・!」
限界ですと言ったきり、奈々は疲れたのか、あきらめて抵抗しなくなった。頬にキスした後、その小さな体を抱きしめる。
「夢に出てこれなくなるのは残念だけど」
「いい加減寝させてくださいっ・・・・!」
「まだしたほうがいい?」
「いつ頼みましたか!?」
本気で嫌がらないと やめてあげない
(嬉しいの、顔に出てるよ。言わないけど)
お題元:確かに恋だった 様
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