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真田十勇士

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巻ノ五十六 関東攻めその二

 まずは二人で酒を酌み交わしてだ、生きて再び会えたことを喜んだ。お互いの家臣達もその場にいて共に飲んでいる。
 その場でだ、幸村は兄に言った。
「この度の戦でもです」
「その者達がだな」
「はい」
 十勇士を見た兄に答える。
「存分に戦ってくれてです」
「北条の軍勢を乱してくれたか」
「はい」 
 まさにというのだ。
「そうしてくれました」
「そうか、それは何よりだな」
「はい、よく働いてくれます」
「そして城の者達も救ってくれたか」
「左様です」
 まさにというのだ。
「そうしてくれました」
「それは何よりじゃな」
「はい、ですからこの者達はです」
「戦の後でじゃな」
「褒美を弾んで下さい」
「いやいや、我等はです」
 その十勇士達は笑ってだ、こう言った。
「褒美は特にいりませぬ」
「今のままで充分です」
「殿と共にいられればです」
「それで何よりです」
「ふむ、相変わらず欲がないのう」
 信之は十勇士達のその言葉を聞いて言った。
「御主達は」
「殿が一緒であれば」
「もうそれで充分です」
「ですからもうです」
「何もいりませぬ」
「そうか、しかしこのことは父上にお話しておく」
 十勇士の武勲はというのだ。
「そうしておくぞ」
「そうして頂ければ何よりです」
 幸村は兄の言葉に微笑んで応えた。
「ではその様に」
「それではな」
 信之も頷く、そして。
 二人で飲みはじめた、その時にだ。
 信之は十勇士達の飲みっぷりを見てだ、笑って言った。
「相変わらずよく飲むのう」
「はい、やはりです」
「酒はいいですな」
「幾らでも飲めます」
「実にいいです」
「酒は飲むべきじゃ」
 まさにというのだ。
「飲めるだけな、ましてや勝った後はな」
「こうしてですな」
「勝利の美酒を楽しむ」
「そうすべきですな」
「そうじゃ、心おきなく飲もうぞ」
 今宵はというのだ。
「こうしてな、そしてな」
「そうですな、しかし兄上」
 幸村も飲みつつ言う。
「この城は酒が多くありますな」
「酒を切らすとな」
「兵達も困るからですな」
「そうじゃ、だから酒は多く用意していてじゃ」
 そしてというのだ。
「米も他のものもな」
「多く用意していますか」
「最初からな、籠城のことを考えてな」
「ですな、備えなくしてです」
「戦えぬわ」 
 伸行は飲みつつ笑って言う。
「酒も然りじゃ」
「その通りですな」
「しかもこの度は敵が来るのがもうわかっておった」
 前々からというのだ、北条家が自分達のかつての領地である沼田を取り戻そうとしているのは明らかだったからだ。 
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