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百人一首

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99部分:第九十九首


第九十九首

第九十九首  後鳥羽院
 この世のことを思うと。この世のことを考えると気付くことがある。
 この世に対して尽くしてくれる人がいる。そういう人がいてくれる。
 けれど。それだからこそ。そうして尽くしてくれる人がいるのと共に裏切る人がいる。
 そして愛しい人がいるからこそ憎い人もいる。尽くしてくれる人がいるのとは逆に裏切る人がいるのと同じで。愛しい人がいるからこそ憎い人もいる。
 この二つは反するようで同じで。いつも一緒になっている。
 これが世の中というものだろうか。不本意な世である。気付いてはいたのだけれど。
 この世を何とかしたいとは思っている。しかしそれは思うようにはいかないもので。何かをしようとしてもできず。ただ不遇でいるばかり。
 その不遇を思っていると言葉が出て来た。言葉は歌となって形になっていく。それがこの歌だ。

人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆえに もの思ふ身は

 悩みの中で詠う歌はやはり憂いのあるもの。この憂いを読んでみてまた憂いに耽る。
 憂いは消えることなく続いていく。それは何処まで続いていくのかさえわかりはしない。けれど思わずにはいられない。これこそが憂いの源なのだとはわかっているが。それでも止められないのだ。


第九十九首   完


                 2009・4・14
 
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