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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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5games

 
前書き
57巻のあとがきで真島先生自分で『死ぬ死ぬ詐欺』って言っちゃってるし(笑)
個人的にはそんなの気にしないけどね。逆に最後まで誰も死なない展開を貫いてほしいとか思い始めてる。 

 
ソフィアとのケンカが無事に終了・・・いや、とある事情にて終わらせざるを得なかった。その理由は、現在の俺の姿にある。

「シリル、大丈夫?」
「寒くない?」

体育座りしている俺の顔を覗き込むように声をかけてくれるのは、天竜と天神。彼女たちは今の俺の精神上体を察して、優しい言葉をかけてくれているのだ。

「うん・・・大丈夫・・・」

それに対してひきつった笑顔で返答する。本当は全然大丈夫じゃない・・・もう泣き崩れていいならどこぞの虎のマスターみたいに号泣したいけど、さすがにみんなの前でそれをするのは気が引けるのでやめておく。

「レオンがもうすぐ戻ってくるはずだから」
「それまではそれで我慢してね」

俺がこんなにうちひしがれている理由・・・それは、ソフィアに完敗してしまい、服を全部奪われてしまったからだ。辛うじて下着は守り抜くことが出来たんだけど、他は全部彼女に持っていかれてしまった。しかもあいつ、あろうことか全部に水ぶっかけやがったから、奪い返して着直すことができなくなってしまった。

「シリル、可愛いよ、その格好」

笑いを堪えながらそういうのは今回の一件の主犯である少女。彼女は大きなタオルを被って路地裏で体育座りしている姿を、あらゆる角度から覗きこんでは嬉しそうに頬を緩ませていた。

「ソフィア嫌い・・・大っ嫌い」

膝に顔を埋めるようにうつ向ける。大通りからは大きく離れていたけど、それでも通行人がたくさんいた。そんな場所でこんな少女になす統べなく完敗するなんて・・・恥ずかしくて仕方がない。

「恥ずかしいのはそれだけじゃないでしょ?」

すぐにでもこのムカつく面をぶん殴ってやりたい。ただ、それをやると下着が見えてソフィアに弄られてしまうからやめておく。
こいつに頭を踏まれたり服脱がされたり・・・なぜ勝てないのだろうか?相性か?相性なのか?

「お~い!!シリル!!」

歯軋りをさせて変態娘を睨み付けていると、遠くから待ちわびていた少年の声が聞こえてくる。それを聞いたシェリアは、彼を呼び寄せようと路地裏から通りの方へと駆けていく。

「ソフィアに負けて服脱がされたシリルぅ!!どこだぁ!!」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

彼の幼馴染みの天神が姿を見せるよりも先に、大声で恥ずかしい事実を街の人に聞こえるように叫ぶレオンに思わず発狂する。なんてこと叫びやがるんだあの野郎は!!

「レオン!!こっちこっち」
「おっ」

その直後、建物の間から顔だけを覗かせ少年を手招きするシェリア。それに気付いた彼は、小走りに俺たちが隠れている通路へとやってくる。

「シリル、生きてるか?」

うずくまっている姿を見て笑い半分、哀れみ半分といった表情でやって来る氷の神。その気持ちはよくわかる。俺もこいつが同じ目にあっていたら間違いなくそんな顔になる。でも、少しくらい心配してくれてもいいんじゃないかな?

「ほれ、服」
「ありがと・・・」

ソフィアに水浸しにされた服を持って帰ってもらったついでに新たな服を持ってきてもらった。彼が選択したのは赤いポロシャツに黒のジーンズ。よかった・・・変なものを持ってこられないか心配だったけど、その辺はレオンもちゃんとわかっていたようだ。

レオンが持ってきてくれた服を着るために立ち上がり、羽織っていたタオルを脱ごうとした。しかし、なぜかその瞬間、少女たちがこちらをまじまじと見ていることに気が付き、脱ぐのをやめる。

「ねぇ・・・三人とも向こう向いてて」

別にパンツまで脱ぐわけじゃないから見られてても問題ないけど、あまりにも熱視線過ぎて脱ぐのを躊躇ってしまう。ソフィアが一番ガン見してるかと思うと、実は幼馴染みの少女が一番食い入るように見てるから、さらに気恥ずかしさが込み上げてくる。

「えぇ!?別に気にしないでしょ?」
「いいじゃん!!減るもんじゃないし」
「そ・・・そんなに見てはいないよ/////」

なぜか反論してくるシェリアとソフィア。ウェンディは手で顔を覆うようにしているが、指の隙間からこちらを見ている目と視線があってしまい、さらに気まずい雰囲気になってくる。

「はいはい、女の子なんだから自重して」

このままではいつまで経っても終わらないと判断したレオンが、三人の首にうでを回して無理矢理後ろを向かせる。それを確認してから、振り向く前にとせっせと着替えを始めたのだった。




















それからしばらくして、無事に着替え終わった俺とウェンディたちは、そろそろいい頃合いだったこともあり、決勝戦の会場である広場へと向かっている。

「しかし、番狂わせなんか全然起きなかったな」

頭の後ろで手を組みながら、共に先頭を歩いていた少年が残念そうに呟く。

「二回戦も圧勝だったみたいだね、リオンさんたち」

俺たちよりも早く決勝へと駒を進めていた人魚の鱗(マーメイドスケイル)。一回戦も軽く勝ったような印象を与えていた彼らに、どこまで通用するのだろうか?

「そういえばソフィアとレオンは、カグラさんとリオンさんに目つけられてたもんね」
「大変だね、二人とも」

後ろを歩いているウェンディが、開会式でのカグラさんたちの言葉を思い出し、標的とされている二人にそう言う。レオンは最近調子に乗ってるし、ソフィアは変態だし、ギルドの中心人物である二人からすれば、一度叩いて落ち着けておきたいところなのであろう。

「ソフィアはカグラさんと遊べれば何でも」

ただ、そんなものでこの少女が小さくなるはずがない。彼女は例えカグラさんに完膚なきまでに叩きのめされようと、彼女さえ辱しめればそれで収支をプラスにできると考えているのだろう。

「じゃあ俺はリオンくんとはやり合わない方向で」
「「「「ここに来て逃げ腰!?」」」」

ソフィア同様にターゲットと化しているレオンはどうなのかと思っていると、彼はここに来て自信がなくなったのか、自分を目の敵にしている彼から逃げる方向で考えているようだ。

「だってここでリオンくん倒したらお小遣いもらえなくなるかもしれないし」
「お小遣いなんかもらってるんだ・・・」

こいつも稼ぎは十分なはずなのに、従兄弟であるリオンさんからお小遣いなんかもらってるレオンを白い目で見る。別に悪いことではないけど、遠慮というものはないのだろうか?

「あ!!もう向こう揃ってるじゃん」

目的地が見えてくると、そこには周囲を観戦のために囲っている観客たちと、中央にすでに全メンバーが揃っている対戦相手の姿が見えた。

「遅いぞ、お前たち」

待ちくたびれたといった表情のカグラさんがそう言う。広場にある時計を見てみると、時刻は丁度決勝戦開始を指していたので、その反応も当然なのかもしれない。ソフィアが服をあんなことにしなければ、こんなに遅くなることもなかったのに・・・

『定刻となりましたので、これより791年マーガレット祭ゲームトーナメント!!決勝戦を執り行います!!』

司会のその声と共に会場が歓声に包まれていく。今日一日はお祭りだから、みんなテンションが高い。蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に来てからここまで盛り上がったのは初めてなんじゃないだろうか?

『今年の決勝戦のゲームは《5games》です!!』

恒例の魔水晶(ラクリマ)ビジョンに映し出される勝負種目。だが、今回の競技は今まで以上に予想がつかない。五つのゲームがあるってことなのだろうか?今までは一つしかやってなかったけど、決勝戦は盛り上げるために特別仕様になっているのかもしれない。

『この決勝戦は名前の通り、五つの競技を行っていただきます。五つの競技のうち、先に三勝したチームが優勝となります!!』

このゲームもおおよそ名前から連想することができるものだった。分かりやすくてありがたいなと一人頷いていると、司会者から続きが述べられる。

『この《5games》はプレイヤーとサブに別れて行います。例を出してみますと・・・』

ビジョンの映像が切り替わり、画面にゲーム名を表示する場所と、その下にplayerとsubという五つの枠が表示される。

『ゲームが決まりますと、各チームには誰がプレイヤーとなりゲームを行うのかを選択していただきます。一度決定しますと変更できないので注意してください』

お試しにといった感じに小さき魔術師(リトルマジシャンズ)のplayerにレオン、人魚の鱗(マーメイドスケイル)にカグラさんの名前が表示され、その下のsubの部分には各チームの残りのメンバー名が映し出されていた。

「なんで分ける必要があるんだ?」

手を上げて素朴な疑問を投げ掛けるのは銀髪の青年。それに対し、司会者は待っていましたという風に楽しそうに答える。

『各ゲームは一人が勝敗の重要な役割を担うものになっています。他の選手にはそのプレイヤーが勝利できるようにとサポートをしてもらう仕様になっています』

要約すると、一つの種目に一人ずつ選出して相手と戦う。ただし、単純な団体戦とは異なり他の人もそれなりに参加できるようになっているってことかな?

「プレイヤーは毎回同じでもいいの?」
『いいえ、各選手プレイヤーになる権利は一度だけです。さらに、ゲーム名は開始の直前に発表しますので、慎重に選ぶ必要があります』

続いてシェリアが質問をしてみる。5gamesだからおおよそ予想はしてたけど、ゲームの発表がギリギリまでわからないとなると、適任だと判断してプレイヤーを選ぶと次の種目の方がよかったとなるかもしれない。そこは運任せなんだろうけど・・・今日はツイてないから嫌なことが起こりそう・・・

「はいはい!!質問シツモン!!」
『どうぞ』

元気に手を上げて自分の存在をアピールしているのは銀髪の人魚。彼女は指名されると、みんなが気にしていなかった重要な点を確認する。

「決勝は魔法の使用はどうなってるの?」

一回戦では特に指定されることがなかったため、知らないフリして使っていた魔法。二回戦はそれを踏まえて魔法の使用制限がされていたが、決勝戦は両チームともに魔導士のみで構成されているチーム。魔法を自由に使っても、条件は五分と五分だと思う。

『魔法の使用は各ゲームによって異なります。ルール説明時に共に説明させていただきます』

魔法が優位に働く時とそうじゃない時の差はあるだろう。できることなら、使用可能な方が俺に有利なんだけどなぁ・・・

『他に質問はございませんか?』

周りに視線を配ると、他の人たちも特に今は聞いておくこともないようで、首を横に振るなり何もせずただ、次の説明を待つなりして意思表示をしていた。

『それでは!!1stゲームに入ります!!最初のゲームは・・・』

ビジョンの脇にセットされたボタンを勢いよく叩くと、魔水晶(ラクリマ)ビジョンのゲーム欄が激しく動き出す。そして頃合いを見てもう一度ボタンを押すと、あるゲームの名前を映し、ビジョンが止まった。

『共感度ゲーム!!』
「「「「「・・・??」」」」」

ついに発表された決勝戦の最初のゲーム。しかし、そのゲームに全員の表情が固まる。その理由は、今までの競技以上に趣旨を理解できないゲームだったからだ。

『それでは最初に説明した通り、各チームはプレイヤーを一名選んでください』
「「「「!?」」」」

競技の発表で驚かされた俺たちだったが、それだけでは終わらない。またしても運営側は俺たちの推測を越えてきた。

「え・・・事前説明は?」
「まさかこの名前から競技を予想しろってこと?」

てっきり事前にルールが説明され、それからプレイヤーの選出だと思い込んでいた。しかし、その予想に反して、プレイヤーを選んでからルール説明を行うらしい。

「慌てるな、条件は向こうも同じだ」
「だね。今はそれよりも大事なことがあるよね」

慌てる天空の竜と神とは正反対に、冷静さを保っていたレオンと俺がそう言う。

「このゲームがどんなゲームか・・・」

顎に手を当ててさっそく思考しているソフィア。俺たちも彼女と同様に、どんなゲームなのかを推測していく。

「共感はわかるけど・・・」
「度って何?度って」

相手の考えに賛同することが共感なんだけど、共感度というと話は変わってくる・・・のかもしれない。もしかしたら何も変わりがないかもしれないけど、それをこの場で判断することは不可能だ。

「とりあえず・・・誰が行くかを決めないといけないか」

ゲームの予想はこれ以上しても無意味、そう思ったレオンが話を切り替える。でも、立候補する人物は誰もいない。なぜなら、これが誰が適任なのか、全く予測ができていないから。

「どうする?」
「誰が行けばいいのかな?」

ウェンディと顔を見合わせて話し合いを行う。共感度ゲーム・・・どんなゲームなんだ?

「ここは《共感》ってところだけで判断して、この中で一番共感できるメンバーに行ってもらえばいいんじゃない?」

スゥッと手を上げて提案をしたのはこの中で日頃の行いに一切共感を持つことができない変態娘。でも、彼女の言うことももっともだと思う。ただ、何に共感できるかによって条件が変わってくるのが難点ではあるけど。
なら一番まともな人材を選ぶのがいいかな?となると・・・

「私はシェリアがいいと思う!!みんなのことわかってそうだし」
「あたし!?」
「俺もシェリアが一番適任だと思う」

この五人の中で・・・いや、俺の知っている人の中では間違いなくまともな分類に入るのはシェリアだ。ウェンディもまともだとは思うけど、時々おかしなことをするときがあるし、シェリアが一番大丈夫だろう。レオンとソフィア?ムリムリ、論外だよ論外。

「ソフィアは変態だし」
「レオンはアホだし」
「シリルは自分の性別もわかってないし」

ガッ

レオンがソフィアを俺がレオンを、そしてソフィアが俺をディスるのと同時に相手の胸ぐらに手を伸ばす。三人ともこいつに言われるのは不本意だと思い、怒りの感情を露にしていた。

「三人とも、落ち着いて」
「みんな正しいこと言ってるから」
「「「お前もずいぶん失礼だな!!」」」

落ち着けようとしているシェリアとさらっと失礼な言葉を送ってくるウェンディ。それにはさすがに俺たちも怒ったけど、周りもそう思っているのだと考えるとちょっとショックを受け、肩を落とした。

「えっと・・・あたしが一番手でいいんだよね?」
「うん!!頑張ってね!!」

俺たちがうつ向いているのを見て、気まずくなってきたシェリアはこの場を離れるべく確認すると、そそくさと前の方へと歩いていく。

「ほら、三人とも始まっちゃうよ」
「あ・・・うん」
「そうだね」
「了解」

ウェンディのせいでこうなっているんだけど、それは言わないでおく。納得できないながらもゆっくりと立ち上がり、両チームのプレイヤーが出ている前の方を向く。

「相手はトビーさん?」
「あえての?」

シェリアと共に前に出ているのは同じラミアのトビーさん。共感度ゲームというからには常識人のユウカさんとかを出すと思っていたけど、それとは正反対のトビーさんを投入してくることに疑問を感じていた。

『それでは!!決勝戦第一試合《共感度ゲーム》を開始します!!』

メンバーが出揃ったことで開始される共感度ゲーム。さてさて、一体どんなゲームなのだろうか。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ファーストゲームはシェリアvs.トビーのなかなかに異色な対決です。
うまくできるかな? 
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