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Three Roses

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第十二話 孤独の者その九

 だがマイラはその彼等にだ、こう言うのだった。
「何かあればお願いします」
「はい、では」
「宜しくお願いします」
「それではです」
「何かあってもです」
「ご安心下さい」
「では今はです」
 穏やかな顔のまま言う彼等だった、だが。
 ここでだ、マイラは彼等にこうも言った。
「では今は」
「今は?」
「今はといいいますと」
「何かありますか」
「下がって下さい」
 表情はなかった、そのうえでの言葉だった。
「そうされて下さい」
「マイラ様の下からですか」
「下れと」
「そう言われますか」
「何もないので」
 言うことがというのだ。
「ですから」
「だからですか」
「それが為にですか」
「そうです、下がって下さい」
 マイラは無表情のまま彼等に告げ続けだった、そのうえで。
 オズバルト公達を下がらせた、そして。
 常に傍らにいた司教にだ、二人だけになった時に言った。
「あの方々は本心ではです」
「マイラ様にですか」
「忠誠を誓っていません」
 冷めた目での言葉だった。
「私を担いでいるだけです」
「ただ、ですね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「あの方々もまた」
「そう言われますか」
「私の臣になってくれても」
 それでもというのだ。
「心からの忠誠ではありません」
「マイラ様が王家の方だからこそ」
「そして旧教だからです」
「それで、ですね」
「そうです、所詮はです」
 マイラ、彼女自身はというのだ。
「私は神輿です、そして」
「そのうえで、ですね」
「私を次の王にと考えているのでしょう」
「女王に」
「女王になれば」
 遠い目でだ、こうも言ったマイラだった。
「この国は私が正しい世界に戻せますね」
「はい」
 その通りだとだ、司教は重厚な声で答えた。
「そうなります」
「旧教の教えの下に」
「そうなります」
「では」
「はい、そうされますか」
「そうしたいです、ですが」
「それでもですか」
「私がそうしてもです」
 遠い達観した目での言葉だった。
「あの方々は本心から忠誠を誓っておらず、そして」
「そしてとは」
「夫もです」
 太子、彼もというのだ。 
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