Three Roses
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第十二話 孤独の者その七
「力を失っていきます」
「その流れを変える為にも」
「そうです」
まさにというのだ。
「私は今ここにいるのです」
「そうですか、しかしです」
「太子にとってですか」
「貴方達と共にいてです」
それによってというのだ。
「何があるのか」
「それが問題ですか」
「若しもです」
太子はさらに言った。
「貴方達と共にいて私がおかしく見られる」
「そうしたことはですか」
「私はいいですが」
「周りの方々がですか」
「迷惑をするのではと思いまして」
「それはないです」
オズバルト公ははっきりと答えた。
「我々と共にいても」
「それは何故でしょうか」
「私達はマイラ様の家臣です」
それ故にというのだ。
「マイラ様に全てを捧げています」
「だからというのですね」
「そうです、私達はマイラ様に忠誠を誓っていますので」
「妃と共にいても」
「おかしいと思われることは心外です」
「同じ旧教徒として」
「そうです」
まさにというのだ。
「旧教徒同士ではないですか、それに」
「妃にですね」
「二心はありません」
少なくともマイラを害することはないというのだ、何しろマイラは彼等にとって唯一にして最大の神輿なのだから。
「ですから」
「我々もですね」
「ご安心下さい」
「では」
「共にいて宜しいでしょうか」
「はい」
太子は微笑んで答えた。
「それでは共にです」
「マイラ様の為にですね」
「尽力しましょう」
「それでは」
「これからはですね」
「共に」
こう話してだ、そしてだった。
二人は手を結び合った、もっと言えばロートリンゲン家とこの国の旧教の諸侯達がだ。この盟約を誓う時に。
オズバルト公は血の盟約を交えようとした、だが。
その彼にだ、太子は穏やかな声で言った。
「血と血をこれよりですね」
「はい、交えてです」
「それを飲む」
「その盟約ですが」
「わかりました」
内心帝国のワインを飲み合うそれではないことに拒絶反応を覚えたがだ、太子はそれを隠してオズバルト公に応えた。
「それではこれから」
「盟約を誓いましょう」
「そうしましょう」
太子も己の血を出しオズバルト公の血と交えそれを飲んだ、それが終わってだった。
太子はオズバルト公を宴に誘い公爵も応えてだった。彼等は盟約をさらに誓い合った。
その宴の次の日だ、オズバルト公は同志達に確かな声でこう言った。
「ご安心下さい」
「太子、ひいてはロートリンゲン家とですね」
「盟約を結べた」
「そうなのですね」
「はい、無事に」
このことを伝えるのだった。
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