百人一首
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89部分:第八十九首
第八十九首
第八十九首 式子内親王
そうなってしまえ。そうなってしまって欲しい。もうこうなったら。
糸がそのままぷつりと切れてしまうように。玉の命も散ってしまうように。
何もかもが終わって欲しい。全てが終わって何もなくなって欲しい。
こう思わずにいられない。そうして何もかもが嫌になってそれが壊れて何もかもがなくなってしまえばいい。そう思うようになってしまった。
若しもこの先生きているのなら。これからも生きているのなら。
この心の奥に秘めているこの気持ちを。誰にも言えない、誰からも許されない。この禁じられた恋の気持ちを。
誰にも隠しておくことはできないだろう。誰にも言えない、誰にも許されないものだけれどそれでも。生きているのならこの気持ちを隠しておくことはできない。
だからこそ今思う。何もかもが消えて欲しいと。この隠せなくなってきている禁じられた恋への気持ちを。だから今こうしてせめてと思い歌に託した。
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
歌に託したらせめてこの苦しみといたたまれなさは消えると思っていたけれど。そうなってくれるとばかり思っていたけれど。それは適わないことだった。
心はさらに辛くなりどうにもならなくなってしまう。散り散りになって欲しい。消えて欲しい。この気持ちは増すばかり。自分ではどうにもならず苦しみを続ける。ただただひたすら。
第八十九首 完
2009・4・4
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