魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Eipic10-C機械仕掛けの少女~Devilish Trap~
前書き
Fate/EXTELLAやってます。ネロは相変わらず可愛い。だが、無双系のゲーム、どうやら私には合わないようです。
ミッドチルダ地上本部。ミッドチルダの地上部隊の本部という意味ではなく、いくつもの管理世界に設けられている全ての地上部隊の本部という意味である。中央にそびえる超高層タワーは雲を突き抜けるほどの高さで、周囲に建っている高層タワーも中央タワーに比べれば低いが、それでも市街地に乱立しているビルに比べれば遥かに高い。
「一体何の騒ぎだこれは、オーリス!」
その地上本部の中央タワー最上階に設けられている展望室に1組の男女が居た。ソファーに腰かけている、まるで熊のような巨漢がそう声を荒げた。彼の名はレジアス・ゲイズ。階級は中将で首都防衛隊の代表であり防衛長官である。地上本部長ではないにしてもその実権の多くを握っているため、事実上の地上本部の総司令官とされる。
「本局の遺失物管理部・機動六課、および捜査協力中の部隊の戦闘、そのリアルタイムの映像です」
レジアスの腰掛けるソファの側に控えている眼鏡を掛けたキャリアウーマンと呼ぶに相応しいキリッとした女性がそう報告した。彼女はレジアスの秘書官オーリス・ゲイズ。ファミリーネームから判る通りレジアスの実の娘である。
そんな彼女は展開したモニターに映し出されているのは、海上で “シームルグ”とガジェットドローンⅡ型を殲滅している六課のシグナム、108部隊のアリサ、教会騎士団のイリス、アルテルミナス、トリシュタン、クラリスである。
「アレは・・・シームルグか・・・! チッ、この騒ぎの元凶はやはりプライソンか・・・!」
レジアスが戦闘機“シームルグ”を見て強く握り拳を作った。彼自身が最も嫌い、憎悪する犯罪者であるプライソンと、彼はある目的の為に繋がりを持っている。犯罪を嫌いながらも自らが犯罪を行っているという矛盾を抱えた男だ。抱く思いは地上の平和の為。しかし究極的にはプライソンと変わりなく犯罪者だ。
「オーリス、機動六課の部隊長と後見人は?」
オーリスに訊ねるレジアスに、彼女はモニターの映像を切り替えて後見人のクロノ、リンディ、カリム、そして部隊長のはやてのバストアップ画像を表示し、その名前と役職名を伝えた。レジアスはリンディとクロノを見て「英雄気取りの青二才どもが・・・!」と吐き捨てた。彼にとって次元航行部所属、そして若いと言うだけで嫌悪の対象なのだ。
「部隊長は本局捜査部・特別技能捜査課、八神はやて二等陸佐」
「ヤガミ・・・? っ! 闇の書事件の被疑者の八神はやてか! で、監査官は誰だ?」
「はい。・・・ルシリオン・セインテスト調査官となっております。最高評議会とリアンシェルト総部長からの指令のようです」
「よりによってあの重犯罪者を調査官に据えただと!? 八神はやてについてもそうだ! 過去に犯した罪は消えん! 今も変わらず犯罪者だ!」
「問題発言です。公式の場では控えてください。でなければ、エンツォ次官のように辞職に追い込まれてしまうかもしれません」
オーリスが後見人枠の画像から監査役を務めるルシリオンの画像へと切り替えると、レジアスがそう声を荒げる。するとオーリスが例を出してそれを窘めた。エンツォは地上本部の防衛次官だった男で、レジアスの示す正義に感化されていた部下だった。
だからこそ犯罪者を徹底的に憎み、使えない局員をも蔑ろにする。その結果、4年前のある事件解決の記者会見の場で、ティーダ・ランスターの殉職に関連する暴言を吐き、世論に徹底的に叩かれ、当時のルシリオンの手によって後ろ暗い事を公の場に晒され、最後は辞職に追い込まれた。その事実を知るのは最高評議会の3名とリアンシェルトだけだ。
「判っておる! しかしセインテストだと・・・! あの若造を放っておけばいずれ・・・!」
プライソンとレジアスの関係は、最高評議会どころか管理局の暗部である権威の円卓の誰もが知っており、プライソンの頭脳を利用しているのもレジアスだけではない。レジアスは、権威の円卓の正式メンバーではないルシリオンはそれを知らない、と思っている。だからと言って安堵は出来ない。
何故ならレジアスは、ルシリオンがあまりに優秀だということを心の奥底では理解しているからだ。犯罪者ではなく真っ当な局員であったなら、自分の右腕として置きたい、と考えるほどの。ゆえにこそ恐れている。その情報収集能力の高さを、調査官としての立場を、それを用いて自分がプライソンと繋がっている事実に辿り着くのを。
「プライソンが万が一にでも捕まってしまってはワシは・・・!」
レジアスは、優秀な魔導師を次元航行部を有する本局に取られてしまうのがどうしても許せなかった。地上とて常に犯罪が横行しており、絶対的に魔導師という戦力が足りていない。だからこそレジアスは本局を嫌っているのだ。地上を蔑ろにしている本局を、次元航行部を。
そのため彼は、プライソンに依頼したのだ。魔導師に頼らない武力が欲しい、と。その結果、プライソンはその依頼通りに数々の戦術級、戦略級の兵器群を生み出した。列車砲、装甲列車、戦闘機、人造魔導師、機人、さらには・・・。
「機動六課の戦力と、協力部隊の戦力は!?」
「こちらになります」
さらに画像を切り変わり、六課や協力部隊における戦力が表示された。六課のスタッフはどれも新人ばかりでそれだけを見れば、1年間限定の試験部隊、何か問題があれば尻尾切りのように切り捨てられ易い部隊と考えるだろう。
「このふざけた戦力はなんだ・・・!」
しかしその抱えてる魔導師のランクが尋常ではないことにレジアスは気付いた。さらに協力している部隊が抱えている魔導師を見てさらに驚いた。陸戦AAAのアリサ、陸戦SSのイリス。イリスの従える騎士隊員の大半はAA~AAA-相当ばかり。特務機動隊クラスの戦力が、プライソン逮捕の為に動いている。
「プライソンを潰せるに十分な戦力ではないか! 最高評議会もこの件には同意をしていたはずだ! 何故、今になってプライソンを潰すような真似を!」
「・・・如何なさいますか?」
「機動六課の運営をオーリス、お前が直に査察してこい! 何としても問題点、粗を探してくるのだ! 機動六課を解散に追い込めるほどの!」
レジアスが至った最悪のシナリオの回避策、それは機動六課を解散させることだった。しかし「無理です。セインテスト調査官が特務として常駐しています」オーリスが首を横に振った。
「ご存知でしょうが調査官は内務調査部内で最も権力があり、セインテスト調査官が不要と断じれば他の査察官や監察官、監査官でも干渉できません」
「調査官歴1年に満たん若造だろう! あの若造と八神はやては家族と言うではないか! 情に流され何かしらの不正を行っているやもしれん! それを調査部長に進言すれば、お前が割り込むことも出来るだろう!」
レジアスの大声に僅かながらにしかめっ面をしたオーリスだったが「試してみます」簡潔にそう答えた。
†††SideリインフォースⅡ†††
地下水路での“レリック”の争奪戦をなんとか勝利で収めたリイン達は、地下と地上を繋ぐ縦穴を通って再び日の当たる地上へと戻って来たです。そして今、地上に戻って来たことで回復した通信を使って、はやてちゃん達ロングアーチに地下で起きたことの報告、そして行方不明の子供の捜索を近隣の陸士部隊への要請を申請中です。
『子供の捜索については了解や。こちらで要請しとく。・・・そやけどまさか、クイント准陸尉とメガーヌ准陸尉が生きとって、ルーテシアとリヴィアも捕まってて、揃って洗脳されてるなんてな・・・』
「クイント准陸尉から実際に聞いたから間違いないと思う」
『プライソンの非道っぷりは前々から知ってたけど・・・。それで、スバルとギンガの様子はどないや?』
リインとヴィータちゃんは、1ヵ所に集まってるフォワードとギンガを見るです。みんなのバリアジャケットはボロボロで、どれだけの猛攻を受けたか簡単に想像がつくです。で、スバルとギンガは思いの外に気落ちしてなくて、スバルは「次こそは・・・!」と、ギンガは「母さん、待っていてください」と、次のクイント准陸尉とのエンゲージに向けて意気込んでるです。
『大丈夫なようやね。ほんならヴィータ達はもうしばらくそこで待機してもらっててもええか? そうやなぁ・・・。近くにハイウェイが通ってるやろ。そこにヘリを降ろすから、そこで待機や』
「了解。おい、お前ら。ハイウェイの上に移動すんぞ」
「「「「「了解!」」」」」
はやてちゃんの指示通りにハイウェイに移動を開始。ハイウェイの上へと昇るための非常用階段は崩れていたので、スバルとギンガのウイングロードでハイウェイに昇ったです。
「・・・あ、そういや海上やヘリの方の様子はどうなってるんだ?」
ヴィータちゃんがそう訊ねると、『はい。海上でのシームルグ、ガジェット掃討は順調です』ルキノから返答があって、リインとヴィータちゃんの前にモニターが展開されたです。映し出されてるのは海上で戦闘中のアリサさんとシャルさん、シグナムとルミナさんとトリシュさんとクラリスさん。
『フェイトさんは、なのはさんを追ってヘリに向かっています』
「そうか。あの2人が護衛につけゃなんの問題もねぇな」
『はい!』
新たに展開されたモニターは2画面で、なのはさんとフェイトさんの姿を映してるです。お2人とも全速力でシャマルやヴァイス陸曹、保護した女の子や確保したケースを運搬してるヘリに向かってる最中です。
(それにしてもやっぱりすごいですね~、みなさん)
シャルさんが“キルシュブリューテ”を振るって全長4mほどの魔力刃を飛ばして、避け切れなかった“シームルグ”を真っ二つに斬り裂いて撃破したです。魔法ではなくスキルとしての攻撃はやっぱりAMFだと防げないようです。アリサさんはガジェットⅡ型40機を砲撃と火炎弾幕で余裕で撃墜、全滅させたです。
(ルミナさんとトリシュさんの連携もすごいです!)
トリシュさんはルシル君のコード・ウルと同じ魔法を使って、最後の2機になった“シームルグ”の内の1機を40本近い魔力矢で包囲。AMFで何本かが消失してるですが、AMF効果以上の魔力が込められてるおかげかその大半は着弾、そのまま爆発炎上して海上に墜落して行ったです。ルミナさんは高速移動魔法で“シームルグ”と肉薄。そして触れた物を問答無用で分解するスキルを纏ったパンチで“シームルグ”をバラバラのコナゴナに粉砕したですよ。
『シームルグとガジェット、共に全機撃墜!』
『やったぁー!』
ルキノとアルトが歓声を上げたです。あとはなのはさんとフェイトさんがヘリと合流すれば万事OKですね。はやてちゃん達との通信を切って、リイン達は1ヵ所に集まって待機するです。リヴィアの瞬間移動がかなり面倒ですからね。下手に空間を開けてそこを突かれるのは痛いです。
「とりあえず待機中にみんなを回復しておくですよ」
「あ、わたしもお手伝いします!」
比較的ダメージの少ないキャロと一緒に治癒魔法でスバル達を回復。隊舎に戻るまでが任務ですから、いつ新しい任務が入っても良いように、ですよ。スバル、ティアナ、最後にギンガに治癒魔法を掛け終えた直後、「っ! 召喚魔法が使われてます!」キャロから報告が入ったです。
「テメェら、構えろ。団体のご到着だ」
召喚魔法によってこの場に現れたのは「ガジェットⅢ型・・・!」でした。4車線いっぱいに30機の大行列。クイント准陸尉たちではないのは幸いですね。
「リインとエリオとキャロはケースを最優先で守れ。スバルとティアナとギンガは、あたしと一緒に迎撃だ!」
「「「はいっ!」」」
ヴィータちゃんとスバルとギンガが突撃を仕掛けて、ティアナはクロスファイアによる援護弾幕射撃。最早Ⅲ型でも一方的に破壊されて行くだけのガラクタです。ですから「エリオ、キャロ。周囲警戒です」リインはこの状況を怪しく思ったです。
「「はい!」」
ガジェットでヴィータちゃん達を引き離したところでリヴィアの瞬間移動でケースを奪還。有り得る話ですからね。そう考えて警戒しつつ、ヴィータちゃん達の暴れっぷりを見守っていると、「キュクルー!」フリードが空を見上げながら一鳴き。キャロが倣って空を見上げると、「・・・え、なに?」ポツリと漏らしたです。
「なんです・・・って、え、何か光ったです?」
リインも空を仰ぎ見て、何かがキラン☆と光ったのが見えました。目を凝らして見ますと、何かがこっちに向かって降下して来るようにも見えます。だとしたら「襲撃・・・!」ということになりますね。やっぱり二段構えのケース奪還だったわけですね。
「エリオ、キャロ! ケースをしっかり持っててください!」
――フリジットダガー――
射撃魔法のダガーを15基と展開。発射するタイミングを見計らってるところにさらに、「リヴィー!」エリオから切羽詰まった声が。そっちに目をやると、リヴィー(おそらくリヴィア・アルピーノですね)が佇んでたです。ケースを抱きかかえるキャロを庇うようにエリオがリヴィアと対峙するです。
「ケース。取り戻しに来た」
「たった1人で・・・かい?」
「質問の意味が解らない」
「っ!・・・僕たちを相手に、君がたった1人で――」
「ふふ♪ わたし1人で十分だし」
エリオに対してリヴィアがそう答えるんですけど・・・。これは完全に見下されてるですね。って、そっちばかりにも気を取られてるわけにはいかないです。奪還犯はもう1人、空からも来てるです。ただ、リヴィアが瞬間移動せずに姿を見せたのが引っ掛かるですね。やはり実力差だけで奪えるとでも思ってる証拠でしょうか・・・。
「ん? 人じゃない・・・です?」
リヴィアに警戒しながらも空を見上げて、ようやく空から急降下して来ているのが人ではなく「ハンマー・・・!?」だということに気付きました。ヴィータちゃんのギガントフォルムにした“グラーフアイゼン”のヘッド部分と同じくらいの大きさで、柄は2m近いでしょうか。そんなハンマー単体が勢いよく落ちてきたです。
「フリジットダガー!」
リインはすぐさまダガーを発射して迎撃するですけど、一切の軌道修正させることすら出来なかったです。そしてハンマーはハイウェイへと落ちて・・・
――ISショックブレイカー――
「きゃぁぁぁぁっ!?」「うわぁぁぁぁぁっ!?」
「え・・・!?」
ハイウェイをその一撃で粉砕したです。リインは空を飛んでるですからなんともないですが、「エリオ、キャロ!」空を飛べない2人は崩壊に巻き込まれて落下。ホールディングネットや柔らかき支柱を発動しようにも、足場となる物が現在進行形で崩壊中ですから不可能。
「エリオ!」
「キャロちゃん!」
――ウイングロード――
ですがその時、崩壊してるハイウェイの瓦礫の中を2本の魔力の道が通ったです。そこを疾走するのはスバルとギンガで、落下中のエリオとキャロを抱きとめたうえで瓦礫の中から無事に脱出したですけど・・・。
「すいません! ケースを取られてしまいました!」
エリオからの報告に、キャロが抱えてたはずのケースが無いことに気付きました。辺りを見回して、ヴィータちゃんがティアナを手を取って空を飛んでいるのをまず確認。ガジェットⅢ型がハイウェイの崩落に巻き込まれて全滅してるのも確認。でもリヴィアの姿だけは確認できなかったです。
「逃げられた、ですね・・・」
そしてリイン達はヘリが降りられるほどに広い屋上のあるビルへと移動して、「気が重てぇな・・・」ヴィータちゃんが溜息を吐きながらケースを奪われたことについて報告しようという時・・・
「あの、ヴィータ副隊長。ちょっとよろしいでしょうか?」
ティアナがおずおすと手を挙げてヴィータちゃんに話しかけたです。ヴィータちゃんは「んだよ。あとにしろ」と聞く耳持たずでしたが、「あの、レリックは無事なんです」キャロからのその発言に「は?」ヴィータちゃんと、「はい?」リインは思わず訊き返したです。
「こういう風に奪還されてしまう可能性を考えて、あたしとキャロである対策を立てていたんです」
ティアナがそう言ってキャロが帽子を取ったです。キャロの頭の上には「花・・・?」可愛らしい小さな花が1輪あったです。
「フェイク・シルエット。あたしの幻術でレリックを花に見せてるんです。えっと、こんな風に」
ティアナは指をパチンと鳴らしたことでその花が“レリック”へと変わったです。ティアナとキャロは、フォワードの中でも特に敵との接触が少ないキャロに“レリック”を預けることを考え、こうして実行に移して、大成功を収めたってことでした。
「なるほど。地下でコソコソしていたのはこういうことか。やるじゃねぇか、ティアナ、キャロ」
「ホントです! お手柄ですよ!」
これで今度こそ、ヘリとなのはさんとフェイトさんが合流すれば万事OKですね。
†††SideリインフォースⅡ⇒なのは†††
「追い付いた!」
「フェイトちゃん!」
私が先にヘリに向かったんだけど、フェイトちゃんに追いつかれちゃった。私と同じようにリミッターを掛けられていたとしても、さすが六課最速、だね。そうして私はフェイトちゃんは、ヴァイス君の操縦するヘリに向けて全速力で向う。
『待ってください、市街地にエネルギー反応・・・!』
そんな中、シャーリーから切羽詰まった声での報告が入って、私とフェイトちゃんの間にモニターが展開。ここから遠く離れた廃棄都市区画のビルの屋上に強大な魔力・・・じゃない、また別のエネルギー反応が発生してるのが見て判る。
『砲撃のチャージを確認! ぶ、物理破壊型! 推定・・・エ、Sランク!』
ターゲットは間違いなくヘリ。私は「はやてちゃん!」の名前を呼んだ。これだけで『うんっ! 高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、両名の能力リミッターを解除。リリースタイム60分!』はやてちゃんは私の意を酌んでくれて、すぐに私とフェイトちゃんのリミッターを解除してくれた。
「レイジングハート!」
≪Exceed Mode≫
普段のアグレッサーモードはその名前通りに教導用で、長時間の活動の為に汎用性を高めた機能を有してる。けどたった今、アグレッサーから換装したエクシードモードは完全な戦闘用。さらに出力リミッターも完全に解除された。“レイジングハート”もエクセリオンモードへと変形させての完全戦闘態勢。飛行速度も「アクセルフィン!」さらに引き上げることが出来る。
「フェイトちゃんは砲撃主のところへ! 私がヘリの防御を担当する!」
「うんっ!」
フェイトちゃんと別れて私ひとりでヘリへ向かう。そして「撃たれた・・・!」砲撃が発射された。物理破壊タイプでSランク並のエネルギーを持った砲撃なんて受けたら、ヘリは撃墜するどころか空中で爆発四散する。そうなったら乗ってるシャマル先生、ヴァイス君、それに保護した女の子は確実に・・・。
(それに、レリックが暴走する可能性だってあるのに・・・!)
それを知らないのか、それとも知ってて攻撃したのか、どちらにしても被害は大きくなる。それだけは防がないと。迫り来る砲撃。それでもタッチの差で私の方が早かった。
――ラウンドシールド――
シールドを張って砲撃を防御。リミッターを掛けられたままだったら確実に貫通されてたほどの破壊力だった。でも「こちらスターズ1! 砲撃の防御に成功! これより犯人の確保に向かいます!」ロングアーチに報告を入れる。
『ありがとうございます、なのはさん!』
『ひやひやしたけど信じてたわよ、なのはちゃん!』
コックピットからはヴァイス君、小さな窓からはシャマル先生が私に向かって手を振ってくれたから、『間に合って良かったです!』手を振り返してから、すぐにフェイトちゃんの元へ向かう。
『こちらライトイング2! 砲撃主と他2名を視認・・・したんだけど・・・』
フェイトちゃんの声が尻すぼみになってく。その理由はサーチャーから送られてきた映像でハッキリした。体のラインが判るピッチリと密着した水色のスーツ。アレは「シスターズの・・・!」着てるバトルスーツと全く同じデザイン。
『考えててもしゃあない! とにかく確保や!』
「りょ、了解!」『了解!』
はやてちゃんからの指示に応じて、3人の少女の追跡を開始する。気になるのは赤い短い髪の少女で、「ウイングロード・・・?」のような魔法・・・と言うよりは、シスターズの使うスキルを使ってた。スバルとギンガのような帯状魔法陣じゃなくてテンプレートだし。
「(とにかく今は捕まえることを第一に考えないと・・・!)止まりなさい!」
「市街地での危険魔法使用、および殺人未遂の現行犯で逮捕します!」
その赤い髪の子が「うっせぇ! 止まれって言われて誰が止まっかよ!」乱暴な口調で返した。ん~、昔のヴィータちゃんを見てるみたい。大きなボードに乗って空を飛ぶ子が「うわ、うわ、これ絶対まずいっスよ!」焦ってるような口調だけど、時折こっちに振り返るその顔はどこか楽しんでる。砲塔を抱えてる子は無言でウイングロード(仮)の上をひたすら走って逃げる。
「なのは!」
――プラズマバレット――
「うん!」
――アクセルシューター――
「シューット!」「ファイア!」
制止を振り切っての逃亡ということで、こちらも手加減なしの射撃魔法の雨あられ。3人は「うおおおお!?」とか「わぁぁぁぁ!?」とか「あっぶねぇ~~~!」とか、大慌てで回避行動を取った。そこにさらに追い打ちを掛けようとした時・・・
――ISクローニングクイーン・シルバーカーテンTypeガンマ――
「「っ!?」」
3人の姿が一気にブワッと増えた。さっきと同じ「幻術・・・!」で間違いない。とにかく逃がさないために、フェイトちゃんと協力して片っ端から射撃魔法を撃ち込んでいきながら「ロングアーチ!」海上でガジェットの実機と幻術の混成編隊を見破ったように、今回も幻術がどれかを解析してもらいたい。
『はい! すぐに!』
シャーリーからすぐに実体と幻術の解析情報が送られて来て、「ありがとう!」本物の少女3人の位置を特定。私はカートリッジをロードして魔力をチャージ。一網打尽にするべくストライクスターズをスタンバイしたところで、3人はいきなり地面へ向かって急降下。建物の陰を利用して逃げ切りを図るのかもしれない。
――ISショックブレイカー――
フェイトちゃんが追撃をしようとした瞬間、3人が近づいて行ったビルが突然崩落。さらに地面も大きく陥没して、周囲の建物がアリジゴクに呑まれるアリのように崩壊してく。そして「フェイトちゃん!!」もブワッと上がってきた砂塵に呑まれた。
『大丈夫! 巻き込まれてないよ!』
砂塵の中からフェイトちゃんが飛び出して来てくれたから本当にホッとした。地面が大きく陥没したことで連鎖的に崩壊したビルは3棟。問題はそれだけじゃなくて、「これは逃げられたよね・・・」3人の姿を完全に見失っちゃった。
「ロングアーチ。あの3人の反応はどう?」
『ごめんなさい。完全にロストしました・・・』
「そう。・・・地下の方は?」
『ケースは奪われましたけど、中身のレリックは無事に回収できました。ですが行方不明のもう1人の子供は依然保護できていません。生命反応が途絶えているのが気掛かりですが、シャルさんの部隊が捜索に当たってくれるそうです』
フェイトちゃんにそう答えたシャーリーなんだけど、生命反応が途絶えたっていうのが確かに不安だ。
『こちらロングアーチ00、はやてや。スターズ、ライトニング、そしてギンガ、ホンマにご苦労様やった。六課隊員は合流後、一度隊舎に帰還してな。そんで、アリサちゃん、シャルちゃん、ルミナ、トリシュ、クラリス。今回はホンマにおおきにな。みんなが手伝ってくれたから、まぁ被害は小さないけど乗り越えることは出来た。とても感謝してる』
『感謝なんて無用よ、あたしは仕事としてやったわけだし』
『ロート・ヴィンデとして、親友として当たり前のことだしね』
『そうそう。友達が困っていたら助ける。これ常識』
『恋敵以上にとても大切なお友達ですよ、はやて』
『お腹空いた』
こうして廃棄都市区画と海上でのプライソン一派との戦闘は幕を閉じた。
・―・―・―・―・
時空管理局本局、その技術部区画。その廊下を数人の武装隊員と捜査官が列を作って歩いている。彼らが向かっているのは第零技術部。次元世界屈指の頭脳を有するジェイル・スカリエッティを主とする部署だ。捜査官の1人がドアの側のインターホンを押した。
『はい』
「・・・ドゥーエ」
『どちら様?』
通信に出たドゥーエに応えたのは「・・・特別技能捜査課、ナジェージダ三等空佐だ」特捜課の課長補佐を務めるナジェージダ・セイジだった。赤い髪はボブカット、澄んだ翠色の瞳は今、どこか悔しげに揺れている。
『ナージェ? 待って。今、開けるわ』
スライドドアが開き、ドゥーエとナジェージダが顔を合わせることになった。ドゥーエはナジェージダの背後に控えていた他の捜査官や武装隊員に気付いて目を丸くして、「どういうこと・・・?」ナジェージダに問うた。
「・・・ジェイル・スカリエッティ、およびシスターズにはある容疑が掛けられている」
「容疑? 私たちスカリエッティ家に? ふふ、うふふ! 冗談も大概にしないと、私も本気で怒るわよ?」
ドゥーエの表情から親しみが消え失せ、ナジェージダ達に対して敵意を見せた。武装隊員たちがストレージデバイスを次々と起動させていく。ナジェージダが「待て!」制止の声を掛け、「ドゥーエ、君もだ」応接室の奥から姿を見せたジェイル・スカリエッティ――通称ドクターが、ドゥーエを制止した。
「ドクター・・・」
ドクターの言葉に臨戦態勢を解除したドゥーエ。ドクターの後ろから彼の娘であるウーノ達もぞろぞろと姿を現わした。そしてドクターは「話の続き、聴かせてもらおうか」ナジェージダに話を促した。
「まずはこちらを見てほしい」
ナジェージダがモニターを複数と展開し、「昼頃、ミッド北部の廃棄都市区画にて行われた戦闘だ」そこに機動六課とプライソン一派との戦闘を流した。ドクター達はその映像を軽く眺め、ある映像を見た瞬間に「っ!」モニターに食いつくようにそこに映る少女3人を凝視した。
「ノーヴェ、ウェンディ、ディエチ・・・!」
赤い髪のノーヴェ、ボードに乗るウェンディ、砲塔を抱えるディエチだ。
「彼女たちは、スカリエッティ家と関係しているんだろ。同じバトルスーツ、テンプレート・・・つまりはスキルを扱うサイボーグだ。そして今、彼女たちの名前を呼んだ。これがスカリエッティ家の容疑だ」
「待って! 確かにあの子たちは以前、うちの孤児院で暮らしていたけど、プライソンに拉致されたの!」
「プライソン。その素性の一切合財が不明。しかしその頭脳は天才的。そう、ジェイル・スカリエッティ、あなたのような。広域次元犯罪者プライソン。あなたにはその容疑も掛かっている」
ナジェージダがそう言うと、「は?」愛する父親が犯罪者呼ばわりされたことでシスターズは怒りに顔を滲ませるが、「ふふ、ふははは!」ドクターは笑い声を上げた。しかし「やってくれるじゃないか!!」一転してそう怒声を上げ、応接室のテーブルをドン!と殴った。
「まさか、ドクターを嵌めるためにわざわざ私たちのバトルスーツと同じデザインを、ノーヴェ達に着せた・・・!?」
「だとすればなんて汚ない奴だ・・・!」
「フフフ、許せないわねぇ~・・・」
ウーノとトーレとクアットロも・・・
「私たちを嵌めるために、ノーヴェ達にこんな真似をさせたのだと思うと・・・」
「ああ、ハラワタが煮えくり返そうな思いだ・・・!」
「絶対に許さないよ!」
ドゥーエとチンクとセインも、同様に怒りを露わにした。ナジェージダは「そういうわけだ。あなた達を逮捕する」後ろに控える捜査官に手錠を用意させた。そして、ガチャッとドクターやシスターズ全員に手錠を掛けた。
「ウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、チンク、セイン。大人しく連れて行かれようじゃないか。今は、ね」
「連行しろ」
ナジェージダの指示で、ドクター達が応接室から本局内に設けられている拘置所区画へと連行されて行く。その最中、「あなた達がプライソン一派だとは初めから思っていません」ナジェージダがドクターに小声で伝えた。
「ほう」
「すいません。ですが、こうするしか・・・」
悔しげに呻くナジェージダ。ドクターは「構わないさ。今は、ね」そう言ってナジェージダに優しく声を掛けた。ドクターとてこのまま大人しく捕まっているつもりはない。この一件で彼は覚悟したのだ。兄であるプライソンを止めるのは自分だ、と。
「そうだ。私たちがラボを開けている間、あそこはどういう扱いになるんだい?」
「一時的な閉鎖扱いになるかと。本物のプライソンを、はやてが・・・機動六課が必ず捕まえます。それまではどうか大人しく・・・、お願いします」
「そうかい」
こうしてジェイル・スカリエッティとその娘シスターズは、濡れ衣を着せられて拘置所送りにされ、第零技術部は閉鎖となってしまった。
そんなドクター達の連行を、本局から程遠いミッドチルダにて眺めている男が居た。ボサボサな薄紫色の髪、黄金色で釣り目な瞳、笑うと八重歯が光る。生意気そうな小僧っと言った感じだ。青いストライプが縦に描かれたYシャツ、蝶ネクタイ、黒ベスト、そして紫色のジュストコールを羽織っている
「はーっはっはっはっは! 俺からのプレゼントだ、我が愚弟・・・ジェイル!」
彼の名はプライソン・スカリエッティ。ジェイルの実の兄で、己が野望の為に弟を嵌め、こうして大きく笑い声を上げていた。そんな彼のところに、「ただいま~」クイントとノーヴェとウェンディとディエチのサイボーグで構成されたチーム・シコラクスと、「ただいま」ルーテシアとリヴィアとアギトの人造魔導師で構成されたチーム・スキタリスが帰って来た。
「悪かったわね、プライソン。レリックとプフェルトナーの回収に失敗」
「あたし達も失敗っス。レリックとプリンツェッスィン、回収できなかったっス」
「悪ぃ、プライソン」
「面目ない」
クイント、ウェンディ、ノーヴェ、ディエチが謝った。が、「ああ? まぁいい。公開意見陳述会、その日に勝負を仕掛ける」プライソンはそう言って、モニターに映る地上本部を見ながらニヤリと笑みを浮かべた。
「で、だ。デルタ~!」
「ひぅ!」
研究室の出入口からこちらを覗き込んでいるデルタを呼んだプライソン。デルタは「ただいま・・・」ばつが悪そうに研究室に入って来た。クイント達はプライソンへの道を開けるように左右に分かれて、デルタの行く手を開けた。
「俺は、お前を含めたスキュラはここに残れ、って言ったな?」
「う、うん」
「だが、お前は俺の命令に従わずに外に出て、姿を管理局に見せなくともショックブレイカーを2発も打った。だな?」
「うん・・・」
「・・・。で? 体の調子はどうだ? ショックブレイカーは、俺の最高傑作だった振動破砕を超える威力だ。連発はお前の基礎フレームを歪ませる」
「え? あ、うん、大丈夫・・・。おかしなところはない・・・よ?」
思いの他やさしい言葉を掛けられたデルタは少し困惑したが、自分の体をきょろきょろ見回したり、体のあちこちと触ったりと確認してからそう答えた。
「よし。いいか? 次のミッションまでお前たちは全員休め。外には出ないようにな」
プライソンの指示に彼女たちは「はーい!」応じ、研究室を出て居住区区画へと去って行った。プライソンは彼女たちを見送った後、改めてモニターとキーボードへと体を向き直した。モニターにはただ、2つの月が映し出されていた。
後書き
ドブレー・ラーノ。 ドブリー・ジェニ。 ドブリー・ヴェチェル。
今話は前エピソードの予告に出していた、スカリエッティ家の逮捕を主にした(後半のちょろっとだけしか出ないのにね!)話と、初っ端から小物臭がひどいレジアスが久々に登場な話。本作は原作以上に扱わなければならないキャラが多すぎてもうてんてこ舞いですよ。
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