おぢばにおかえり
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第三十四話 あちこちでその十二
「今の言葉って」
「何ですか?」
「どういうことなの?」
「ですから僕と一緒にいるってことですよ」
「ひのきしんさせてもらってるってこと?」
「まあそういうことで」
やっぱりにこにことして言う阿波野君でした、そうしたお話をしつつ何とか坂が二るある渡り廊下の部分を拭き終えました、回廊ひのきしんの時はこの坂をどう越えるのかが一番の山場だと思います。
私達はさらに拭き進んでいきました、坂を越えても。
教祖殿に向かう廊下を拭きながら進んで、です。私達は教祖殿の前で一旦止まって礼拝をしてまた拭きはじめました。
その中で阿波野君はこんなことを言いました。
「最初ここ一周するの大変でした」
「膝当てしてても膝が痛くなるわよね」
「はい」
「そうなのよね」
「それで大変でした、けれど」
拭きながら言うのでした、見れば結構手慣れてる感じです。
「今は最初の時よりも」
「いけてるのね」
「この通り、一回二十分で一周したことあります」
「二十分!?」
「はい、それで」
「それはまた凄いわね」
大体一時間弱でしょうか、回廊ひのきしん一周で。
「そんなに早いのは」
「ちょっと早くやってみようと思いまして」
「それでやってみてなの」
「二十分でした」
「相当急いだのね」
「はい、全力で」
「よくやったわね」
ある意味感心していました、一時間弱かかるところを二十分ですから。
「それはまた」
「気合入れたんです」
「そうなのね、ただ」
「ただ?」
「ひのきしんは早くするだけじゃないのよ」
それこそとです、私は阿波野君にこのことも話しました。
「じっくりとすることもね」
「大事なんですね」
「早くしても」
それこそとです、私は阿波野君に注意しました。
「駄目なのよ」
「丁寧にすることも大事ですね」
「そう、ただ二十分でしたのは」
このことは本当にでした。
「凄いわね」
「褒めて下さいね」
「いや、褒めないわよ」
そこはしっかりと言いました。
「だから早いだけじゃ駄目だから」
「丁寧にですね」
「雑にやっても拭き忘れとかあるでしょ」
阿波野君に具体的に回廊拭きのことからお話しました。
「だからね」
「早く、よりも」
「丁寧にする方がいいの」
「わかりました」
「そう、けれど阿波野君の拭き方って」
見てみるとです。
「初心者には思えないわね」
「上手ですか」
「ええ」
何か結構手馴れた感じです。
「今年からよね、はじめたの」
「はい、入学してから」
「その割に上手ね」
「学校帰り暇だとしてますし」
「学校帰りに」
「そうしてもいます」
「それはまた」
そのことを聞いて私は驚きました、それこそ学校帰りにそうしたことをする人は天理高校でも教校学園にもいないからです。
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