真田十勇士
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巻ノ五十五 沼田攻めその十三
「だからな」
「こうして道を整えておく」
「こうした時の為に」
「さすればですな」
「こうして速く進むことも出来る」
「左様ですか」
「そうじゃ、では沼田に着いたらな」
その時のこともだ、幸村は話した。
「わかるな」
「はい、その時はですな」
「すぐに戦にかかる」
「城を攻めている北条の軍勢を逆に攻める」
「そうするのですな」
「そうじゃ、不意を衝いてな」
その北条家の軍勢をというのだ。
「そうする、そして御主達にはな」
「わかっております、総勢で攻め」
「そしてですな」
「北条の者達を大いに攻めて」
「退けますか」
「そうする、兵達も攻めるがその前にな」
十勇士達がというのだ。
「一気に攻めよ、よいな」
「ですな、そして一気に攻めて」
「そのうえで、ですな」
「思う存分暴れる」
「そうするのですな」
「そうじゃ、遠慮することはない」
十勇士達の思うままにというのだ。
「暴れよ。わかったな」
「わかりました」
十勇士達は主の言葉に強い声で応えた、そして干し飯と水の質素な食事の後はすぐに寝てだった。日が昇るとだ。
また道を進みだした、そしてだった。
その日の昼前に沼田に着いた、城が見えたのだ。
その城を見てだ、幸村は言った。
「ではこれよりじゃ」
「戦ですな」
「思う存分攻めますか」
「今より」
「うむ、敵はまだ我等に気付いておらぬ」
見れば敵の軍勢は城を完全に囲んでいる、兵の向きは完全に城の方を向いている。周りを見ている者は一人もいない。
それを見てだ、幸村は言うのだ。
「ではな」
「まずは、ですな」
「我等十勇士が攻める」
「そうせよというのですな」
「うむ、まずは御主達十人が攻めてな」
実際にだ、そうしてというのだ。
「敵を混乱させよ、それから拙者が軍勢を率いて攻める」
「では」
「今より攻めるぞ」
こう言ってだ、幸村は軍勢を山の中に潜めそのうえで徐々に北条の軍勢に近付いた。そして十勇士達はそのままだった。
北条の軍勢に近付いてだ、まずは霧隠が霧を出した、すると。
急の霧に北条の軍勢は戸惑った、それで周りを見回し口々に言った。
「霧!?」
「霧が急に出て来たぞ」
「これはどういうことじゃ」
「何故今霧が出る」
「朝でもないというのに」
北条の兵達はそれに戸惑う、しかし。
彼等はそれを妙に思ってもこれからどうなるかまでは考えていなかった。しかしその彼等に対してだった。
穴山が鉄砲を放ち由利が鎌ィ足を飛ばしてだった。
次々に倒す、そして。
三好が金棒を振り回し伊佐も錫杖を手に続く、根津の居合が煌き。
海野は手裏剣を投げ筧の術が敵を撃ち望月は拳を振るった、猿飛は駆け回ってだった。
北条の軍勢を倒していた、それに北条の兵達は一気に浮き足立った。
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