ネット通販は異世界最強なんだよ!(勘違い)・ω・`)ノ
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001 「妖精さん、キャラクターメイキング」
「突然ですが、アナタ達は死にました。ご愁傷様です」
真っ暗な暗闇に、女性の声が響いた。
少年は戸惑って、周りを見渡す。
声の主は見当たらない。だが、この場には膨大な数の死んだ人間――丸くて青い人魂が漂っている。
この光景を見て、少年は気づかされた。
(そうだ、俺、死んだんだ……。
マンションの十階にトラックが突撃して……あれ?
なんだよ!どうやったら高層マンションの十階にトラックが突撃してくるんだよ!?)
自分の死因がありえなさすぎて一人ツッコミ。
宝くじに当選して、億万長者になる確率の方が高いくらい、ありえない。
だが、今はそんな事に悩んでいる場合ではなかった。
この真っ暗闇の空間は、何なのか。
先ほどから聞こえる女性の声は何なのか。少年は、この異状すぎる状況を、誰かに説明して欲しかった。
「質問は一切受け付けません。
私の話を黙って聞いてくれるとありがたいです。
まぁ……人魂には口がないので、声が出ない訳ですが。
あ、今のは豆知識です」
確かに、人魂には口がなかった。
人類最大のチート能力『コミュニケーション』が封じられ、情報交換ができない。
この場に大勢の人魂が居ても、全員がそれぞれ孤立しているに等しい。
それを理解した少年は不安になる。
(道具を使う手足もない……。
なんて不便な体なんだっ……!
これが死ぬって事なのかっ……!?)
「まず、私が誰なのかを答えましょう――アナタ達の飼い主です」
(つまり、俺達、人間は家畜だと言いたいのかっ……?
家畜には、口も手足も必要ないって感じなのかっ……!)
「こう見えても……私の姿をアナタ達は見る事すらできませんが、私は観察系お姉さんと呼ばれる趣味を持っておりまして、動物や魚などを惑星にいれて、ゆっくり観察するのが好きなんです」
(家畜じゃなくて、水槽の中を泳ぐ魚扱い……?
惑星が飼育ケースとか、壮大すぎるだろ……)
「神様と呼んでくれても良いですが、出来れば私の事は、観察系お姉さんと呼んでくれると嬉しいです」
(いや、今の俺達に、口ないのに……名前を呼んでくれると嬉しいとか……皮肉で言ってるのだろうか……?
かなり、ドSな神様だなぁ……)
「最近、私はネット小説なる軽い物語を読んで、唐突に閃きました。
他の飼育ケース……げふんげふん」
(やっぱり、惑星は飼育ケース扱い!?)
「異なる世界に、アナタ達を放り込んだら……どうなるのかぁーって思ったんです。
今までに百万人ほど、送りましたが、奴隷になったり、死んだり、成り上がったり、殺されたり、犯されたり、色んな人生を見れて、大変満足です。
観察系お姉さんとして、アナタ達の存在を誇りに思います。
多数のバリエーション溢れる展開の数々が、子供心って奴を刺激してくれるんです」
(いや、これって……水槽の中を泳いでいる魚を褒めるのと同じ行為だろっ……?
この人、頭が可笑しいんじゃっ……?
魚を見て、その人生に共感して楽しむとか……キチガイと同類だと思う……)
「つまり、何が言いたいかというと、これからアナタ達には、人類が滅亡寸前の世界へと行って生活してもらう。そういう事です。
アナタ達には拒否権はありません。どうかご了承ください」
余計な事を考えている場合ではなかった。
少年が無駄なことに思考を費やしている間も説明は続くのだ。
ここで考察する事に夢中になって、話を聞くのを忘れたら、取り返しのつかない失敗になりかねない。
「貧弱なる現代子のために、私は転生特典を大量に用意しました。
キャラクターメイキングを終了させた人間から順番に、好きな転生特典を得る事ができます。
これは早いもの勝ちです。
ゆっくりキャラメイクするもよし、適当にキャラメイクして好きな転生特典を得るも良しです」
その言葉とともに、少年の目の前に青い画面が現れた。
文字を入力するためのキーボードは設置されていなかったが、人魂の意思に反応して、自由に情報を入力できる、そんな仕様だと説明された。
「それはキャラクターメイキング画面。
アナタ達は、性別・名前・種族・外見を自由に選ぶ事ができます。
つまり、アナタ達の理想像が見事に反映される訳です。
観察系お姉さんとしては、違う性別を選んで、ドキドキハァハァッして恋愛するTSエルフ娘って良いなと思います。
だから、エルフ娘になったら、特別ボーナスを上げますよ。
恋愛って良いですよね。恋愛をテーマにした名作が、後世に長く残る理由がよく分かる気がします」
(うん?
この言葉から察するに……観察系お姉さんは、人間と似たような価値観を持っているっ……?
だから、俺ら人間を見て、その人生という物語に、共感ができるって事かっ……?)
「以上で話はおしまいです。
それでは第二の人生をゆっくり激しく生きたり死んだり犯されたりするために、キャラメイクしてください」
観察系お姉さんの言葉は終わり、青い画面に文字が浮かび上がった。
『アナタは男になりますか?女になりますか?』
少年は当然、男である事を選ぶ。
そして、続けざまに、自身の名前欄に『シルバー』の文字を入力した。
これで今日から彼はシルバー。
自動的に、今まで使っていた名前を二度と思い出せなくなった。
(あれっ……ちょっと待てっ……!?
なんだよっ……!
これやばいっ……!何がなんだが分からないが、この感覚はやばいっ……!
致命的な喪失感を感じたぞっ……!
これがキャラメイクって奴なのかっ……!
もしも、違う性別を選んだら、その時点で感覚まで変わっていた気がするっ……!)
『次の中から種族を、選んでください』
①猫 宗教的に優遇されています。
②人間 滅亡寸前です。
③リザードマン 湿地帯で大勢力を誇っています。
④豚人間 最大勢力です、難易度イージー。
⑤エルフ 繁殖力が低い不老種族です。エルフ娘にはボーナスあげます。
⑥吸血鬼 タフな化物です。
⑦精霊 エルフと仲がいいです。
⑧ゾンビ こいつ腐ってやがる。
⑨デュラハン 鎧です。錆びます。
⑩ホビット 絶滅しました。この種族を選んだらボーナスあげます。
⑪ドワーフ エルフと仲が悪い筋肉マッチョです。
これ以外にも、無数の種族が表示され、その中に気になる種族があった。
『971 妖精 空を飛べます』
シルバーは妖精の細かい説明欄を見た。
どうやら、人間の子供サイズの種族。しかも、空を飛べて不老だと書いてある。
(人間を選んでも、滅亡寸前。
なら、空を飛べる妖精になっても良いよなっ……?
敵と遭遇しても、空を飛べるなら逃げやすい。
いや、待てよ。もう少し考えよう)
シルバーの中で激しい葛藤が起きた。
慣れ親しんだ人間という種族を捨てるのは正しい選択なのだろうか?
妖精はどのような価値観を持っている種族なのか不安すぎて、種族欄を眺めるだけで、無駄に30分の時間が流れてしまう。
気づけば、暗闇に包まれた空間には、残り数人の人魂しかいない。
どうやら、他の人たちは好きな転生特典を得るために、さっさとキャラクターメイキングを済ませ、異世界へと転生したようだ。
(……もう手遅れだし、妖精を選んで、じっくり、素晴らしい外見を設定しよう)
『外見データを入力してください。
生前の顔コースや、ランダム設定もあります』
(な、なんだよっ……!これっ……!)
外見を設定する画面は、素人ではデザインする事がほぼ不可能すぎる難解な画面だった。
なぜなら、人間の身体は、複雑な構造をしている。
顔、目、手足、臓器……無数のパーツが組み合わさり、人間となるのだ。
血管の一つ一つも合理的に配置しないといけないから、外見を設定するために、千年の時を割いても足りなさそうだ。
ほとんどの転生者は、生前の顔。もしくはランダム設定で新しい外見を貰い、転生せざるを得ない。
しかも、妖精には無数の制限があった。
空を飛ぶ機能、それらを生み出す動力部、不老長寿を生み出す臓器。
人間より余計なパーツが多く、それらを上手く組み合わせないと即死する。そう画面には書かれていた。
(こんなの無理すぎるっ……!
ど、どうすれば良いっ……!)
シルバーは、画面をじっくりと睨む。ヘルプ画面や、隠しボタンがないか、丁寧に調べ上げた。
そうしている間にも、時間は残酷にも過ぎ去る。
この真っ暗な空間にいる人魂は、シルバー唯ひとりになってしまった。
(皆が選ばなかったハズれ転生特典をゲットという事か……!
ちくしょう……どうすればいいんだよっ……!
生前の顔はブサメンだし、ランダム設定だとどういう顔が出るかわからないぞっ……!
何か、何かないのかっ……あれ?なんだ、これ?)
『心臓パーツB』
文字列の中に、隠された小さなボタンを発見した。『パ』のところの小さな濁点がボタンになっている。
(こ、これは隠しボタン!押せばボーナス貰える気がする!
これで起死回生の大逆転だ!)
人魂でボタンに触れる。すると――観察系お姉さんが彼に話しかけてきた。
「おや?隠しボタンを見つけたのですか?
珍しい人間ですね」
(や、やった……?ボーナス貰える展開かっ……?)
「それは、私が『好きなようにアナタを設定してあげますよ』モードを発生させるボタンです。
普段は干渉しない観察系お姉さんなのですが、たまには自分で設定するのも楽しいですよね」
(うわぁぁぁぁぁ!!なんか貰えるかもと思ったら、そういう展開じゃなかった!)
「あれ?アナタの設定した名前はシルバーですか、そうですか。
それならちょうど良い外見データがありますよ。
これとかどうでしょう?」
青い画面に、妖精の姿が投影された。
それは、この世の者とは思えない、絶世の美少年。
輝く銀髪に、人を魅了する青い瞳、若々しい太もも。背中に紫模様の蝶蝶の羽が生えている
同性ですら惚れて崇拝しちゃう完璧なショタだ。
(しゅ、しゅごいっ!
世界トップレベルのナンバーワン美少年だっ……!
これで俺もモテモテになってリア充にクラスチェンジっ……?)
「どうやら、これで良いようですね。
では、さっさと転生して、犯されたり、犯したり、殺されたり、死んだり、活躍したりしてください。
アナタが最後の一人です」
(あ、はい)
気づけば、、この場に留まっている人魂は彼だけになっていた。
当然、残された転生特典は、外れクジ。
誰も選ばなかったゴミ。
素晴らしい美少年になれた代償だと思って我慢するしかない。そうシルバーは思いながら説明欄を読んだ。
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転生特典『どこでもネット通販』
①地球の物資をネット通販で購入して即配達してくれます。しかし。口座には5万円しか入っていません。
②動画サイトに、あなたの行動が自動的に投稿され、アクセス数に応じて広告収入が入ります。(ほとんど儲かりません)
③ネットの皆から、応援の声が届きます。
④口座の金を使い切ったら、口座は自動的に凍結されます。
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この特典を見て、理解できる事は――
(……たった5万円か。
確かに、普通なら選ばないよな。
ネット広告で金を増やせるとはいえ、ほとんど儲からないって書いてあるし……。
でも、どこでも物資が届くって事は、便利だよな……うん。
異世界で何かあっても、通販できるなら解決できる……?)
こうして、シルバーは、転生特典を貰い、この真っ暗な空間から去る時がきた。
観察系お姉さんは、最後の最後まで姿を見せなかったが、声だけは彼の耳に届く。
「情報を制する者が世界を征す。
この特典は、そういう可能性を秘めています。
上手く使えば最強です。
それでは、さようなら。
私は24時間、アナタの行動を観察しています」
(ストーカーかっ!?アンタは!?)
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観察系お姉さん「転生特典の一部はこんな感じです」
シルバー「これ……外れクジ引いたら、人生強制終了ゲームじゃねぇか!」
転生者A「転生特典は無限の魔力!」 ☚体が耐えられず死亡
転生者B「ニコぽ!なでぽ!ハーレムハーレム!」☚他人の嫁まで寝とって、相手の男に刺し殺される地雷スキル。
転生者C「主人公補正っ!」☚主人公らしい悲惨な過去を持たなきゃっ……!
転生者D「Emiya、スパシンっ!黒アキト!!」 ☚著作権上、無理!
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