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信じる力

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第四章

「対する為にだ」
「結びつきは深めるつもりでしたね」
「帝国内での戦いに介入しているが」
 裏からだ、具体的には皇帝に対する諸侯や新教徒達を援助して皇帝に味方する諸侯の分裂も謀っている。
「しかし今はな」
「はい、皇帝軍が強いですね」
「だからだ」
「皇帝軍を抑える為に」
「スウェーデンの力が必要だ」
「だからこそ」
「元々介入するつもりだったがな」
 しかしというのだ。
「卿の言葉を聞いて決めた」
「結びつきを深めますか」
「これまで以上にな」
「ですか」
「皇帝軍に勝てるかどうかわからないが」
 それでもというのだ。
「スウェーデンはまとまっている、ならばだ」
「同盟者としてですね」
「充分だ、軍の編成や戦術も大事だが」
「まずはですね」
「国家としてまとまっているかどうかだ」
 最も見て考慮すべきものはというのだ。
「スウェーデンはその点で及第している」
「だからこそ」
「そうだ、あの国との結びつきを深める、そして」
 リリュリューはこうも言った。
「私の予想だが」
「スウェーデンは、ですか」
「強い」
 その目を鋭くさせて言う。
「おそらくだがな」
「思いも寄らない編成と戦術ですが」
「それでもだ、将兵達は王に絶対の忠誠と信頼を寄せているな」
「まさに」
「国家が一枚岩であるということ、そしてそこまでの忠誠と信頼を寄せるだけの王が主なら」
 この二つのことを外交官の言葉から察しての言葉だ。
「間違いなくだ」
「スウェーデンは強いですか」
「ハプスブルグ家にも対することが出来る」
 リシュリューは確かな声で言った、そしてだった。
 彼はフランスとスウェーデンの結びつきを深めることを王に進言し王も認めた。彼のこの読みは当たった。
 スウェーデンはポーランド等周辺諸国との戦いに勝利を収めてだ、バルト海にまで影響を及ぼしだしたハプスブルグ家に対する為に。
 帝国内での戦いに参戦することを決定した、彼自ら兵を率いて帝国内に入った。
 そしてそこでだ、皇帝軍もっと細かく言えば皇帝に味方するバイエルン公の配下であるティリー伯の軍勢と対峙することになった、そのティリーが動いたと聞いてだ。 
 フランスではだ、こうした意見が出た。
「ポーランド等には勝ったが」
「それでもな」
「相手はティリー伯爵だ」
「これまで無敗の皇帝軍きっての名将だ」
「そのティリー伯の軍隊と戦うとな」
「敗れる」
「どう考えてもな」 
 流石にティリーには勝てないというのだ。
「あの将軍のテルシオは無敵だ」
「あそこまで完成されたテルシオを組めて動かせる人物は他にいない」
「共に兵、騎兵隊を率いるハッペンハイム伯も猛将だ」
「カラコールを完璧に動かして戦う」
「あの二人が共にいるとだ」
「誰も勝てない」
「対することが出来るのはワレンシュタイン侯だけだが」
 この彼はというと。
「皇帝軍総司令官だったからな」
「同じく皇帝軍だ」
「今は罷免されているにしても」
「それでは対する筈もない」
「スウェーデン王は今までは勝っているが」
 それでもとも話された。
「相手が悪過ぎる」
「これでは敗れる」
「どう考えてもな」
「いや、わからない」
 ここで言ったのはリシュリューだった。 
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