呪いの言葉
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第三章
「こっちの気が済まないわよ」
「ううん、それでもね」
ベルナデッテも場にいるがだ、ここで。
その同僚、ミレッラ=ステゴリッチにだ、難しい顔になって言った。
「貴女ちょっとね」
「ちょっとって?」
「言い過ぎじゃない?」
こう言うのだった。
「何かね」
「何かって」
「確かに私もあの娘好きじゃないわ」
ベルナデッテもこのことは否定しなかった。
「仕事してたらいつも揉めるし」
「ベルナデッテはいつもでしょ」
「ええ、一緒に仕事する機会多いから」
「特にね」
「それでもよ」
ミレッラの茶色の髪と青い瞳のまだ幼さの残る顔を見ながら言った。
「何かちょっとね」
「言い過ぎっていうのね」
「そこまで言ったら」
それこそというのだ。
「何かよくない気がするから」
「どうしてよ」
「どうしてかわからないけれど」
「それでもなの」
「あの娘も反省したみたいだし」
フローリア、彼女もというのだ。
「もういいんじゃない?」
「言うことは」
「ええ、もうね」
「いや、だからね」
ミレッラは顔を顰めさせてだ、ベルナデッテに返した。
「あの娘はそうした娘だから」
「とにかくきついから」
「だからよ」
それでというのだ。
「私も言うのよ」
「そうなのね」
「そう、もう幾らでも言うわよ」
「何かね」
ここでだ、ベルナデッテは。
不吉な感じがしてだ、ミレッラにこうも言ったのだった。
「嫌な予感がするから」
「予感って」
「何かよ、あまり人の不幸を喜ぶものじゃないし」
「あの娘ならいいでしょ」
「そうした考えは」
どうにもとだ、妙に不吉な感じがしてだった。
ベルナデッテはミレッラに注意した、しかしミレッラはそれでもフローリアの不幸を笑っていた。だが暫くしてだった。
今度はミレッラが交通事故に遭った、それもフローリアと同じ様に横断歩道を渡っていると青信号でも突っ込んできた車に撥ねられた、命に別状はなかったが。
大怪我で入院することになった、それでだ。
見舞いに来たベルナデッテ達にだ、こう言ったのだった。
「全く、私もね」
「事故に遭ったわね」
「しかも交通事故」
「フローリアみたいにね」
「そうなったわね」
同僚達はベッドの上で右手と左足にギプスを巻いて寝転がっている彼女に言った。
「しかも同じ病院に入院ね」
「病室は違っても」
「そうなったわね」
「どんな因縁だか」
「変な話よ」
ミレッラは苦い顔でこうも言った。
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