百人一首
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59部分:第五十九首
第五十九首
第五十九首 赤染衛門
来るなら来ると。来ないのなら来ないと。
わかっていたのならよかったのに。今ではこう思うばかり。
来ないのだとはっきりわかっていたのならもう休んでいた。迷うことなくそれで休んでいた。
あの人を信じたばかりに。あの人は来ると思っていたばかりに。
そのせいで月を見ることになってしまった。
今まさに沈もうとする月を。日がそのかわりに空に来るまで。月は沈み長かった夜は遂に終わった。あの人は最後まで来ることがなかった。
来なかったことは恨めしく思って。その気持ちはどうしても抑えることはできないのだけれどそれでも。心を何とか静かなものにさせて。そのうえでまた思う。
自分に逢いたかったことは間違いないと。そう考えていたというあの人の文は受け取ったから。だからその気持ちは受け止めておくことにしようと。
不誠実な人は何処まで不誠実でそれを自覚したりはしないものだけれどそれでも。
今はそう思うことにした。けれど今の気持ちは歌に残しておくことにした。
やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな
歌に残してそのうえであの人に昨日のことを伝えよう。この歌を目にしてもわからないような人では流石にないだろうから。そう思いながら歌を詠った。来なかったあの人のことへの恨みをまだ抑えつつ。
第五十九首 完
2009・2・25
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