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三軒隣

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第六章

「何だってな」
「大袈裟か」
「そうも思ったよ」 
 胡椒とソースの効いたそのステーキを食べつつ言う、マトンの匂いは気になるがそれでも味自体はかなりいい。
「本当にさ」
「そうか、けれどだな」
「ああ、わかったよ」
 このことは確かだというのだ。
「本当にな」
「それは何よりだ」
「いいんだな」
「ああ、御前がわかったことがあったらな」 
 それ自体がというのだ。
「本当によかった」
「お母さんもそう思うわ」
 母も言ってきた。
「翔平がわかったことがあったらね」
「感覚とかのことか」
「そうだ、何にしろな」
「わかったことがあればいいわ」
「何か今回のことでな」
 それこそとだ、さらに言う翔平だった。
「色々わかったよ、俺も」
「だったらお父さんはいい」
「お母さんもよ」
 両親は笑顔で再び言った。
「それじゃあ今回のことは忘れるな」
「絶対にね」
「そうするな」
 翔平もこう両親に返す、そして。
 一緒にステーキを食べている弟達は翔平にこう言ってきた。
「あとお兄ちゃんマトン普通に食べてるけれど」
「平気なの?」
「美味いだろ」 
 これが翔平の弟達の返事だった。
「羊もな」
「いや、羊はね」
「僕達あまり食べてなかったから」
 日本ではというのだ。
「最初匂いがきついと思ったけれど」
「今は別にね」
「そうも思わないけれど」
「お兄ちゃん最初から平気なんだ」
「この匂いがいいんじゃないか」
 翔平は弟達の言葉に笑って返した。
「食欲をそそってな」
「だからなんだ」
「羊肉いいんだ」
「そうだよ、これ位は平気だな」
「あんたやっぱりこっちにいたら?」
 マトンの匂いがいいと言う長男の言葉を聞いてだ、母はこう言った。
「マトンの匂いがいいのなら」
「いや、俺は日本がいいよ」
「そうなの」
「専門は日本の生態系だしこっちは毒蛇とかUMAとかやばい生きもの多いしな」
「気をつければいいじゃない」
「それはそれだよ」
 こう言ってだった、翔平は母のその言葉は断った。そのうえで日本に意気揚々と帰って日本での生活に戻るのだった。オーストラリアで知ったことを心に刻んだうえで。


三軒隣   完


                        2016・5・21 
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