三軒隣
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第四章
「ヘリコプターに乗るんだね」
「凄く楽しみだね」
「お空を飛ぶんだね」
「そうして行くんだね」
「おい、何でそんなに楽しそうなんだ?」
翔平はその弟達にいぶかしむ声で尋ねた。
「ヘリで行くなんておかしいだろ」
「あれっ、そう?」
「映画みたいで楽しいじゃない」
弟達は子供らしい考えで兄に返した。
「格好いいし」
「いいじゃない」
「そんな問題か?しかしヘリに乗って行くなんてな」
空港の中に向かいつつだ、今度は翔平が首を傾げさせた。
「大事だな」
「オーストラリア、特にこの辺りなら普通だよ」
ロバートはその翔平に陽気に笑って言った。
「だからね」
「ヘリに乗ってですか」
「行こうね」
「わかりました」
実は納得していないが言葉ではこう答えるしかなかったのでだ、ロバートにこう返した。そしてだった。
翔平は弟達と共にロバートが操縦するヘリ、比較的小型のそれに乗った。そうして出発するとヘリは西に向かったが。
西の方は見渡す限りの砂漠だった、翔平は眼下のその砂漠を見て驚いて言った。
「凄いな」
「うん、お家の隣からね」
「こんな砂漠が広がってるんだね」
後ろの座席に共にいる弟達も言う。
「凄いね」
「何処まであるんだろうね」
「そんな問題じゃないだろ、何だこの砂漠」
翔平は驚きながら弟達に言う。
「どれだけ広いんだ」
「あれっ、知ってたよね」
ロバートはヘリを操縦しながら自分の後ろの座席にいる翔平に尋ねた。
「オーストラリアは砂漠地帯が多くてね」
「それで中央部はですね」
「こんな感じだよ」
「それは知ってましたけれど」
「想像以上だったかな」
「はい」
まさにという返事だった。
「これ程までとは」
「実際その目で見ないとわからないね」
「かなりの広さですね」
「そしてね」
「この砂漠の中にですか」
「ウルルもあるんだよ」
「見えないですけれど」
そのウルルがとだ、翔平はヘリの行き先に目を凝らしながら答えた。
「全く」
「まだ先だよ」
「先ですか」
「まあこのヘリはスピードも出るから」
「いや、そうじゃなくて」
翔平はまだ言おうとするがだった。
先を見てだ、こうロバートに言った。
「見えないじゃないですか」
「今はね」
「地平線しか見えないです」
ウルルなぞ影も形もだった。
「それでもすぐですか」
「今日は強い追い風だしね」
それもあってというのだ。
「もうね」
「すぐですか」
「そうだよ、本当にすぐに着くから」
あくまでこう言うロバートだった、そして。
ウルルに着いたがだ、彼はその時にロバートにまた言った。
「あの、すぐとは」
「いやあ、早く着いて何よりだよ」
「そうですか」
「いやいや、言いたいことはわかるよ」
翔平の顔を見ての言葉だ。
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