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百人一首

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54部分:第五十四首


第五十四首

                 第五十四首  儀同三司母
 この言葉が聞きたかった。ずっと待っていた。
 もう悔いはない。こうも思ってしまう程だ。今死んだとしてもそれでいい。幸せの中に死ねるのだからそれでいい。
 こうまで思えるのは何故か。それはどうしてかというと。
 あの人の言葉を聞いたからだ。愛していると。自分を愛していると。確かに言った。
 この言葉さえ聞いたならばもう、こう思うのだった。愛している、この言葉を聞いた時自分はどれだけ幸せなのだろうかと思った。
 けれど。それでもこうも思うのだった。
 人の心は変わりやすい。それこそ花の色が変わるかのように。
 明日にはもう変わってしまうかも知れない。とても移り気なものだから。
 このことからも思う。死んでもいい、いや死ねたらいいと。思うのだ。
 あの人の心が変わってしまう前に。私を愛さなくなってしまう前に。
 そうなる前に死にたい、死ねたらいいと。こう思うのだった。
 そしてこの気持ちを。歌に託すことにした。歌に託さなくてはあの人の心が本当に変わってしまうかと思ったから。だから今歌に託すことにした。

忘れじの 行末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな

 どうか変わらないでいて欲しい。こう強く願うけれど人の心はどうしても変わってしまうものだから。
 今は歌にこの気持ちを託すことにした。変わってしまうのならその前に死んでしまいたいというこの気持ちを。愛は永遠にあって欲しい。せめて自分が生きている間は。


第五十四首   完


                 2009・2・20
 
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